53話
「ユーマから報告があったわ。もしかしたら、敵は明日動くかも知れない」
闘技大会3日目が終わりガイア城に帰って来ると、レーコから集合の号令がかかった。集まって見ると、計画の前倒しが予想されるそうだ。緊急会議が始まった。
「それでどうするの?間に合うの?」
「まず、みんなの情報をちょうだい。リョウ?」
「レーコの言った場所を調べて見たよ。多分合ってると思う。だけど見張りが厳しいのと、どうやって出すのかは分かんない」
「そう?魔道具には反応したのね?じゃあ間違いないわ。次、ケーゴ?」
「・・・大体50匹のテイムが終ったところだ」
「ぎりぎりぴったりね。じゃあ今晩頑張れば予定の物が作れるわ。さて、明日の事を話すわね。ジュンイチは明日2試合ね。どちらも派手に戦ってちょうだい。それで私たちは・・・」
明日敵が動くかどうかは、観客数によるらしい。どちらでも動けるように、綿密な作戦がレーコから言い渡されるのであった。
次の日ジュンイチが目覚めると、珍しい事にガイア城にはレーコとスターしか残っていない様だった。レーコは朝まで作業していたそうで、ただ今絶賛仮眠中である。第1試合開始までには駆けつけるそうだ。
ジュンイチはゆっくり朝食を取ると、闘技場へと向かった。今日は午前中にベスト4が出揃い、午後から準決勝がある。ジュンイチは午前第2試合目に第7シードと戦い、勝てば午後第4試合で第2シードのモンクと戦う予定である。
観客数が満員近くなれば、敵の作戦が発動するかも知れない。第1試合に遅れないよう、ジュンイチは闘技場へ向かった。
闘技場に着くとまずは観客席に行った。昨日までは空席が目だっていたが、今日は朝から賑わっていた。しかしまだ空席はあるようだ。満員になるのは午後になりそうだと思い、戦士控え室に移動するジュンイチであった。
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「リオン様、闘技場の観客数が9割を越えたそうです」
「ふむ、午後には満員になるかも知れんな。よし、午後の試合に国王、王妃を出席させよう」
「大丈夫ですか?」
「なに、化粧をすれば遠目からは分かるまい。観客動員にも役立つし、石の欠片にもなる。一石二鳥じゃ」
「王子はどうします?」
「取り合えず、監禁しておけ。今日儀式をすることになれば、今晩にでも洗脳しないといけまい。逃げる事はないだろうが、万が一ということもあるじゃろうからな」
「仰せのままに・・・」
話が終ると衛士Aは部屋から出て行った。
「ふむ、人手が足りんのう、わしは国王の所へ行くとするか」
呟きながらリオンも部屋から出て行った。そして、しばらくしてから部屋の隅の影が動き出すのであった。
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ジュンイチは戦士控え室で待っていた。控え室にいるもう1人の人物は、ジュンイチと同様バトルロワイヤルから勝ち上がって来た戦士であった。寡黙であり、深めの頭巾をしているためどんな容貌かは分からなかった。得物は斧であった。しばらくすると、沈黙を破り戦士が語りかけてきた。
「貴殿はヒューマンだな?」
「・・・ええ、そうです?」
「貴殿はこの戦いがどんなもんか、知っておるか?」
「・・・どういうことですか?」
「知らないなら教えるが、次の試合負けてくれないだろうか?」
怪しさ満載であったが、彼は理由を述べ出した。この闘技大会は急遽予定された宰相リオンの企みである。真の目的は何か分からないが、この大会の後、他種族への圧政が引かれるに違いない。その計画を阻止する為、他種族の1番の強者が乗り込んで来たらしい。
「わしはドワーフのジンと言う。他にドラゴン族、エルフ族の強者も来ておる。貴殿が次に戦う相手はゴブリン族の強者じゃ。どうか負けてくれないか?」
「実は、僕らはこの戦いの目的を知っています。そして、その目的を阻止する為、仲間と共に動いています。詳しくは直ぐ説明できませんが、リオンは午後には仕掛けて来ると思っています。負けてあげる事はできませんが、協力する事はできるでしょう。昼食時に打ち合わせをしましょう」
そう言うと、ジュンイチはジンに耳打ちをし出した。リオンの目的、ジュンイチ達の計画を簡単に説明したのであった。驚いたジンであったが、ジュンイチ達の計画に賛同すると答えたのであった。
しばらくしてジュンイチ達の出番となった。会場は大盛り上がりであった。ジュンイチの相手も頭巾をかぶり、容姿が見えなかったが、ジュンイチを見ると少し動揺した様に感じられた。得物は槍であった。
始めの合図と共にジュンイチは宙に浮かんだ。
両方の手に体の2倍程度の片手剣を作り出した。
「はあーーーー!」
掛け声と共に回り出すジュンイチ、ゆっくりとした回転から徐々に速度を上げ、それと共に周囲へ冷気を放出した。
「どうりゃー!」
回転が最高潮となり、最後の雄叫びと共に相手の前の地面に両方の片手剣を叩きつけた。
「どうん!」
試合場が割れ、衝撃が相手を襲った。そのまま場外へと叩き出された相手の胸元に剣を突きつけ、
「僕の勝ちですね?」
宣言するジュンイチであった・・・




