42話
そこは、平和なゴブリン村であった。
周囲は少し低めの山々に取り囲まれており、長閑な田畑が並んでいた。
季節は冬の時期に差し掛かっているため最早農作業をしている人は見当たらなかったが、この村にはビーストの襲撃も滅多に見られず、あっても低ランクのはぐれビーストが1匹位出るくらいなので、周囲を子供たちが元気よく走り回っていた。
平和な時期が続いているため、元からの繁殖能力の高さから、子供の人口は多かった。大きな子供から小さな子供まで、お手伝いなのか遊んでいるのか分からないが、通りの端から端まで子供で埋め尽くされるような状況であった。
「あー、おっきい兄ちゃん、あそこ見てー。なんだか向こうから人が来るよー」
「あ、本当だ。結構な人数だなあ。ヒューマンみたいだね。ちょっと村長に知らせてくるね」
このゴブリン村は北から南へ道が1本しかない。北の道からヒューマンの兵士がやってきている様だ。
知らせを受けた、この村の村長が出てきて対応した。
「兵士様方、どうされたのですか。この様な村へようこそ・・・」
「それ、かかれー!」
村長の言葉が終わらないうちに兵士たちは武器を手に、子供たちへ襲い掛かった。
「大人は殺してもよい。子供を多く捕らえるのだー」
「「「おおーーーー」」」
「何をなさるのですか、やめてくだされっ、ぐぷっ」
人の波にのまれた村長は、誰かの刃に腹を突かれ、そのまま倒れてしまった。
「きゃー、いやー」
「いやだー、やめろー」
「おとなしくしないか!」
ばしっばしっと抵抗する子供は槍の柄の方で殴り、引きずられてゆく。どんどん縄で縛られ、捕縛されてゆくゴブリン村の子供たち。抵抗する大人は殴られ、それでも抗うものは殺された。一瞬でゴブリン村は血の海と化し、そして一人もいなくなったのであった・・・
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「それで、リオンの弱点は分かったの?」
「さすがにそれは、よく分からなかった。どこをどうすれば情報を手に入れられるのかも分からない。今分かったことは、1万人の命を集めているということだけだな」
「奴は人の命から赤い石を作っている様だ。恐らく赤い石を作成して、自分の寿命を延ばしているのだろう」
ユーマが情報を仕入れたというので、サマルカンドの部屋で、レーコ、ユーマ、サマルカンド、ケーゴ、バンダルが会議を開いたのであった。
「1万の命を見殺しにするのも見逃せないし、赤い石を作られるのもやっかいね」
「そうだな。その収容施設の場所は分かった。以前サマルカンドを護送しようとした、旧ダークエルフの集落だ。一応この目で確認して来た」
「じゃあ、その場所は分かるのね。だったら、とりあえずその収容施設を壊しておこうかしら」
「警備体制は以前と異なり、かなり強固になっている。僕も潜り込むのに苦労したぐらいだ。少し何らかの作戦を練らないと、簡単には破壊できそうもない」
「・・・んー、そうでもないと思うんだけど。ちょっと地図でまず確認しましょう」
そしてレーコ達は、地図の前で、収容施設破壊計画を練るのであった。
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「ということで、ジュンイチ、今度の土日手伝ってよ」
「いや、何がということなのか分かんないし、大体試験前なのに余裕なんてないし」
「そういうと思って、じゃんじゃじゃーん、どこでも勉強道具ー。これをあげるからね?」
「いや、そのどこでも勉強道具って、意味分かんないし。本当に余裕ないから」
ジュンイチ達が異世界でレベ上げした数日後、リョウの家で試験勉強をしているとレーコ達が乗り込んできた。どうも切羽詰まっている感じで、力を貸してほしいと言われるが、ジュンイチにも期末試験本番まで時間がない。そんな要望を聞いている暇などないのだ。
「この、どこでも勉強道具はなんと!、頭にはめるだけで勉強ができるすぐれものよ?24時間寝ている間でも勉強できるから、おバカなジュンイチにはぴったりの代物なの。しょうがないから100万でいいわよ」
「いらねーよ。自力で頑張れば十分間に合うんだ。だいたい冬休みに入ってからって言ってたじゃないか」
「それがねー、ちょっと厄介なことになったのよー。今すぐにでも動かないと危険なのよねー」
「ジュンイチ、手伝ってくれないか?そのどこでも勉強道具は安くしてあげるから」
「ジュンイチ、手伝ってあげようよー。何か困っているみたいだし」
「んがー、分かったよ!手伝うよ。そのどこでも勉強道具って本当に頼りになるんだよね?」
「このレーコ様の折り紙付きよ?当り前じゃない。ふふん」
こうして、ジュンイチは試験直前に異世界へ行くことになったのであった。
「それはそうと新しいカウンター、またレベルアップ音を付けた様だけど、はずせよ」
「えー、高らかなメロディーなのにー。もう少し使いなさいよー」
「やかましい!さっさとはずせ!」
その場で鬱陶しいレベルアップ音を外させるジュンイチであった。
ちなみに、
「いやじゃー、わしはいかんぞー。今はいいところなんじゃ、異世界なんか行ってる暇なんかないわーい」
「だめよ、爺様が行かないと、車がないんだから。それに今回は魔法陣を作らなきゃいけないから強制参加よ」
「いやじゃー、いやじゃー、いや・・・」
今回はじじいも参加するようだ・・・




