41話
「リオン殿、この予算計画は少しやり過ぎではないかと思うのですが」
「この間囚人を取り逃がした責任は軍にあるのだが、軍備の不足は財政にある。最終責任を取りたくなければその計画通りにした方がいいと思うのじゃが。だいたい数年前より徐々に軍備が少なくなっておったのを放置しておいた貴君のせいじゃぞ。急遽軍備に財政を回す必要が出来たのは、この失態を償う意味もある。今回の責はわしが取ることになっておるが、わしが提出した予算計画を覆すならば、わしも責任を転嫁するぞ」
「・・・了承致しました。ただ、ほんの少しの間お時間を下さい。国庫を分割する承認を得ますゆえ」
「なに、非常事態と言って、税率を上げれば済む話じゃ。それもヒューマン以外の町を上げればよろしい。それこそ不平不満が出る様ならば、軍隊を差し向ければよいし、その理由で更に軍備に予算を増やせるはずじゃ」
「仰せに従います」
「国王にはわしから説明しておくから、財務大臣のお主は他の大臣への根回しを頼むぞ」
「了承致しました」
「それでは下がるがよい」
財務大臣は頭を垂れたまま、後ろ向きに歩いて行き、リオンの部屋を退出した。
「全く、なんてことじゃ。侮っていたわけじゃないが、あんなに簡単にサマルカンドを奪われるとは思わんかったわい。衛士Aいるか?」
「はい、こちらに」
「次の準備は進んでおるか?」
「はい、着々と」
「今どの位集めた?」
「現在はまだ捕獲準備中ですので、ほとんど集まっておりません。捕獲した者を収容する施設作りの最中ですので、もうしばらくお待ちください。リオン様の計画通りですと約1万人程度は収容しなければならない様ですので。今はほぼその収容施設は完成間近でございます。あと1週間もすれば捕獲に入ります」
「若干計画が遅れているようだな。まあ、急遽変更したからしょうがないか。1万人でもサマルカンドに比べればほんの僅かなのであるが、我慢するしかないだろうな。いいか、狙うのは子供がいいからな。人の命は大人も子供も変わらん。必要なのは数だからな」
「充分承知しております」
「よろしい、それではまた作業に取り掛かるがよい」
「御意に」
そういうと衛士Aは気配を消すのであった。
「全く、なんでこんなに忙しくなったんじゃ。それもこれも、サマルカンドが急に現れ、急に消えたことが理由なんじゃがのう、ぶつぶつぶつ」
最後の言葉は聞き取れなかった。リオンはぶつぶつ言いながら部屋を出て行くのであった。
そしてリオンが退出した後、部屋の奥からユーマが現れ、そして同様にリオンの部屋から出て行ったのであった。
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レーコ達との話が終わり、次の日リョウと相談したジュンイチであった。
リョウは快く引き受けてくれ、しばらく部活を休み、ジュンイチに付き合ってくれると言ってくれた。サマルカンドの世界でレベルアップすることも決まったのだが、問題が1つ残った。冬休み前にある期末テストである。赤点を取れば冬休みに補習が組まれてしまうので、試験勉強もしなければならない。もちろん出席日数も足らなくなるので、学校を休むわけにもいかない。結局平日は試験勉強を行い、今度の土日に集中してレベルアップすることとしたのであった。
「ふうふう、ちょっと休憩しない?」
「駄目だよジュンイチ、今日はここまでするって決めたでしょ?もうちょっと頑張ろうよ」
「はーい」
リョウに見つめられると元気が出るジュンイチであった。
試験前までの2週間の間、放課後はリョウの家で勉強をしているのであった。
土曜日は朝早くからリョウの家で待ち合わせである。
「ほら、リョウちゃん、ジュンイチ君が来てるわよ」
「んー、お母さん、おはよぅ・・・ぐう」
朝は弱いリョウであった。
結局1時間程度待たされて、サマルカンドの世界にやってきたジュンイチ達であった。
異世界の門はこの世界の、ドラゴン族の長老家地下に隠されていた。
ジュンイチとリョウが現れると、
「おー、リョウ様だー。族長様、リョウ様ですよー」
「おー、リョウ様ーお待ちしておりましたー。どうかこちらへ来て下されー」
リョウの周りにドラゴン族が集まってきて、どこかに連れ去って行った。ぽつんと1人取り残されるジュンイチであった。
何とか族長たちのもてなしをかわし、自分のプロマイドが神棚に飾ってあるのを恥ずかしく見ながら、レベ上げしに来たことを伝えたリョウであった。レベルアップできるビーストのいる場所を教えてもらい、そこに移動しようとすると、
「それでは我々がおびき出します」
のりのりで、ビースト狩りを手伝うことを宣言するドラゴン族であった。
その間、ぼんやり、ぽつねんとぼっちを演出するジュンイチであった。
まあ、リョウがもてはやされるのはいいや、と思うジュンイチであった。
狩りは少し高レベル、Bランクのビーストがいる場所で行う事になった。
ドラゴン族総出でビーストをおびき出し、開けた場所に導いた後、ジュンイチとリョウが討伐することになった。
「「「わーーーーー」」」
雄たけびを上げながら森に入って行くドラゴン族の一行を、大丈夫か?と思いながら見つめるジュンイチ達。しばらく待っていると
「「「わーーーーー」」」
雄たけびを上げながら帰ってきた。
「「「今ですー、リョウ様ー」」」
見ると、さながらモンスタートレインの様に大量のビーストの群れが、ドラゴン族に引っ張られて広場に出てきた。
「じゃあ、いっくよー、炎ちゃんおねがーい」
『承知したー』
リョウのレイピアから久しぶりに炎竜が躍り出る。
ドラゴン族とビーストの間を駆け抜け、1匹残らず飲み込んで行く。
「じゃあ、僕も攻撃しておこうかな?」
ジュンイチも瀕死となったビーストに、針の様に生み出した苦無を次々に射出し、止めを刺していった。
最後の1匹が倒れて、少しの間の後
「「ぱんぱかぱーん、ぱんぱんぱん、ぱんぱかぱーん・・・」」
取り替えてもらったジュンイチとリョウのカウンターから、高らかなレベルアップ音が鳴り響くのであった・・・




