4話
始まりは、きしむベッドの上で
変なことはしていない。
昨日は結局10匹のゴブリンと戦い、宿に帰ったジュンイチである。
順調に慣れてはきているが、思った以上にからだが動かず、ダガーで弾き損ねた事が数回あり、ポーションをまるまる1個使ってしまった。今日の目標は、ゴブリンの攻撃を完封することだ。
どこか安宿からもらい受けただろう、古いベッドをきしませながらジュンイチは起き上がった。顔を洗い、ダガーを持って、訓練ができるところへ向かう。
宿の正面にギルドがあり、その横に訓練場がある。昨日ジェームズに許可は取ってある。誰もいない訓練場で軽くストレッチを行うと、双剣の演武を始めた。
左前足から、左打ち、右打ち、打ち払いなどの基本動作から始まり、徐々に型に至る。以前の様には素早い動作では行えない。ゴブリンの攻撃リズムを思い出しながら、捌き、払い、打ち込み、距離を取る。ゆっくりした動作であるが、四半時も体力が持たない。数分休憩後、残りの演武をやりきる。
「・・ふぅ、ふぅ、体力不足だー」
元来帰宅部で、ほとんど運動もしていない生活習慣であったため、素の状態ではあまり動けない。早くレベルアップしなければ。
1時間少々朝練をした後、朝食をもらい、再びダンジョンに向かうジュンイチであった。
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『ちゃちゃちゃ、ちゃっちゃっちゃっちゃー』
レーコ作カウンターが鳴った。レベルアップした様だ。無駄に高性能であり、無駄なレベルアップ音が組み込まれていた様だ。
「レベルアップしたのはうれしいけれど・・・、無駄だよな?うるさいし」
音が鳴らないようにする方法を聞かなくてはと思いつつ、カウンターを確認する。
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ジュンイチ
LV : 2
HP : 7/13
MP : 0/3
SP : 3/6
STR: 5
DEF: 4
INT: 3
MND: 3
AGL: 5
EXP: 0/40
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「おーう、すんばらしー」
レベルアップによるステータス上昇は、経験値以外は以前と同様の様だ。それぞれ2~3位上がっていた。
「ようやくMPが手に入った。少しは魔法を使えるかな?はやさも上がった様だし、少し動けるようになった様だ。だけどEXPがきついなー」
その場でしゃがみ込み、カウンターを見ながら呟く。時刻は昼過ぎだ。お腹が減った。今日の昼食は雑貨屋で購入した携帯食で済ます。久しぶりの乾パンをかじり、水筒の水を飲む。15分位休憩して再度カウンターを確認すると、SPだけが1回復していた。
「・・・HP、MPも回復すると聞いていたのに、15分程度じゃ無理か」
以前と異なり現在の状況では休憩でHPMPも回復するらしい。回復量は相対的なのでそんなに多くないと聞いていたが、この回復速度では休憩でHPMPを戻すのは非効率の様だ。もったいないがMPポーションを一口飲んでMPを回復させる。
「久しぶりの魔法だ」
感覚を思い出すように、体の中心から両手に向かい魔力を使う。
すんなり両手の間に水玉を出現させることが出来た。変形させ苦無を作る。凍らせる事は簡単にできた。強度も申し分ない。MPは1減少していた。これで3個の苦無は作ることができそうだ。
「ただ、まだ使わないけどねー」
3個程度の苦無では効率が悪いし、相手にダメージを与える程度の力も出せない。今は魔法が使えるようになったことを喜ぼう。
昼食休憩を挟み、再び狩りを再開する。ポップアップしたゴブリンを狙い、攻撃を仕掛ける。レベルアップした恩恵で、からだの切れが前より良い。ただ、まだ捌いたり、いなすのにはレベルが足りない。前より大きめに相手の武器を弾きながら体制を崩し、1匹ずつゴブリンを倒していった。
午後のゴブリン討伐数は15匹となった。EXPも15となった。あと25匹でレベル3となる。しかし、その内に経験値が上がらなくなるだろう。また、現在1匹ずつとしか戦っていない。集団戦をこなす様にならなくては。
次の方針を決めつつ、宿に戻るジュンイチであった。
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「うっく、身体中が痛いー」
翌日起きると全身筋肉痛であった。恐らくレベルアップの影響であろう。
ステータスの増加と共に体中の筋肉量がアップしていると思われる。その為全身筋肉痛となった様だ。ジュンイチはベッドから落ち、そのまま床を這って、リュックの中にあるHPポーションを取った。
「ごくごくごく、ぷはー、HPポーションで治るかな?」
そのまま床でダウンしながら、効果を確かめる。すると少しずつ筋肉痛は治っていった。
「レベルアップ後の野営は気を付けないといけないな」
ゆっくり立ち上がると、洗顔、朝練に向かうのであった。
朝食後、ダンジョンに向かう。今日は地下2階に向かう予定だ。いざというときの為になけなしのお金を使い、しびれ薬を購入した。
せまいダンジョン通路なので、集団でかかってきても1対1の状況が作れると考えている。ただ、2階からはハイゴブリンやゴブリンメイジなどが出てくるかもしれない。ソロで活動するので、準備は念入りに行う事としたのだ。
こうして、着々とレベルアップをしてゆくジュンイチであった・・・