37話
「リオン様、伝令です。通していいでしょうか?」
「どうした?何かあったのか?よい、通せ」
リオンの建築現場に伝令が到着する。
あまり、この現場を見られたくはないが、急変時には仕方がない。リオンは伝令を自分の作業場に通した。
「リオン様、大変です。護送車が襲撃されました!」
「どういうことか、順を追って説明しろ」
伝令兵は、渓谷で地震が起き、護衛兵が分断され、護送車が持ち去られたことを説明した。
「ふむ、地震は偶然か、地魔法だったか。しかし、護送車が空を飛ぶなど聞いたことがない。何か固いひもなどで丘の上まで引っ張られたのだろうか。その前後の、護衛兵が辺りが暗くなったという状況も聞いたことがないな。エルフの幻惑魔法かな?いずれにしても護送車の中にはわしの精鋭が乗り込んでいる。しばらく外で待つがよい」
護送車を連れ去られたと聞いても、さほど慌てる様子を見せないリオンであった。
「衛士Bよ、聞こえるか。護送車が襲撃されたそうだが、今の現状を説明しろ」
『リオン様、こちら衛士Bです。護送車の内部は変化ありません。囚人にも現在変化ありません。先ほど、大きな揺れがありましたが、今は揺れも収まっております』
「よろしい、周囲は敵が取り囲んでいる様なので、注意しておくように。護送車が破壊されそうになったら迎撃しろ。その内迎えをよこす」
『分かりました。お待ちしておきます』
「さて、護送車の場所はと・・・、まだ渓谷の山中にあるようだな。伝令!こちらに来い!」
「はっ」
「この山のこの地点に護送車があるはずだ。周囲を取り囲み、逃がすな。こちらからも援軍を出す」
「分かりました。直ぐ戻って伝えます」
「衛士Aいるか?」
「はっ」
「数人連れて、奪還して来い」
「はっ、仰せのままに」
すぐさま指示を出す、リオンであった。
本当であれば自分が向かいたいところではあったが、護送車の中には精鋭のナンバー2がおり、今ナンバー1を向かわせたところである。万が一にも取り逃がすことはないだろう。しかも今は儀式の準備で重要なところであり、実際手が離せないのである。もう一人の側近に護送車との情報交換を任せ、後ろ髪をひかれる思いで、作業を再開するリオンであった。
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『それにしても馬鹿な奴らだ。この護送車を襲っても一文にもならないうえに、リオン様の怒りを買って、すぐ命を絶たれるのに』
衛士Bは魔道具からの薄明りの中、囚人を見つめながら考え事をしていた。
『この囚人はリオン様だけに役に立つもの、もし扉を開けたやつがいれば瞬殺してやるが、冥土の土産に話してやってもいいかな?』
他言無用と言われているので、死人に対してもいう気はさらさらないのであるが、暇つぶしに空想をしている衛士Bであった。そこに、
かかん・・・
金属音が鳴り響いた。周囲を見渡すが、特に変わったことはない。いや、おかしい、
次の瞬間、
「どっどっどっどっ・・・」
囚人左上隅、護送車の壁隅から水が大量に流れ込んできた。
「うわっ、ぷわっ、なんだこりゃー!」
あまりの大量の水が瞬時に入ってきたため、対応に遅れる。既に水が入って来るところには手が届かない。
「くっ、水攻めか。囚人も殺す気なのか?」
既に首まで水につかり、水は更に天井付近まで上がってゆく。そして、
「フリーズ!」
確かにそんな言葉が聞こえた瞬間、流れ込んできた水はあっという間に氷となって行った。
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「おーい、ユーマ、闇を消してくれ。んで、出番ね」
「了解。闇解除。ここらへんでいいか、ムラサメライキリ丸!」
若干以前と刀の呼び名が違う気がしたが、ユーマが一言話しながら、護送車の後方壁を切り取った。
「それではっと、サマルカンドだけ溶かして・・・、おーい、レーコ出番」
「はいはい、んー、結構しっかりした鎖ね。うかつに触れれば魔力を封じられるようね。でも・・・、まあ予想通りね。この魔道具を使用してっと」
レーコはポーチから、以前から用意していた魔道具を取り出すと、鎖をちゃっちゃと切って行った。
サマルカンドは倒れないように、ジュンイチが念力で支えている。最後の鎖を切って、さも大げさに疲れたわーとレーコは叫んだ。
「おーい、ケーゴー、そっちは準備できたかー?」
「おー、道はつながったぞー。順番に降りてこーい」
ジュンイチはサマルカンドを背負い、ユーマ、レーコ、ジュンイチの順番でケーゴが作成した穴に降りてゆくのであった。ここは、レーコがケーゴに作らせた、簡易の洞窟である。入口はケーゴに塞いでもらい、こじ開けるにはまだ少しの時間がかかるだろう。ちなみに護衛兵は気絶させ、サマルカンドを繋いでいた鎖で括りつけてある。殺してはいない。ケーゴに山のふもとまで穴を掘ってもらっており、今出口を作ったところである。バンダルはそこで馬車に乗って、待ってもらっているのだ。
こうして、まんまとジュンイチ達はサマルカンドを救出したのであった・・・




