33話
「ジュンイチさんは、今回の討伐によりランクA資格試験を受ける事が出来るようになりました。おめでとうございます。また、ユーマさんはご一緒に討伐されたそうですので、特例としてハンターライセンスを受領することができます。どうされますか?」
ハンター協会ドラゴン支部からやって来た査定員が、素材の山を見てそう言った。詳しくは後日改めてと前置きしながらも、ビッグスパイダーの群れと軍隊蟻の群れを討伐したことは、ランクAでもなかなか出来ない事だそうだ。
返事は後日、ハンター協会でしてもいいと言われたので、そのようにして貰った。また、素材の受け取り額もその時にして欲しいと言われたので、ジュンイチ達は宿に戻る事にした。
翌朝、軽いレベルアップ痛を経験しながら目を覚ます2人であった。ユーマは、恐れた程ではなかったので、機嫌良く朝食をとっていた。明日は3回目の会合である。今日は宿の清算を行い、移動に充てる事にした。森にはもはやほとんど獲物がいないであろう。宿屋の主人や村長に別れを告げ、村を後にした。
「それで、帰りはどうする?また、おぶって行こうか?」
「いや、速度に慣れるため、走って行くよ。急速にレベルアップしたから、まだ身体が慣れないんだ。ジュンイチは先に帰っていいよ。走りながら色々試したいこともあるし」
「分かった。明日の会合には遅れるなよ」
そう言うと、ジュンイチは空の人になった。
「ふっ」
ユーマは吐息を吐くと、地を蹴り、姿を消した。
そして誰もいなくなった。
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立花優馬は28歳、みなしごである。
物心ついた時から施設で暮らしていた。他の児童と共に生活をしている時から、あまり感情を表さない子供であった。おかしい時には笑みを浮かべるのであるが、虫や蛙を殺すのに心を痛めたことはなかった。殺生を好む性格ではなかったので、生死に無関心であったという方が正しいであろう。
その様な生活をしている間に、ある”声”が聞こえ始めた。何といっているかは分からなかったが、悲哀の感情が裏山から来ているのを感じていた。その山には神様が祀られているらしく、無断侵入はできないと聞いていたが、ある時呼ばれるがままにその山の祠に入って行った。暗闇であるにも関わらず、優馬には行く場所が手に取るように分かった。
そして、ソフィアの像に会ったのであった。
像を見た時、激しい感情が優馬に宿った。一目ぼれと言ってもいい感情であった。その日から優馬は変わった。まず、自分を鍛えに鍛えぬいた。積極的に施設の手伝いを行い、走り回り、筋力を培った。10数年もの間己を鍛えぬいた結果、スポーツ選手としてやっていっても充分通用する身体が作り上げられた。その内ソフィアの”楔”が外れて行き、ソフィアと会話ができるようになったのである。
異世界への門の場所も教えてもらい、先行して入って魔法を覚えた。また数年を要したが、異世界へ通うことにより魔法をカンストすることが出来たのであった。
ユーマの魔法は闇である。
彼は自分の魔法を充分熟知している。可能なことは相手の視力を奪うブラインド、そして無生物及び自分を収納するストレージである。そして、それらはMP量によって規模が異なる。最近はレベルダウンしていたので、ほとんど魔法を使用していなかった。ジュンイチと別れてから、思い出すように魔法を使っていく。俊敏で走りながら遭遇したビーストに対してブラインドを使用したり、目についた巨石を闇に収納したり、そして自らを闇に埋めてみたりをしつつ、王城へ向かうユーマであった。
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「おー、王都みっけ」
約5時間のフライトを終え、王都に到着したジュンイチであった。途中で休憩を挟みつつ、一人旅を久しぶりに楽しんだのだった。
昼食は非常食で軽めに済ませていたので、夕食はがっつり食べたいと思っている。まずは雑貨屋に行き余った野営道具を2束3文で売り払い、ポーチの中身をきれいにすると宿屋に向かった。数日の予約を取った後、飯屋に赴くのであった。
「ドラゴン族の村での食事もおいしかったけど、やっぱり肉中心だったからおいしい魚が食べたいなぁ」
メニューを確認するが、未だ読めない。仕方がないのでウェイターを捕まえて、おいしい魚料理を頼んだ。王城の周辺は海がなく、近くの湖からとれる川魚が主体である。はっきり言って日本の魚に比べるとおいしくない。そろそろ日本の刺身定食が懐かしくなってきたジュンイチであった。
翌日朝の鍛錬を終えると、まずはハンター協会へと向かった。
ランクアップ試験はいつでも受けれるそうなので、今はまだ放置することとした。ユーマと狩った素材の値段は600万Gになったようだ。ユーマに支払う300万Gだけ下ろし、ハンター協会を出た。夕方の会合まで、することがなくなったので、宿でみんなを待つこととしてゴロゴロとするジュンイチであった。
会合の時間が迫るにつれ、まずはユーマが帰ってきた。ユーマへ300万G支払い待っていると、そのうちレーコとケーゴが帰ってきた。
「あれ?リョウは?」
「何か補習を受けなきゃいけなくなったみたいで、今回は置いて来たわ」
「・・・そうなんだ」
テンションだだ下がりのジュンイチであった。
そうして、4人でバンダルとの会合へ赴くのであった・・・




