32話
「ジュンイチー、背後は任せたー」
「はいよー」
順調にレベルアップを続けるジュンイチとユーマであった。
27レベルまでの急速なレベルアップ痛は流石にひどかったが、ポーションを丸々1本使用することで何とか耐えきったユーマであった。宿がツイン使用であったことが幸いしたのだ。
レベルアップ翌朝、早朝に目を覚ましたジュンイチはユーマの様子を覗くと、目だけはらんらんとしながらも小刻みに震えるだけで動けないユーマを発見した。まるで金縛りにあったような状況であった。直ぐにレベルアップ痛で動けないのだろうと理解し、最初は1滴ずつポーションを口の中に入れ、動けるようになってから座らせて1本飲ませたのであった。
死ぬ思いをした小一時間の事を切々と語るユーマを流しながら、狩場へまた赴くのであった。
本日は狩りに来て5日目、レベルは順調に上がり、ジュンイチは35レベルに、ユーマも34レベルまで追いついて来た。このころになるとユーマの技がさえるようになる。
まずは俊敏のスキルが尽きることなく使用できるようになった。敵を発見するとジュンイチの投擲を待たず、単独で首を落としていく。固有武器である”ムラマサライキリマル”(と名付けた刀)の威力もすごいものであり、瞬きをする間に敵の首が落ちて行く。集団に囲まれてもいつの間にかすり抜けており、後ろには首の落ちた敵の残骸が残るだけであった。
また、闇魔法もMPが増えたことで目に見えて役に立ってきた。中でも闇に生物以外のものを収納する容量が増えたことが、討伐した素材を無駄なく収納するのに役立った。ただ、もう少しレベルアップしなければ”自分”を収納することはできないそうだ。その為、闇にユーマ自身が隠れることが出来るまでレベルアップを続けている2人であった。
「そろそろビッグスパイダーも打ち止めだな。そろそろもう少し奥に行って、軍隊蟻と会ってみようか?」
「そうだな、ほぼこの辺は狩り終えたから、少し休憩したら奥に行って見よう」
軍隊蟻はビッグスパイダーより群れの数が多い。個々の力ではビッグスパイダーが勝るため、こちらに軍隊蟻が向かうことは少ないのであるが、一度大軍を組織した場合は力関係が逆転するのだ。森の奥には軍隊蟻の獲物に満ちているので、奥から出てくることは少ないのであるが、獲物が減少した場合人の町や村を襲うことも以前はあったそうだ。その時はランクB~Aまで危険性が高まるらしい。
ビッグスパイダー討伐地点できちんと休憩を取った後、2人は慎重に森の奥へと進むのであった。
すると、ふいに開けた場所に出た。
まるでその場所だけ森をくり貫いた様に、異質な場所であった。そこだけは草木もなく、土が剥き出しになっている。そして、その広場の中央には、土の塔とも言うべきものが存在していた。
「言うまでもなく、あれが巣だね」
「そうだな」
見ると塔の下には、出入りする為の穴が1つ開いていた。
「それじゃあ、いっちょ殲滅させますか」
ユーマと作戦を話し合い、まずはジュンイチが宙を飛んだ。
塔の真上に来ると、剣を作り、土の天井に拳大の穴を開けた。そして、
「ウォーター」
どくどくと塔に水を注ぎ込んだのだった。
ユーマは待機していた。その時が来るまで。
そして、穴から水が湧き出すのを確認すると駆け出した。
穴に刀を突き刺すと、
「ジュンイチいくぞ!、エレキテルショック!」
バチバチバチバチと、塔の内部へ向かい放電したのであった。
『ぱらららっぱらー・・・』
ユーマのカウンターが鳴り出す。
鳴り終えた後の静寂を破り、ユーマが話し出す。
「来るぞ、ジュンイチ」
「あいよー」
遠くから、ガシャガシャギチギチという音が聞こえてくる。そして徐々にその音は大きくなってきた。狩りに出掛けていた兵隊蟻が駆けつけて来たのだ。
「じゃあ、殲滅第2ー、アイスニードル!」
先頭の蟻が見えた瞬間、先攻してジュンイチの苦無が突き刺さる。
「ふっ」
吐息と共にユーマが消える。ふと見ると、既に数体の首なし蟻が転がっていた。
「グラディウス!」
ジュンイチは両手に片手剣を作り出すと、向かって来る蟻に切りつけた。
「よっ、ほっ、やっ、と」
久し振りの双剣実戦である。攻撃を弾き、蟻の節を狙う。
回転し、足でいなし、首を飛ばす。
残骸で足場が無くなれば、とんぼ返りの要領で回転切りをしながら新しい足場を探す。
1時間程度の内に、蟻の死骸の山が数個出来上がっていた。
「これでー、終了ーっと」
「お疲れジュンイチ。さすがに多かったな」
「まあ、まだ余裕はあったけどね」
『ぱらららっぱらー・・・』
遅れてユーマのカウンターが鳴り出す。
「あー、今日もレベルアップ痛が来そうだな」
「そうだね、僕もレベル40になったよ」
「それはそうと、この蟻はどうする?」
「さすがに持ちきれないからねー」
2人で相談した結果、村に譲る事にした。
村長に話しに行き、事情を説明し、今までの素材を全て譲る事を条件に引き取って貰うことにした。それでは余りにも申し訳ないので折半にすることとし、村の外れに素材を置くことになった。
村長は余りに多い素材に驚き、直ぐハンター協会に使いを送った。ジュンイチ達は森へ引き返し、何回か往復して、蟻の遺骸を運び込むのであった・・・




