31話
「さて、野営の場所をどうしようか?」
ユーマを背中に抱え、丸1日を費やして目的の森手前に到着したジュンイチであった。
以前グレイハウンズなどを討伐した時と異なり、今回の敵は木の上にも到達することが出来る。トムソーヤの小屋を作成しても、敵の襲撃を避けることが出来ないのだ。また、土の下も蟻のテリトリーである。地下に野営地を求めることはできない。少し考えていると、
「充分離れた場所でたき火をして、見張りを交代するしかないんじゃないか?」
ユーマからの提案であった。オーソドックスな方法であるが、2人で討伐するならばその方法がとれる。幸い現時点ならば、多少狩場と離れていても飛んで行くことができる。ジュンイチはユーマの提案を受け入れることにした。
宙から野営に適した場所を探し、街道から多少離れた場所で、森からかなり距離を取って野営地とした。周辺の草刈りをユーマにしてもらい、それを目印としておいた。そしてさっそく狩りに行くこととした。
空中から索敵を行うが、木々が密集していてはっきり分からない。その為森の入口に戻り、歩いて探索することになった。
「マニュアルでは、森の中央がビッグスパイダーの住処で、深層が軍隊蟻となっているね」
「でも時々場所が入り乱れることも書いてあるから、どっちから先に遭遇するか分からないな」
AGLが充分上昇したジュンイチと、元来俊敏のスキルを持っているユーマの2人である。攻撃の先を取られてもなんとかなると思いながら、ほぼ無警戒に森の奥に進んで行った。
「うーん、あすこに蜘蛛の巣がありそうなんだけど」
「あれは普通の蜘蛛じゃないか?巣が小さすぎる気がするよ」
大分森の奥に入った頃、蜘蛛の巣を発見するジュンイチ達であった。ビッグスパイダーの巣など見たこともないので、よく分からない。少し迂回するように、蜘蛛の巣に向かって近づく2人であった。そして、
急にその場所は現れた。
辺り1面蜘蛛の巣だらけであり、またその巣はきめ細かく、かなり大き目なものであった。
ふと、2人はその場にしゃがみ、あたりを見渡した。
辺りは木々のざわめきがあり、ビーストの気配が感じ取れない。
その瞬間、2人の後ろ上方に気配を感じた。
「カシャカシャカシャ」
上方から人の身体位のサイズの、ほぼ真っ黒な”蜘蛛”が落ちてくる。
すかさず、元の方角へ2人は走り去った。回り込まれては面倒だ。
数歩距離を取り、
「アイスニードル!」
ジュンイチは氷の苦無を投擲する。
すぱんっという音と共に、”蜘蛛”の首がちぎれ、ビッグスパイダーはそのまま地面へ激突した。
『ぱらららっぱらー、ぱらららっぱらー・・・』
ユーマのカウンターが鳴り出す。
「えー、レベルアップ音取り外してもらっておけよー」
「いや、知らないよ、こんな機能がついていたなんて。それにしても鳴りやまないな、まずいぞ」
「「「「カシャカシャカシャカシャ・・・」」」」
ふと振り返ると、ビッグスパイダーの巣から、どんどん湧くようにビーストが近づいてくる。
「げっ!とりあえず、撤収ー」
素材を剥ぎ取ることをあきらめて、その場を離れる2人であった。
結局森の入口まで逃げ帰り、そこまでユーマのカウンターは鳴り続けた。
ビッグスパイダー1匹で、27レベルまで上昇した様だ。ちなみにジュンイチのレベルも1レベル上がっていた。
「1匹で結構上がったな。この後どうする?」
「・・・レベルアップ痛は少なくなったと言われたけれど、なんか怖いから今日はもうやめておくよ」
急なパワーレベリングで、反動が怖いため、今日のところは狩りを止めることになった。
しかし、まだ正午も来ていない時刻である。2人は相談して、ドラゴン族の村でも見学しようということになったのであった。
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「それでは今後の日程を発表する。兵士諸君は傾聴するように!」
「「「はっ」」」
時は遡って、今は朝の朝礼の時刻である。
リオン王国、王城の中、朝礼で集合する宿舎前広場にバンダル達見回り兵が集められていた。
全員隊長の前に整列し、右手で槍をかかげ、左手は胸に当てる姿勢で敬礼していた。
「今から10日後に囚人の護送がある。護送は近衛兵を中心に精鋭の兵士をつける予定である。諸君たちにはその為、本日から見回りの範囲を広げてもらうことになる。また、兵士の抜けた穴を埋める為、この中から数人近衛兵の持ち場に行ってもらうので、名前を呼ばれた者は前に出るように」
隊長の話にピクリとしたバンダルであったが、その後は顔色を変えることもなく立ち続けるのであった。
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さて、ドラゴン族の村に立ち寄ったジュンイチ達であったが、その村には運よく宿があった。交渉したところ、割と格安で宿泊させてもらうことができるようになった。せっかくの野営道具はまた後日使うこともあるだろうと、お互い分担して分け合いそれぞれ収納した。
この村は田畑を中心にしているようで、ハンター協会は存在していなかった。しかし、そこはそれ、ドラゴン族の村である。屈強な戦士風の男女が行き交い、そんじょそこらのビーストならば村民で対処が出来そうであった。身体のごつい男性、女性が畑仕事をしている風景は、まるで開拓村を見ている様であった。
その日は早めに夕食を取り、宿で休む2人であった。そして、蜘蛛と蟻の森でレベルアップを続けることになったジュンイチ達であった・・・




