3話
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ジュンイチ
LV : 1
HP : 10/10
MP : 0/0
SP : 3/3
STR: 2
DEF: 2
INT: 1
MND: 1
AGL: 2
EXP: 1/20
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「はー、はー、はー」
ゴブリンとの初交戦は、結果で言うと楽勝であった。しかしジュンイチの気持ちからすれば、ぎりぎりと言えるところであろう。
戦い終わった場所でカウンターを確認しながら、ジュンイチは心を静めるのであった。
「マジかよ、EXP1?こりゃ大変だ」
ダンジョン入ってから既に20分経っている。帰りを考えれば、後1・2匹位しか狩れないだろう。
それにしても、動きが鈍い。最初の左手での攻撃が避けられるとは思わなかった。身体が自然と動き、追撃ができたので倒せたが、下手をすればもっと時間がかかっていただろう。
先が長いことを嘆きながら、再び奥へと進むジュンイチであった。
その後もう1匹ゴブリンを倒して、家に帰った。EXPは2となった。
「このままじゃ休みの間にレベル上がらないよな」
次の日の計画を建てながら、床に着くジュンイチであった。
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「・・・このままじゃ宿題が終わらないから、泊まり込みでするから」
「誰の家でするの?」
「・・・鈴木君ち」
「鈴木って友達いたっけ?違うでしょ、綾波さんのところでしょ?あの娘のところだったら安心だけど、きちんと挨拶しておきなさいよ」
「・・・何で分かるの?」
「そりゃあ、今一緒に宿題する子ってあの娘位しかいないじゃない。あの娘はいい娘よねー。ちゃんと捕まえておきなさいよ?」
翌日の朝御飯を食べながら、母親に相談した。驚いたことに、リョウとは公認の仲になっていたようだ。確かに異世界から帰って来たときリョウを紹介したのだが、こんなに気に入ってくれていたとは知らなかった。
特に否定する必要もなかったので、リョウのところで連泊する旨を伝えて、その日から異世界へこもることにした。後で辻褄合わせに、リョウへ連絡して置いた。
「うん、分かったー。ジュンイチも頑張ってねー」
という優しい声を聞きながら、たまには会いたいなと思った。まだまだ彼女は忙しいらしい。
異世界の門をくぐり、ワイバーンに乗りゴブリンの洞窟へ向かう。少なくとも4日間はここにいるだろう、ダンジョンに入る準備をする。まずは、クエストがないかギルドで確認することとした。
「おや、ジュンイチ君じゃないか?」
「あっ、久しぶりです。こちらに来たんですか?」
「そうだよ、ここが初心者村2になったので、こちらに来ることにしたんだ。ちなみにスージーもいるよ」
ギルドの受付にいたのは、初心者村でギルド案内をしていたジェームズであった。
「4日位ここにいるつもりです。その間お世話になります。ちなみにここでは何かクエストありますか?」
「あるのは、初心者に対する護衛位かな?この村が出来たばかりだから、あまり大したものはないよ。周囲の採取クエストはないこともないけどね」
予想通りお金になるクエストはなさそうだ。ゴブリン討伐も剥ぎ取りができず、うまみは全くないようだ。お金は減る一方になりそうだった。
ジェームズに挨拶し、次は雑貨屋へ行った。ダンジョン内での飲食物や、ポーションを追加しておく。その後、宿屋へ向かった。案の定暇そうにしているスージーが、宿屋のカウンターでくつろいでいた。
「おはようございます、スージーさん、久しぶりです」
「おや、ジュンイチじゃないかい?久しぶりだね。君もレベル上げかい?」
「はい、4日位ですが泊まらせてもらおうと思います。宿代はいくらですか?」
「一般の客は1泊500ジェニーにしているよ。食事込みで750ジェニーだね」
「4泊でお願いできますか?」
「あいよー」
スージーの見た目は以前と異なり、23歳という実年齢どおりとなっていた。ただ、しゃべり方は以前と同様おばさんくさい。話し方が固定されてしまった様だ。しばらくレーコやケーゴが泊まった話や最近の出来事などを話し、宿泊の手続きを終えてダンジョンに向かった。
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ゴブリンの洞窟は、ジェームズ達が定期的に間引いている。浅い階はなりたての冒険者の為にほんの数匹しかいないようにしているのだ。午前中の内に間引きを行った為、現時刻では1階に片手位しかいないはずである。昨日よりも足早にダンジョンを捜索するジュンイチであった。
「ダガーよーし、ポーションよーし、苦無よーし」
装備を確認し、1階を進む。今日の目標はレベル2になることと、このからだになれることだ。昨日戦ってみたところ、ステータス減少の影響は多分にあった。今まで避けることができた攻撃が、避け切ることが出来なくなっていたのだ。レベルが上がるまではゴブリンの攻撃をいなすことを目標に置いた。
静かに、そして足早にゴブリンを索敵する。
すると、僅かに音が聞こえた。
ジュンイチはゆっくりとリュックを下ろし、ダガーを構え、音の方に近づいてゆく。
「・・んぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃぁ」
曲がり角の向こう側からゴブリンの声が聞こえてくる。どうも1匹らしい。
角に近づき、そっと覗く。昨日と同様槍を持ったゴブリンだ。
「すぉりゃ!」
ジュンイチは、駆け出す。ゴブリンの攻撃範囲外まで近づいた。
「んぎゃーー」
ゴブリンの攻撃を覗う。
広くない通路なので、槍で突いてくる。
「しっ」
攻撃を躱すのではなく、右手のダガーで弾く。
ゴブリンは槍を引き、再度突いてくる。攻撃速度は充分”視える”。
数回ゴブリンに攻撃させて、それをダガーで弾き、自分のからだのずれを矯正する。その内ゴブリンは疲れたらしい。攻撃が鈍くなったところで止めを刺した。
「・・ふぅふぅ、僕の体力も少ないな。もう少し鍛えなくちゃいけない」
霧散したゴブリンの前で独り言をいうジュンイチであった・・・