28話
「それでは今から役場に行きます。みんな働くように」
「いやじゃー、いやじゃー、わしは働かんぞー」
「そうよ、そうよー、私も働きたくないわー」
「やかましい!働かざる者食うべからずだー!」
王都に帰って翌日の朝、ジュンイチは宣言した。
昨夜もレーコやじじいは贅沢三昧をした様だ。ざるの様に酒を飲み、豪華な夕食を取って帰ってきたとケーゴがげんなりして告げ口をしてきた。このままでは食費で宿代でさえ払えなくなる。宿も中堅どころを頼んだところなので、ハンターライセンスを持っているとしてもそんなに割引にはならないのだ。
嫌がるレーコとじじいの首をケーゴに捕まえてもらい、役場のハロワに行く。まだぶつぶつ言うので、2人には猿ぐつわをはめてもらった。幸いなことにレーコも爺様も知識は豊富なので、専門職から選ぶことが出来た。あまり長期的な仕事は現在の状況にそぐわないので、2人とも役場の資料整理の仕事を充てることとした。この世界の文字は分からないけれど、レーコと爺様にかかれば翻訳機械など直ぐ作成することだろう。
ケーゴは短期の力仕事を、リョウはウェイトレスのバイトを、ジュンイチは相変わらず汚れ仕事を選んだ。さっそくみんなは仕事に出かけてもらい、ジュンイチはハンター協会へ手紙を出しに行った。バンダルへ、今王都にいることと、会う日程の相談を書いたものである。その後、清掃会社へ赴いた。
「君がジュンイチ君かい?」
「そうです」
「シュリの町でも清掃会社に勤めたことがあるそうだね。評判がこちらにも伝わっているよ」
「そうなんですか」
「数時間でトイレをピカピカにできるそうだね。期待しているよ」
清掃会社の部長からお褒めの言葉をもらい、さっそく会社の服に着替えてトイレに向かうジュンイチであった。その日は午後から2件のトイレ清掃だけで帰宅となった。もちろんジュンイチが清掃したトイレは、神々しい輝きを持ち、皆から絶賛されることになったのである。
宿に帰ると、レーコとじじいは既に帰ってきていた。
「さぼって帰って来たんじゃないだろうな!」
「私たちを何だと思っているのよ。あんな仕事ちょちょいのちょいよ」
「そうじゃそうじゃ、文字変換機械を作るまで時間がかかっただけじゃ。後は2人の風魔法でちゅんのまじゃ」
「あまりに仕事が早く終わったので、早く返してもらったのよ」
胸をそらす2人の前には、夕食前というのに酒とつまみが既に並んでいた。
「まあ、きちんと働いたんだったらいいけど、使い過ぎないようにしてよね。まだ150万位足らないんだから」
「1000万はジュンイチの借金よ。その他のお金は私たちのもんなんだから」
「そうじゃそうじゃ、自分が働いたお金を使ってどこが悪いんじゃ」
「・・・もういい、上がって休むことにするよ」
口ではとことん敵わないジュンイチであった。
その後、ケーゴとリョウが帰って来るまで部屋でまんじりとするジュンイチであった。
バンダルからの返事はそれから3日後に返ってきた。手紙にはなかなか休みが取れないことの謝罪と、今度2日後に休暇が取れるので、その日に会いたい旨を添えてあった。と言うことで、その日までジュンイチは王都で働きながら、バンダルと会う日を待つのであった。6日間の仕事で全員で100万G近いお金を稼いだ(内20万G位がレーコとじじいの酒代で消えた)。そして、バンダルと再会する日が来たのであった。
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「サマルカンド様は地下牢獄に捕らわれている様です」
バンダルとは、近くの高級レストランで会うことになった。
ハンターライセンスを使い予約することが出来たことと、個室を使えることで秘密の漏えいが防げることを期待して取ったのである。もちろん、爺様の魔法陣による遮音魔法や、レーコの風魔法による結界も使用している。
「王城の地図は手に入るの?」
「それが、今手書きで多少は書き込んでいるのですが、地図そのものは最重要機密でして、恐らく手に入ることはないでしょう」
「と言うことは、ほとんど情報が手に入っていないってことね」
「すみません。ここから先は私1人では恐らく困難だと思います。手を貸していただけないでしょうか?」
サマルカンドの居場所は、地下牢獄の最下層にあるものと推測できる。しかしその場所は、並みの兵士では入ることが出来ない様だ。バンダルが見回り兵として行けた場所は、軽い罰を食らった上層の囚人部屋までであり、その下層への見張り兵は特殊兵に当たるらしい。
「分かったわ。とりあえず数日頂戴。今度の休みはいつ?」
「今は7日に1日の休日が取れます。7日後にはまた休みを取れます」
「じゃあ、7日後の同じ時刻に、またこの部屋で相談しましょ」
「えー、この部屋結構な値段がするんだけど」
「必要経費よ、何言ってるの。ちなみに会計はジュンイチ持ちだからね」
「ちょちょっとまって、レーコ。なんで僕が払わなきゃいけないんだよ。みんなで決めた事だろう?」
「違うわよ、これはジュンイチが持ってきた案件だから、ジュンイチが責任持って解決しなきゃいけないの」
ぎゃーぎゃー騒いでみたが、結局支払いはジュンイチ持ちとなった。
トイレ掃除の回数をもっと増やさなければと思う、ジュンイチであった・・・




