18話
「ジュンイチ、探したんだよー。あのね、私ね、頑張ったんだからー」
リョウと再会し、馬車に揺られながら、リョウが今までの事を話していく。溜まりに溜まっていたそうで、話が尽きることがない。ジュンイチはうんうんと相槌を打ちながらリョウの話を聞いて行った。
「よく僕の場所が分かったねー」
「うん、ジュンイチのブレーサーが炎ちゃんに教えてくれたから、方角が分かったの。王都を南に行ったところで今度は北に向かったと言ったから、今戻って来たんだよ」
若干すれ違いになった様だ。
まとまりのないリョウの話をまとめてみると、ジュンイチがいなくなって5日目、門をくぐってこの世界に降り立ったリョウは、北のドラゴン族の集落へ向かったらしい。途中でビーストに出くわしたので炎竜に攻撃してもらったところ、ドラゴン族に見つかり、リョウは祭り上げられたらしい。お姫様の様な待遇をしてもらったのだ。事情を説明し、ジュンイチを探す手伝いをしてもらっていたそうだ。途中でビーストの集団が現れたので、炎竜で一掃したのだが、そのせいで現在レベル23レベルまで上がったそうだ。レベルアップ痛は、寝起きにもらったポーションを飲むことで直ぐよくなった為、あまり記憶にないそうだ。
「私寝起きが悪いから、調子悪い時はポーション飲んじゃうんだー。ちょうどレーコからもらったポーションがあったけど、全部使いきっちゃったー。えへっ」
かわいいから許す。
リョウにはあまあまなジュンイチであった。
「それで、帰りはどうするの?」
「今レーコと爺様が門を作る作業をしているはずだよ。その内帰れるんじゃないかな?」
これで帰る段取りはついた。後はこの世界で何をして時間をつぶすかということだけになった様だ。
「これからどうする?」
「うん、あまり意味はなくなったけど、ハンターライセンスを取ってみようと思っていたんだ」
「ハンターライセンス?」
「そう、こちらの世界の冒険者免許証みたいなものかな?」
「じゃあ、一緒に取ろうか?」
「そうだね」
リョウと一緒にハンターライセンスを取ることにしたジュンイチであった。とりあえず、金銭的にはドラゴン族のバックアップが得られることになったため、この世界の服を購入した。ようやく学生服を脱ぐことが出来たジュンイチであった。最早学生服はボロボロであった。
防具はガイアの世界の防具を持って来てくれたので、それを装着し、ようやく固有武器ブレーサーを手に入れることが出来た。これでどこに行っても困ることはない。レーコ作ポーチも持って来てくれていた。現在MPが増えているので4畳半程度のものは収納できそうだ。
宿は中堅どころを取ってくれた。本当は極上のホテルを取るつもりだったそうだが、それは固辞した。宿代は数か月分前払いをされた(これ位はさせてもらわないと困ると言われた)。また、100万Gを当座の資金として手渡された(最初は1000万Gを渡されそうになったが、一生懸命値切った)。最後に帰る前に再びドラゴン族の集落に立ち寄ってくれと確約させられて、ドラゴン族は帰って行った。
そうして、久しぶりにリョウとデートの様に手を繋ぎながら、試験会場へ向かうジュンイチであった。
試験会場はハンター協会であった。実際は受付のみであり、試験は指定された別の場所で行うらしい。
ジュンイチとリョウはロビーで予備審査の為の受付をするため並んでいた。すると・・・
テンプレの如く絡まれた。
「ガキと嬢ちゃんじゃないか。お前らがハンターになるのかぁい?」
厭らしそうな顔つきで絡んでくるこの世界のDQNは、某世紀末使者に出てくる雑魚の様な格好をしたおっつぁんであった。
ここは一発男の見せどころか!と身構えたジュンイチであったが・・・
リョウが”にっこり”と笑うとおっつぁんは”にへら”と笑って、そのままロビーを出て行った。
「スキル使った?」
「うん!多分明日まで帰って来ないよ?」
リョウ、恐ろしい娘。まあ、何にせよトラブルは避けるに限る。リョウさまさまであった。
そうこうしている内に、ジュンイチ達の順番が回ってきた。
「お2人とも試験を受けられますか?」
「はい、お願いします」
「それでは、こちらにお名前を書いて下さい」
「名前だけでいいの?」
「はい、名前を書き終わりましたら、予備審査の受験資格である番号札をお渡しします。試験までに無くさないよう持っていて下さい」
「書きました」
「・・・読めませんが、どちらの文字ですか?」
さすがに文字は、この世界では違うらしい。仕方がないので代筆をお願いした。
番号札を渡されると、直ぐポーチにしまった。試験は最早始まっているらしい。ロビーを出るや否や恐喝、スリがジュンイチ達を襲って来た。だがしかし、ステータスが上がっているジュンイチ達の敵ではない。リョウのスキルやジュンイチの念力で、ことごとく返り討ちに会うハンターライセンス試験予備審査受講者達であった。
ジュンイチとリョウはるんるん気分で、王都の町をさ迷うのであった・・・