表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

深夜のバス

作者: 南港

会社から帰るとき、電車とバスを乗り継いで家に帰る。

バスは大体最終便近くなるから、俺と似たような奴がちらほらいるだけで、十分にすいている。

俺はこのなんとも言えない落ち着く空間が好きだった。



今日の残業はいつも以上に疲れた。

少し危なかったがバスの最終便にはぎりぎり間に合った。

バスに乗り込みあたりを見回す。

今日は珍しく誰も乗っていなかった。

まあ、いたとしても一人か二人だ。あまり関係ない。

俺はそう思い、いつもの椅子に座ってくつろいでいた。


・・・

途中でバスが止まる。

どうやら乗客のようだ。近くに駅もなければ何かあるわけでもなく、こんな時間に珍しいなと思った。

まあそのまま普通に座ってたら別に気にしなかった。

だがそいつは、なぜか俺の後ろの席に座ってきた。

そいつは太っていたから、座る際何度も俺の席をけってきた。

俺は疲れてるのもあり、機嫌が悪くなった。

こんなにもすいているのに、何でよりにもよって俺の後ろの席に座るのだ。

そいつの意図が分からなかった。

しかも、今日はいやに静かで、俺の後ろにいるそいつの

喉に引っかかったような息が聞こえてきて、とても気味が悪かった。

しかも頻繁に席をけってくる。

許せなかった。俺が好きだったこの空間を壊された感じがした。

何か制裁を加えたいと考えてるうちに、次が降りる停留所となった。

と、同時に後ろのそいつが席を立つ。どうやら俺と下りるとこが一緒らしい。

しめたと思い、俺も後を追う。

本当にしょうもないことだが、バスが止まる勢いに乗じて肩でぶつけてやろうと思った。

悲しいことだが、これが今の俺の精いっぱいの抵抗だった。

そしてバスが止まると同時に、慣性の法則が働く。

俺は怒りを込めて、自然な感じに肩で力いっぱいぶつけた。


     ぐちゅっ


嫌な感触がした。普通の感触ではない。

そいつは全く動じなかった。

肩をみる。 少し暗くてはっきりとはわからないが、赤紫色のようなシミがべったりと肩についてあった。

あっけにとられていると、そいつは下りたのかもう姿が見えなかった。

 俺はそのまま降りる気にならなかった。



・・・


俺は終点近くでバスを降り、そこの近くのネットカフェで一夜を過ごすことにした。

シャワールームで自分の肩を見ると、そこには赤黒いアザができていた。あの時の物かはわからない。

このアザがいつ消えるのか考えてみた。

俺はあの感触とこのアザが消えるまでは、とてもあの時間にバスを使う気にならなかった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ