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Need of Your Heart's Blood 3  作者: 彩世 幻夜
第三章 The next move
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和解

 さわさわと、葉擦れの音が聞こえる。

 一人、静かにお茶を楽しんでいた彼女は、ふと柔らかな微笑みを浮かべ、すっと席を立った。


 テーブルを後にし、歩き出す。

 一歩一歩、前に進む事に口元の笑みを深めながら。


 最後の一歩を踏み出した直後。

 楽園のような穏やかなその場から、彼女の姿がフッと掻き消えた。


 彼女の視界が、彼女の愛した街の風景へと切り替わる。


 彼女――大精霊ローレルを祀る祠の前の祭壇には、ここに住まうものたち全てと、彼らの血を引きながら、外の世界で育った娘と、その彼女がパートナーに選んだ男。

 その隣には、ルナの姿もある。

 あれだけの怪我を負っていたはずが、今、彼女はここで一人で立っている。傷らしい傷も見えない。

 さらにもう一人、見覚えのない男が居る。


 しかし、害意はなさそうだ。

 ローレルは、あえて厳しい表情を装い、彼らと向き合った。


 「では。お前たちの答えを聞こう」


 「――はい、ローレル様。この度、私が代表し、ローレル様の問いにお答えする役目を仰せつかりました」

 彼らの前に立ち、娘夫婦と並んで立ったルナが、さらに一歩前に出て、ローレルの前に跪いた。


 「ローレル様のお怒りを買い、ローレル様のお力を削ぐ事となった、我らの行い。何がいけなかったのか、改めて考えました。今後、それを改善するための方策も。……まだ、完全とは程遠いものであることは重々承知の上ですが、その原案を、まずはローレル様に聞いていただきたく」

 「……いいだろう。言ってみろ」

 「はい」


 促され、彼女は改めて顔だけを上げ、ローレルの目をまっすぐ見た。


 「我が夫、すなわち長とその一族は、その身分を剥奪の上、厳重な管理のもと、この新たな考えを理解していただけるまで身柄を拘束、軟禁処分とします。――そして、その新たな考えとは……」


 一度、短く言葉を切り、息を継ぐ。


 「私の娘たちから、外ではローレル様どころか、精霊や魔物らの存在すら、危うくなりつつある現実を初めて知り、その上で彼らについての知識や距離感など、正しく理解することが肝要であると。私たちはそれを知ったつもりになって驕り、失敗したのだと。だから、それを正すべく、それらをきちんと学び直し、今後に生かしていこうという事になりました」


 そして、背後の民を従え、共にもう一度、深々と頭を下げる。


 「学ぶ事は多く、今日明日で完了出来ることではなく。それを軌道に乗せるには、ある程度時間が必要となるでしょう。今すぐ、その結果を、ローレル様にお見せすることは、かないそうもありません」


 それでも、と、彼女は続けた。


 「どうか、もうしばらく、我らに猶予をいただけないでしょうか。我らの変わる様を、お見届けいただきたいのです」


 それに追随するように、

 「お願いいたします」

 と、皆声を揃えて頭を下げた。


 ローレルは、その答えに、満足そうな笑みを浮かべた。


 「――そうだな。我が一族の娘。お前のおかげで、最悪の事態は避けられた。そのうち、暇のあるときにでも、またゆるりと茶でもしながら、お喋りでも楽しみたい」


 彼女は、咲月たちにもその微笑みを向け、言葉をかけた。


 「急ぎの用事のあるときに、面倒をかけて済まなかった。今残る、後の仕事はもう我らで解決すべき事。改の挨拶は後日として、お前たちは自らの仕事に戻ると良い。――その日を、楽しみに待とう」

 

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