本日の議題
葉月、カイム、ベヒモス、アルフレート。先ほどの面子が朔海の左右に陣取り、その前にコの字型に並べられた会議用の長机に合わせた座席に並ぶのは、先日涼牙に命じて届けさせた令状と、先日得た竜王位を以てようやく集めることの出来た面子だ。
四大公に、四大家当主――紅狼だけは居なかったが――それに加え、現王の側近。さらに各部署の有力者や元老院、貴族院の実力者たち。
その彼らの目の前に、涼牙が順繰りに一枚の白紙を配って歩く。
全ての者にそれが行き渡ったタイミングを見計らい、朔海は一人立ち上がった。
「――本日の議題を提示する前に、一つ、皆さんに重要な発表をしなければなりません」
自らの前にのみ無い、その白紙に視線を滑らせ――
「これは、いずれは公表する予定の情報ですが、その時が来るまでは超一級極秘情報扱い。この部屋を出た後、他者に決して他言せぬよう、誓約を頂かなければ明かせません」
カラカラと、涼牙が台車に乗せた専用の釜を皆の前に運び込む。
「ご覧のとおり、あくまでこの情報を他言しないというただそれだけの誓約です。誓約の儀に則り、それに真名を記し、その釜へ入れてください。――そんな誓約などできぬとおっしゃるのであれば、今すぐにこの場を立ち去っていただく事になる」
もう一度、居並ぶ面々の瞳を居抜き、その上であえて余裕の笑みを浮かべてみせる。
「……そうして出て行かれた方は、この先再びこの場に戻ることは、当分無いでしょう」
二度とないとは言わない。……しかし、同じ席に座れる確率は果てしなく低くなる。
「それを念頭に置いて、選んでください」
選択の時間を与えるため、朔海は着席し、目を閉じた。
すかさず、部屋がささやき声で満ちる。
「超一級極秘情報となると……国家機密、それも国の根幹に関わる情報だぞ?」
「そんなものを、この王子が持っていると?」
「――仮にそうなら。……それを共有する者というのは国の重役だ」
「つまり、その選定を紅龍王に任されたという事か?」
「……王は、正式に皇太子を定めるおつもりなのではないか?」
「ということは、ここに集められた者は次代の側近候補?」
「そう考えるのが妥当じゃないか?」
「……この誓約に加わらなければ、そこから外される、そういう事か」
「少なくとも、初期メンバーからは外される、って事だろう」
互いに目配せし合い、互いの出方を伺いながら、そろそろと紙に手を伸ばす。
「――俺らは、公衆の面前でこの王子様に負けてるしなぁ。……ま、王子がそうしろってんなら仕方ねぇか」
まず、四大公らがサイン済みの用紙を釜へ投げ入れた。
「……折角の機会に居合わせながら機を逃し、他家に遅れを取るわけにはいかないか」
それに続けて四大家が。
釣られるように、次々と釜に紙が投げ入れられる。
「――それでは」
涼牙が、人数分のゴブレットを持って釜に近づき――その中身を注いだそれを、彼が再び配って歩く。
それに、顔をしかめながらも、それぞれグラスを干す。
すかさず、涼牙が口直しの茶を注いで回る。
「改めて、今後の予定をお話します」
朔海が、再び立ち上がる。
「――今日よりひと月と少しの猶予期間の後、僕は現王、紅龍王に代わり次代の王として即位することが決定している」
一斉に息を飲む音。
「そして、ここに居る皆さんは、お察しのとおり、僕の側近候補」
そして、彼らに向け、王族として、正式な礼を取る。
「今日から、戴冠式に向け――そしてその後の為の体制づくりを始める。本日の会議は、そのためのものです」
朔海は右手を彼らに差し出し、言った。
「僕に、力を貸して貰う。僕と共に、新たな国を創るんだ」




