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茨木さんとお見舞い2

まさかの風邪を引いたことがないという多数決の結果にショックを受けた私。

悲しんでいるのもあれなので話題を変えようと茨木さんに今日のことを聞いてみる。

「茨木さん、今日は学校どうだった?なにか楽しいことあったかな。」

「今日は…孤独って2人の時があるからこそ感じられるものということを始めて実感したわ。」

自分の腕を抱きかかえ寂しそうに呟く茨木さん。様になっている、が困った。言っていることがよく分からない。哲学かなにかだろうか。


明らかに困惑していた私の様子に気付いたのか東野くんが助け舟を出してくれた。

「つまり、茨木は久しぶりにぼっちで酷く寂しかったんだってさ。」

「ぼっちって言わないで。でも私、もう望月さんがいないと生きていけない体になってしまったわ。」

「なんだって茨木さん!望月、おまえ」

「えっ!?なんで石田君そんな目で私を見るの。何もしてないよ!茨木さんも落ち着いて自分の発言を考えてみて。」

「そうだよ、石田君。望月さんに何かするようなら僕も相応の処置をとらせて貰うよ。あと茨木、お前はもっと知り合いを作れ。望月さんに迷惑をかけるな。」

石田君が事の成り行きを見ながらスッと携帯を取り出し茨木ファンに報告をしようとしているため慌てて止める。茨木さんの健やかな生活を害していると思われているのだろうが。勘弁してくれ!私は無実だ。

そして東野くんも携帯をとりだしてこちらもなにやら東野ファンクラブに連絡しようとしている。口調も優しげなものからとげとげしいものに変わっていて怖い。本当の口調はこっちであの王子様スタイルは偽者ってやつなんですね、わかります。

茨木さんは頭をかかえたまま座り込みめそめそしている。かわいい、ちょっと和んだ。

なにもしてないけど責任取ってもいい気がしてくるのは茨木さんパワーではないかと思う。



「なにこれ。君のハートを、開け?東野の部屋にあったゲームと一緒ね。」

「「!?」」

「ほんとだ。望月さん、言ってくれたら貸したのに。」

「東野くんもそういうゲームやるの!?」

机の上にそのまま放置されていたゲームのパッケージを発見した茨木さん、どうやらこのゲームをご存知のようだ。

私と一緒に驚いた石田君。やっぱり君もやっていたか。茨木さんに似ているなと思った瞬間から予測はついていたよ。前みたいな、なにそれこわい展開になりそうだから聞かなかったけど。

「これ以外は持ってないよ。僕が凄く好きな子に似た子がいたからさ。」

「美里ちゃんのこと?」

「いやまさか。最初から眼中に入ってなかったよ。」

「じゃあ、それ以外っていったら。」

「苗って子。」

「苗ちゃんは確か攻略できなかった気がするけど。」

佐藤 苗ちゃん。様々な悩みをかかえる美少女達の初期の相談役を務めている。

物欲がちょっと強い普通の女子高校生っていう設定の彼女。声はなし、正直顔も普通。おそらく美少女達との対比を判りやすくするために会社側が出したんだろ。と批評している最中にたまたま部屋にやってきたうちの母、ゲームの苗ちゃんを見てあんたに似ているわねって言ってそのまま出て行った。全然嬉しくない。

このゲームには男友達というポジションのキャラが登場しない、かわりに苗ちゃんが皆の好感度を物と交換に教えてくれるのだ。あざとい、流石JK、あざといな。と私は当初は思ったものだ。ただ2週目であめ一個でも嬉しそうに情報交換してくれると知ったときには、意外と可愛いやつじゃんと考えを改めることになったのはいい思い出である。

この友情<物のキャラクターは人気がなかった気がするが東野くんは違ったらしい。




「最後までバイトだけして苗に貢ぎ続けたよ」

「典型的な駄目男ね。そう思わない望月さん、石田くん。」

「すんません。」

「ごめんなさい。」

「えっと、何故謝るのかしら?あと病み上がりなのに起きあがっちゃ駄目よ望月さん。」

土下座をしようと起き上がった私をそっと布団の中に戻した茨木さん。

石田君は90度に体を折り曲げ綺麗なお辞儀を現在進行形で披露している。

ごめんなさい、始終美里ちゃんに貢ぎ続けていました。最終的に真珠のネックレスとかプレゼントしておりました。まさしくだめ女です。おそらく石田君も同罪です。





「それにしても、望月さんが元気そうでよかったわ。石田君もつき合ってくれてありがとう。」

「いや、俺は茨木さんの役に立てるなら本望です!」

「そういってもらえると助かるわ。」


今まではドン引きしていたところをうまいこと切り返している茨木さん。

茨木さんの石田扱いスキルが6UPした。って感じである。




賑やかな自分の部屋を見る。

去年は風邪を引いても家の近い石田君が帰り道にプリントを渡しに来るぐらいだったのに、今は茨木さん、石田君、東野くんがいてくれる。

親しい友達がいなかったことに特に問題は感じてこなかったけど、こうして見舞いに来てくれる人がいることはとても幸せなことなんだと思えた。

なるほど、先ほど茨木さんが言った意味が分かった気がする。



「私も茨木さんなしじゃ生きていけない体になっちゃったかも。」

「望月さんっ!」

「ひっ!石田君と東野君もお見舞いありがとね。明日はマスク付けて学校行くよ。ショールもありがとう、大事にするね。」

「おう」

「うん」

感極まったとばかりに私に抱きついた茨木さん。いい匂い、その上からだやわらかーと国宝級のボディと匂いを堪能していた私だが、2,3人やってしまったんではないかという目で見ている男性人が視界に入る。

東野君についてはもはや絶対王政の暴君の目をしている。数人程度では到底済まなそうだ。

慌ててつくろうように言葉を続けたら男性陣の態度も軟化しなんとかセーフだったようだ。

危ない、私の体がばらばらになる所だった。



気付けば外は薄暗くなっている。

3人とも帰るというので玄関先までお見送りしようとするも3人に止められ、そのままベッドに戻されることになった。

やっぱり暇な私は枕越しに聞こえる玄関先の声に耳を傾ける。

東野くんがなにか話した後、母は珍しく興奮しているようでまぁまぁまぁとまぁの連発である。その後茨木さんと石田君の声が続いた後しばらくして3人とも帰っていった。





今日は風邪を引いたけどお見舞いに来てもらえたことで大満足な私。ぬふふーと布団の中でごろごろしていると、ふと朝から今まで携帯を見ていないことに気付いた。開いてみると司書の先生と香穂ちゃんから風邪を心配するメールが1通ずつ、茨木さんから朝と昼過ぎに一通ずつ。

1通目は香穂ちゃん達同様。2通目には夕方、お見舞いもかねてプリントを届けますと書いてあった。絵文字がひとつもないその文章は茨木さんらしい。

問題は石田だ。12通きている。

朝、病気を心配する茨木さん可愛い、ついでに風邪は大丈夫か?の文章から始まり。何故茨木さんにメールを返さないと昼ごろまでに3通。昼には茨木さんが1人でしょんぼりご飯食べているぞ!明日には学校こいよってメールが3通。僕マッチョ、今君の家の前にいるのという、メリーさんチックなメールが5通。

正直前半のメールについては今後の石田君との友情のあり方について真剣に考えなければいけないなと思っていたが僕マッチョの文字を見た瞬間にはこのままずっと友達でいようと硬く心に誓った。




風邪が治った翌日東野くんにアドレスを聞かれたので教えることにした。

国宝級のアドレスが2件あるという事実に私はその日の夕方、再びバットを握ることにした。

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