表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/28

茨木さんとお見舞い1

あれからは特になにもなく4月の半ばになった。ちなみに石田君はマッチョのままだ。

あれから詳しい事情を聞いた私からすれば、もうマッチョじゃなくていいのにと思ってしまう。本人に理由を聞くと、「レスリング部には不純な動機で入ったけど楽しいからさ。そのまま続けるのにも筋肉いるだろ。」だそうだ。


その話を茨木さんに伝えたらひとつの事をやり遂げる精神に酷く感心している様子だった。それ以降の石田君のあだ名はまっちょくん。まんまである。


どうやら茨木さんは人の名前を覚えるのが苦手らしい。試しに私の名前覚えている?と聞いたら、最近表情が豊かになった茨木さん、恥ずかしそうに早紀ちゃん…って言ってくれた。鼻血が出た、本当に。目の前にいた茨木さんに心配されてしまった。

正直、私が男でこれがゲームだったら好感度メーターが左に振り切れているぐらいの破壊力だった。すっごい可愛い。私の天使と悪魔もブブセラ吹いて大興奮だった。



そんな今日、私は風邪を引いて休んでいた。



元来体は弱くない筈の私だが、5日間ほとんど寝ないでのギャルゲーはきつかったらしい。

登場する女の子の一人が茨木さんに似ていたためパッケージ買いした一品。さまざまな美少女がいる中、茨木さん似の美里ちゃんは特別だった。彼女の無表情の理由に隠された両親の不倫、家庭内暴力、その障害を一緒に乗り越えた後に訪れる、主人公(つまり私)のみに与えられる天使の微笑み。美里ちゃんに私はめろめろだった。思わずゴリラのように床をどんどん叩いてしまった。当然下にいた両親に怒られた。

全員をクリアした直後緊張が切れたようにばたんきゅー。

そのままコントローラーを握り締め寝てしまった。


翌日起こしにきた母のまぁ!の一言で目が覚めた私、なんだか体が熱かった。

ここで風邪が発覚、睡眠不足と寒い所で寝ていたのが原因のようである。

当然布団からは出してもらえず寝るしかない。

しかしゲームの興奮覚めやらぬ私は全く休めていなかった。

興奮して眠れないのだ!

頭の中にもんもんと浮かぶ昨日やったゲームの光景。

微笑んでいる美里ちゃんを思い浮かべていると茨木さんの昨日見た照れた顔が連想される。

そんな2人が手を取り合いながらにこにこと笑いあっている光景を遠いところから微笑ましく見ている私。そんな時、美里ちゃんの両親と何人かの黒い服の男がやってきて美里ちゃんを連れ去ろうとする。慌ててかけよろうとする私をよそに茨木さんも美里ちゃんを守ろうと手を伸ばし、逆に男に投げ飛ばされて倒れてしまった。叫ぶ美里ちゃん、飛ばされてもなお美里ちゃんに手を伸ばす茨木さん。

そこに後光をさしながら現れた上半身裸のマッチョ、美里ちゃんの両親と男達を軽快なステップと鍛え抜かれた筋肉での他黒スーツを圧倒した。

そのまま唖然としている私と美里ちゃんを尻目に、倒れたままの茨木さんに手を差し伸べたマッチョ。光に照らされたその肢体は輝きを放っている。

ぽーと見惚れていた茨木さんは差し出されたその手にそっと自分の掌を置く。

労わる様に茨木さんを立たせたマッチョ。そのまま2人は見つめあっている。

「っ、なんだそれ!!!」

「きゃっ」

「うおっ」


これ以上は見たくないと無理やり起き上がった私。

悪夢だ。私は妄想しているうちに寝てしまっていたらしい。

はて?今の声はとちらりと見てみるとなんと制服を着た茨木さんと石田君がいるではないか!さっきのは夢だとわかっているが石田君に熱い(風邪的に)拳をお見舞いしたくなるがぐっと我慢する。

「どうしたの、2人とも。」

「望月さん風邪でお休みって聞いて心配になってお見舞いにきたの」

「案内とつきそいで来た。あと東野もいるぞ」

「学校は?え、東野君はどこにいるの?」

「もう終わったわ。東野は望月さんのおば様に媚を売っている最中よ。」

「うちのお母さんに?なんで?」

その質問には茨木さんと石田君、共に視線を逸らしてしまう。

どうやら答えにくい質問だったようだ。ふむふむ確かに耳を澄ませてみると下から低い綺麗なテノールの声と母のまぁ!という声が聞こえる。ちなみにまぁ!はうちの母の口癖だ。

やだ、もしかして東野くん年増好き?うちのお母さん既婚者だからやめてほしいな。


「これお見舞いの品。」

「わーありがとう!素敵なマスクと栄養ドリンク。」

休ませる気がないお見舞いの品揃えに思わず棒読みになってしまった私。つまり早く学校に来いってことか、石田くん。茨木さんはプリンとかスポーツドリンクとかなのにこれは酷い。まぁ一日中寝ていたから体調だいぶよくなったけども。

「はい、これは僕からのお見舞い。」

「ありがとう」

「‥・なんで僕、望月さんにこんな睨まれているのかな?」

母親から預かったのだろうお茶請けとジュースを持って現れた東野くんは私にショールを肩にくれた。凄く高そうだ。お見舞いというかもうプレゼントの域だ。

それよりも、うちの母をたぶらかしおって。許さん、許さんぞという気持ちがむくむくと膨れ上がる。

「うちの母にちょっかいかけないで下さい。」

「そうゆう意味じゃないよ。少しでも第一印象をよくしようとは思っているけどさ。」

「それで俺の前とは全然違う態度なのか。」

「私の前とも大違いなのね。」

はにかんで笑う東野君の隣でくだらねーとばかりに白けた目で見ている茨木さんと石田君。

案外あの2人は気が合うのかもしれない。どうやら石田君も茨木さんに耐性がついたようだ。よかよか。



「望月さん元気そうでよかった。私風邪って引いたことないから心配で。」

「あははーご心配おかけ、え?茨木さん風邪引いたことないの?」

「ええ。」

「僕もないな。」

え、なに美人は風引かないの?どれだけ健康体なの。

不安になって石田君を見てみると、首をたてに振って俺も風邪引いたことないアピールをしている。

風邪を引いている自分がおかしい感じになっている。


私がおかしいのかな?そう思いながら東野くんがもってきてくれたオレンジジュースを飲んだ。

あと1話風邪編続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ