恋をしたくて―夜叉心― [一万文字小説]
二万文字小説に続く、長文短編小説。
>ちなみに、前作は「疑似恋愛シミュレーター」で、
>「http://ncode.syosetu.com/n0627v/」に飛べば見れます。
では、どうぞ。
俺の中には、大いなる魔物が住んでいる。
それは時に、悪夢と呼ばれるものであり、
それは時に、不死と呼ばれるものであり、
それは時に、人生と呼ばれるものである。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
次に、俺は恋愛ができない。
それは恋愛下手ということではなく、俺が呪われているからである。
そして、俺の実年齢は、100年と少しである。
なぜそんなに生きているかというと、先ほども言ったように俺は“不死”だからである。
と言っても、俺の見た目は20歳前後であり、誰も俺を見て実年齢を知り得ることはできない。
さらに言うと、俺は人と関わろうとしない。
だから、俺の実年齢や実態を他人は知り得ることはできないのだ。
そんな俺はある日、街を歩いていた。
それは、とても暑い暑い夏だった。
「あちぃーーー」
俺は小声でありのままを口にする。
しかし、それを口にしたところで、何かが特別変わるわけもなく、俺は暑さに負けてうなだれ歩いていた。
だが、その暑さのおかげで、俺はついに目的地を決定した。
そう、、、
俺はこんな夏空の下、目的地も決めずにフラフラと無駄に歩いていたのだ。
ここで、決定した目的地は、コンビニエンス・ストア・・・所謂、コンビニである。
『えっ? なぜコンビニに決めたかって?』
『そんなの涼しいからに決まっているだろ!!』
『それ以外で、コンビニに入る奴なんて、この世にいるのかよ!?』
俺は1人でそんなノリ突っ込みをしながら、コンビニに入った。
“ウィン―――”
コンビニの自動扉を越えると、俺の目にはレジの女の子が移りこんでいた。
『可愛い///』
そう、俺の心がピョンピョン飛び跳ねる。
しかし、興奮ばかりしても仕方がないので、俺は『諦め』を選ぶことにした。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺の家系は、代々恋愛に対し、呪いがかけられている。
それは、俺の古い先祖が“何か”をしたからであって、その理由は未だに俺の代になってもわかっていない。
しかし、そんなことはどうでもいいんだ。
問題なのは、呪いの内容である。
《俺は恋愛ができない―――――》
これはさっきから言っているのでわかっているだろう。
だがここで問題なのは、俺自身が恋愛をすることができないということなどではなく、俺が恋愛をすると、相手の寿命が減ってしまうということである。
だが、正確に言えば、単に寿命が減るというわけではない。
俺が恋をした相手は、俺に寿命という“概念”を与えなければいけないのである。
なぜなら、俺には寿命というものが存在しない。
だから、不死という存在なのである。
まぁ、とにかく、相手は残りの寿命のうち、俺が恋をして、相手が恋をした瞬間、、、
すなわち、両想いになった瞬間、ランダムで俺に残りの寿命のうちの数年を俺に与えなければならない。
しかし、寿命は目に見えるものではないので、相手の残りの寿命が何年かも知り得ることはできないし、俺に与えられた寿命が何年かを知り得ることは誰にもできない。
ただ、相手の寿命が残り20年だった場合、自分の寿命は20年になるかもしれないし、
はたまた、0年になり、即死となる可能性があることは明白である。
そして、もちろん逆も然りである。
とにかく、そんなこんなで俺は恋愛ができない。
っと言うより、恋愛なんてしたくない。
なぜなら、俺は好きになった相手の寿命を減らしてまで、恋をしたいと思わないからである。
なぜそこまでして、恋愛をする必要がどこにあるだろうか?
別に、俺が不死でいる限り、相手は長く生きていられる。
だから、俺が不死でいればいいのだ。
俺が相手を幸せにするためには、それしかないのだから・・・。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺はコンビニで、漫画を立ち読みしていた。
それを時間にして、約5分間。
短すぎるが、こうなったのには、ちゃんとした理由があった。
そう、、、
彼女が! レジの子が気になって、気になって仕方がなかったのだ!!
だから俺は、コーヒーを買って外に出た。
本当は、漫画も欲しかったのだが、趣味を考れるのが嫌だったのでやめにしておいた。
だから、必然的に次の目的地が決まる。
そう、何を隠そう、決定した目的地は本屋である・・・。
そんな俺は本屋に入り、いつも買っている漫画本を2冊と、読んだことも見たこともない漫画本を3冊買う。
そして、俺は家に向かい、もちろん、家に帰ってからは、漫画を読んだ。
しかし、何時間かして、買った漫画のすべてを読み終えた俺は、腹が空いたことに気が付く。
だから、俺は飯を食べるために外に出かけることを決めた。
『何にしようか?』
自分で作るのをめんどくさいと思う俺は、いつも外食。
だから、毎日何を食いに行くかで悩む。
それはそうと、昨日は中華料理だったな・・・。
『うーん、今日は何しようか?』
そう、、、そして、再びここで悩む。
しかし、毎回すぐに決まるわけでもなく、街をブラブラ歩いて、最終的に疲れたからどこかに入るみたいな感じで飯を終わらせていた。
だって、その方が時間つぶしにもなるし、健康のためにもなるし、何より暇を持て余している俺にはちょうど良かったから・・・。
だから、今日もとりあえず街をぶらついてみることにした。
すると、、、
すると、俺は彼女に出会うのである。
『《奇跡》、そんなことがこんなにも簡単に起きるなんて・・・』
俺は、まず始めに、彼女を見てそう思った。
そして、コンビニで出会った彼女は、俺の前を優雅に歩くのでる。
それを見て俺は思ったのである。
『可愛い///』
『可愛すぎる///』と―――――。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺は昔、オヤジに言われた。
「不幸は幸福を司るものだ」
「人を幸せにしたくば、まず己が不幸にならなければいけない」と―――――。
最初は、この意味が全くと言っていいほど分からなかった。
しかし、今ならはっきりと何を意図とするのかがわかる。
そう、、、
俺は初めから人を幸せになどできないのだ。
その資格を、俺は始めから失っているのである。
それが、想い人ならば、なおさらである。
好きなら、その人の命、、、
すなわち、寿命をもらわなければいけない。
俺は所詮、人を不幸にしかできない生き物なのである。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺は、彼女の後を付けることにした。
しかし、こんなストーカーじみたことをしたのは、生まれてこの方初めてだということを最初に知っておいてもらいたい。
そんなことはさておき、彼女の後を付けることにした俺だが、1分後を付けても、10分後を付けても、何も状況が変わらない。
ただひたすら彼女は、俺の前を歩き続けるだけで、どこに行くわけでもなくフラフラと歩き続けた。
『つまんないなぁ・・・』
俺は次第に、そう思うようになった。
『あと10分動きがなかったら、その辺の牛丼屋にでも入ろう』
俺はそう心に誓い、彼女の後をさらに付けた。
すると、約5分後、彼女は動き出すのである。
急にすたすたとした早歩き。
『まさか、気づかれたか!!』
俺は咄嗟に、そう思った。
だって、そうとしか考えられないじゃないか!
さっきまでゆっくり歩いていたのに、急に早歩きになるなんて・・・。
『しかし、ここで諦めたら男が廃る・・・』
そう思った俺は、足早にして、さらに後を付けることにした。
だが、いくつかの角を曲がると、小さな路地に入ってしまった。
『ここどこだよ・・・』
俺は、そう心の中で呟く。
だが、今更諦めるのもなんだか嫌だったので、俺は諦めずに彼女を追いかけることにした。
しかし、俺の脚の方が長いはずなのに・・・
スピードは確実に俺の方が上なはずなのに、一向に距離が縮まらない。
そして、不思議とドンドンと彼女は見えなくなっていき、最終的に彼女に逃げられる羽目になってしまった。
「くっそ!!」
「なんだよあいつ、、、」
俺は少しイライラしながら、そう口にした。
別に追いついたところで、何かしたかったわけでもないので、イライラする必要性はないのだが、それでも俺は、やっぱりイライラしていた。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
そんな覚悟を持っていたものの、俺は人に恋をした。
それは今回だけではない・・・。
俺は過去に何度も、人に対して恋をした。
それは俺が人であるから、、、それは俺が男であるから、、、
そう、、、
所詮は、俺も人で、人は恋をする生き物でしかなかったからである。
しかし、今回の俺は一味違う。
それは、覚悟を最大限に引き上げたから・・・。
もう『愛することで、自分を惨めだと思いたくない』と思ったからであった。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺はイライラしながら、近くにあった牛丼屋に入った。
この、いつものように変わらない味・・・。
そして、安くて・早くて・うまいところ。
やはり、俺はここが好きである。
そんなことを思っていると、いつしかイライラしていたことも忘れ、飯を食い終わり、家に帰っていた。
そして、俺は帰ってからテレビをつけて見た。
だが、10分もしないうちに「暇だなぁ・・・」と俺は呟く。
『さて、どうしたものだろうか?』
いくらなんでも、やることがなさすぎる。
『さて、どうしたものだろうか?』
俺は困り果てた挙句、風呂に入ることを決める。
「ふぅ・・・」
俺は体を洗い終わって、風呂からでると、ため息を吐いた。
その理由は、なんだか疲れたから。
それも、そのはずだ。
何も用がないのに名前も知らない女の子を追いかけて、それでいて疲れないわけがない。
俺は、もう一度ため息を吐く。
「はぁ・・・」
「今日は疲れたなぁ・・・」
その言葉は、さっきのため息より少し大きく聞こえた。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
次の日、俺は朝出かけると、まず始めにバイトに向かった。
だが、はっきり言って、俺は仕事する必要などない。
その理由は、オヤジが俺のために財産を残してくれたから。
それは、俺が贅沢しなければ、数百年間では底までたどり着けないほど多大な金額だった。
しかし、仕事を・・・
バイトぐらいしないと俺の体も腐っちまう。
さすがに、毎日に飽きているのに、そこでバイトもしていないとなると、体がというより、心が持たない。
なんせ、俺は飽き性なのである。
そんなこんなで、バイトに向かった俺・・・。
少しでもいいから、人と話すことのできる仕事がいいと思い、接客業というものに就いた俺。
「いらっしゃいやせ~!」
「ご来店ありがとうございや~す!!」
「またのご来店をお待ちしてま~す!!!」
っと、普段の俺ではありえないテンションと、話し方。
どちらにしろ、長くは働かないし、クビにされても困らないので、遊び半分でそういったことをしていた。
しかし、店長は優しいのか、馬鹿なのか知らないけれど、そんな風に遊んでいる俺をクビにしない・・・。
『さて、どうしたものだろうか?』 俺はふと、そんなことを思った。
しかし、そんなことを思ったところで、仕方がない。
とりあえず、俺は『働けるだけ働こう』という考えを推薦することにした。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
そんなこんなで、バイトの終了まで、あと10分となった俺・・・。
だから、さらに元気よく「いらっしゃいわっせぃ!!!」と言ってみる。
だが、なんだか面白くなくなってきた・・・。
そう思い始めたので、結局俺は最終的に「いらっしゃいませ」と普通に言っていた。
とにかく、そんな思いをしながらも、俺のバイトは終了した。
そして、俺は帰宅準備をする。
バイト先の制服を脱いで、「疲れたぁ・・・」とため息を1つ。
すると、後ろから「お疲れ様でした!」と、年齢的にも経験的にも後輩の子が声をかけてきた。
だから、俺は「おっつぅ!!!」っと先ほどから続く謎のテンションで返しておいた。
それから、俺は荷物を持って外に出た。
さて、今から何をしようか?
時刻は17時過ぎである。
何もしたいとも思わない。
だが、俺の脳裏に、『あ!そういえば、映画見に行こうと思ってたんだった!!』という言葉がよぎったので、俺はそれを実行することにした。
「すいません、この映画の大人チケットを1つ」
「おひとつですね?かしこましました」
残念ながら、そんな会話にももう慣れてしまった。
昔から1人。 俺は、ずっと孤独だったから・・・。
そんなことを思っている矢先だった!!
『あ! あいつ!!!』
そう、心が叫んだのである。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
ふと、俺の右側を横切った彼女。
さっきまでの俺の覚悟はいとも簡単に崩れ落ち、俺はいつの間にか映画館の店員との会話を終えて、走って彼女の腕を掴みに行っていた。
「何でしょうか?」
腕を掴まれた彼女の第一声はそうだった。
『「何でしょうか?」と聞かれると、困ってしまうなぁ…』
腕を掴んだ方の俺は、そんなことを思う。
だが、何も答えないのは可笑しな話だし、気が付けば、俺の口は勝手に動いていた。
俺「ごめん」
「なんだかさ、、、」
君「何も言わなくてもいいわ・・・」
「だって、あなたが言いたいことは、わかるもの・・・」
それが、次に彼女が俺に放った言葉だった。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
『どういうことなんだ?』
俺は、今起きていることが理解できず、何度も出来事を心の中で反芻する。
しかし、全く解けなさそうな謎。
思わず迷宮入りしてしまいそうな謎に、俺は怖くなって口にする。
俺「君は一体――――――――――!?」
しかし、彼女は俺の問いには答えなかった。
口元に人差し指をあてて、「静かにしてください」と俺に発し、俺の手を握って走っていく。
「何をするんだ!どこに行こうとしているんだ!!」
俺は何度もそういった言葉を発した。
けれども、自分の心は何故か警戒心がどこかに行ってしまったようで、彼女のことなんか気にしていないようだった。
それもそのはずか、、、
俺と彼女・・・。
すなわち、俺と君との後ろには何人もの人間が付けて来ていたのだから。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
俺は後ろを付けてきていた奴等を撒いて、、、
いいや、正確に言えば、俺は手を引っ張られていただけなので撒いたのは君なわけだが、とにかくそいつ等を撒いたところで、俺は君に問いた。
俺「君は何者なんだ!」
「一体、何が目的で・・・」
「そして、なんで後なんかを付けられているんだ!!」
しかし、君は答えようとはしない。
だが、俺もこんなところで引き下がる気などなかった。
俺「俺は君のことが・・・好きだった・・・」
「けれど、今は何が起きているのかもわからない状況だから、正直君への気持ちがわかんなくなってきた」
「だからさ、、、」
「説明してくれないかな?」
君は、少し戸惑いながらも、その答えを述べようと口を開く。
君「私はね、、、」
「あなたと同じで、普通の人間じゃないの・・・」
「だから、変な人に追われているの・・・」
俺「え!?」
それは、俺の理解の範疇を越える話だった。
『普通の人間じゃないって?』
『そんなのありえないだろ?』
『って言っても、俺も普通じゃないから・・・』
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俺「だぁーーーー!!」
「もう、よくわかんねぇーや!!」
「所謂、何?」
「超能力者的な何かか、なんかなわけ?」
「どうせ、俺の心とかを読んだりしたんだろ?」
「だって、さっき俺の言いたいことがわかるって言ったもんな?」
「そういうことだろ?」
君「えぇ、、、」
「そうよ・・・」
「けれど、それ以外にも別のがあるのよ・・・」
俺「はぁ?」
「他にもなんか別の物だって?」
「一体、他にどんな超能力があるっていうんだよ?」
俺は心の中でイライラしながら、君にそんな疑問をぶつける。
すると、君はそんな俺の心を覗いて、答えるのである。
君「いいえ、少しだけ違うわ・・・」
「だって、それは超能力って言うよりも、どちらかというと特殊能力って言った方が近いものだもの・・・」
「・・・・・・・・・・」
「私はね、“不死身”なのよ・・・」
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
そう言われた俺は、すぐには納得ができなかった。
だが、よく考えれば、、、っと言ってもよく考えなくてもそうだが、俺も“普通の人間”じゃないし、他に俺みたいな“特殊な人間”が他にいたって何も不思議じゃない。
なんたって、俺と君は同じ“不死”で、その“不死”の内容が違うだけなのだから・・・。
だから、俺は君の言ったことを理解しようと努力した。
しかし、何回聞いても、君の言っている《私は無制限の不死なの》という意味がわからなかった。
なぜなら、俺の不死の条件は、誰かと恋愛をするなら、その相手の寿命を貰うこと。
だから、厳密に言えば、俺は絶対的な不死ではない。
俺の不死には制限がかかっていることになり、死にたいと思えば恋愛をすれば死ねるのだから、厳密に言えば不死ではないのである。
だが、君は自分の不死を《無制限》だと言う。
君は自分の言っている意味が、わかっているのだろうか?
君は死ねないんだ。
死にたくても、何があっても死ねないんだ。
だから、俺はそのあたりを君から詳しく聞くことにした。
なぜ、君は“無制限の不死”という存在になったのか?
俺と同じで、一族という存在が関わっているから?
それとも、何か別の存在せいで、そうなってしまったのか?
俺は色々なことを君から聞き出そうとした。
しかし、君はいたって落ち着いた顔で言うのである。
君「そんなに、いっぺんに聞かれても答えられないよ・・・」
「そしてさ、 夜になってきたしお腹が減っちゃった・・・」
「だからさ、まずはご飯食べに行こうよ?」
俺「え!?」
俺はその突拍子もない答えに度肝を抜かれた。
だがしかし、腹が減っていたのも事実。
だから、俺はとりあえず彼女の提案に乗り、近くのファーストフードの店に入る。
そして、商品を頼んでから席に座り、それを頬張りながら彼女に真実を問いただした。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
すると、君は言ったのである。
君「私はあなたとは違うわ・・・」
「あなたの“不死”は一族の絡みでしょ?」
「でも、私は違うの・・・」
「私は、、、いいえ、、、私達はあなたの一族を基にして作られた“人造人間”なのよ・・・」
“人造人間―――――”
それが俺達の間で、どんな意味があっただろうか?
そんなちっぽけなことは関係ないだろう?
君が変な奴等に追われていた理由はわかった。
組織を抜け出したから、その組織の連中に追われている。
そんなところじゃないのか?
俺には君のしたことや、したいことがなんとなくわかる気がする。
別に、だからと言って、君みたいに“人の心を読む力”は持ち合わせていない。
だが、俺にはわかる気がしたんだ―――。
所謂、以心伝心というやつだろうか?
俺には君が考えていることがわかってしまった。
だから、俺は君のために組織を潰すことを約束する。
別に時間があったし、お互いに“不死”という存在ならば、それくらいのことに時間をかけてもいいと思ったから・・・。
だが、君は俺を気遣って言うのである。
君「オリジナルは私達コピーにかかわるべきではないの」
「オリジナルには“不死”という能力しかないから、、、」
「私達コピーには恐ろしい能力を持っている者もいるわ・・・」
「あなたや・・・私なんかが太刀打ちできないような者もね・・・」
だが、そんなこと、俺達2人が力を合わせれば何とかなるんじゃないのか?
俺は、そう思い、君に想いを告げる。
俺「好きだ・・・一緒になろう・・・」
君「ダメよ・・・そんなの絶対にダメよ・・・」
俺「君がなんて言おうと、絶対に俺はその組織を探し出して潰すぞ?」
君「あなた・・・自分で何を言っているかわかっているの?」
「あの組織には、絶対に勝てないわよ!」
「はっきり言うわ!」
「私がここに来たのは、組織の存在をあなたに伝えるため・・・」
「あなたに・・・オリジナルに無駄に死んでほしくないと思ったから・・・」
「あなたが捕まって実験台にでもなったらいけないと思って来たの・・・」
「だから、好きとかそういうのは困るの・・・」
「あなたに好きって言われたところでわたし―――――」
俺「君のことが好きなんだ!」
俺は囁くような声で、 でも、はっきりと俺の想いを告げる。
そして、それの意味があったのかはわからない。
しかし、その言葉は、ちゃんと君の心に届いた。
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
君「知らない・・・」
「勝手にすればいいじゃない!!」
「―――――――――――――――」
「・・・あのね、、、」
「オリジナルは普通の人間と違うけれど、心は優しいって聞いたことがあるの・・・」
「アハハ! あれは事実だったんだね・・・」
君はそこで、俺に初めて笑顔を見せた。
そして、その笑顔は、俺が生きてきた人生の中で1番良いものだったと思う。
俺「何言ってるんだよ!」
「君はまだ俺の何も知らないだろ?」
「心が優しいのかも、 それとも不死であっても、ただの一般人と変わらないのかも・・・」
「だからさ、噂でなんか決めずに、自分の頭で考えてから決めてよ」
「君は機械なんかじゃない・・・心のある“人間”なんだから・・・」
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
―――――●―――――○―――――●―――――○―――――●―――――
私はあなたに“人間”って言ってもらえて、とっても嬉しかった。
今までの組織では、“ナンバー1348号”って呼ばれてたから・・・。
だから、大好きなあなたに“人間”って言ってもらえて、本当に嬉しかった。
でもね、私はあなたと違って、別に死ねないわけじゃないの。
確かにね、 あなたには「死ねない」って言ったわ。
そのことは事実だし、間違いないと認めるよ?
でも、私の脳部にはメモリーチップが埋め込まれていて、私はそれで活動しているの。
言ったでしょう?
私は人造人間なの。
人造人間・・・それは名前の通り、私は造られた存在。
あなたの先祖の体の一部の組織を培養し、肉体を生成する。
すると、その肉体は“不死”という存在になるの。
けれど、それは血肉を培養した、ただの肉体・・・ただの肉塊。
だから、考えるための場所が、肉塊には存在しないの。
そのため、脳という器官の代わりに、私達、人造人間の脳部にはメモリーチップが埋め込まれているの。
そして、それで私は考えて生きている。
だから、考える力によって、時に反乱分子になる可能性がある私達。
そんな人造人間を研究者達が野放しにしておくはずはないでしょう?
だから、脳部のメモリーチップのすぐ隣には起爆チップが埋め込まれてるの。
だから、“研究者達が持っている起爆スイッチ”か、“自分の意志”のどちらかで、私は死ぬことができるの。
もちろん、その起爆スイッチは今も組織の研究者達が持っている。
だから、私が組織のところに行けば、爆破されるかもしれない。
その威力はとてつもないものだし、私の仲間がそれで死んだのを知っている。
だけどね、 組織の研究者達は酷くって、自分の周りにバリアを張る機械を身に着けてるの。
賢い蛆虫みたいな奴等だからね・・・。
私達の命は犠牲にできても、自分達の身を護ることだけは知っているの。
だから、私達コピーが反乱を起こしたところで、絶対に誰一人として組織の人間を殺すことなんてできないの。
だから、私が死んでも何の意味もないの・・・。
だって、私が死ぬということのは“あなたを悲しませる”ということにしかならないのだから・・・。
だから、私は絶対に死ぬことができない―――――。
私はあなたのために生まれてきたのだから―――――。
全てはあなたのために生まれたことなのだから―――――。
最後の終わりが変ですね。
ですが、最初思ってた感じとだいぶ違うし、作者自身も想定外の終わり方ということでお願いします。
読んでくださいありがとうございました。