3-12
「やっと到着かぁ。吉野の家は遠いなぁ」
「西岡の家よりは近いだろう?」
「そうだな。西岡は船で帰るもんな」
「酒井……お前、市内だからって調子に乗ってるな」
「まぁまぁ、二人とも。ほら、門まで着いたから」
塀の上で寝そべっていたつむぎの耳が、三人の声を捉えて、ピクリピクリと動いた。
「友だちを連れてくるから」と言って、慶一郎が家を出たのが昨日の昼過ぎだった。友人の一人が遠方の実家に帰っているらしく、中学校で待ち合わせをすると言っていた。
中学校までは、慶一郎の足でも半日ほどかかる。正人が「ボクも行きたい!」とゴネていたのをつむぎは思い出した。
昨日は雨が降っていたし、「飴を買って帰るから」って、諦めてもらってたなぁ。
慶一郎は、眉をハの字にして困っていた。
三人とも制服を着ていた。話の内容から察するに、背の高い方が酒井、低い方が西岡だ。二人とも慶一郎が持っていたものと同じような柳製の行李を持っていた。
「ほら西岡、もう門まで着いたんだから、静かにしないと、な?」
「誰のせいだよ!」
西岡は、持っている行李を放り投げんばかりに声を張り上げた。
「吉野! 行くぞ!」
「あぁ」
肩をいからせた西岡の後ろを慶一郎と酒井が着いて歩く。
数歩歩いて、長屋門を目の前にした西岡が二人を振り返った。
「……なぁ、お前んち、どこから入ればいい?」
「ほら、先に行くから」
酒井が口元を押さえて、肩を震わせた。
「うるっさいなぁ!」
西岡の顔が真っ赤に染まっていく。
それを見た慶一郎と酒井が、「ぷっ」と吹き出し、お腹を抱えて笑った。
へぇ。慶一郎さんって、こんな風にも笑うんだ。三人、とっても仲がいいのね。
微笑ましくなったつむぎは、目を細めた。
「あら、賑やかな声がすると思ったら、こんなところで」
脇戸から千代が顔を覗かせた。
「あ、こ、こんにちは!」
「こんにちは。お世話になります」
慣れた様子で酒井が帽子を取って頭を下げた。西岡も慌ててそれにならう。
「二人ともいらっしゃい。お待ちしてましたよ。さぁ、こちらへどうぞ」
千代が脇戸の奥を示した。
酒井、西岡に続いて、慶一郎が中へと入った。
パタン
千代が脇戸を閉めた音を聞いて、つむぎはあくびをした。
「ようこそいらっしゃいました。さぁさぁ、上がって。荷物を慶一郎の部屋に置いたら、居間へいらっしゃい」
つむぎが土間に入ると、千代が二人を招き入れているところだった。正人が千代の後ろから半分顔を出して、三人が階段へ上がるのを見ていた。
……へぇ。正人くんでも人見知りする事あるんだ。
村の人には人懐こいのに、と思いながら、つむぎは式台へ飛び乗った。
「シロ!」
捕まる! と思う間もなく正人に捕まえられ、つむぎも一緒に居間へ連れて行かれた。




