タバコとフィクション② それでもタバコを吸えば調子がいい?そんなことはない、蝕まれる体と誤解されやすいリスクの話
「アリサ、よく考えたけれど、やっぱり毒なんて大げさなんじゃないの?」
「ウソ?どうしてそう思うんだ?これは科学的に実証されているものなんだぜ?」
「だって、タバコを吸っても元気な人もいるもの。長生きしている人もいるわ」
「なるほど。ライムが主張したいのはそこか?では、今回はそこを重点的に説明していくぞ」
① タバコ毒と病気の関係
「大体大げさよ。タバコを吸ったくらいでせき込むなんて」
「大げさ?人間には異物を吸い込んだら咳をして異物を出そうとする、ごく当然の反応なんだぜ。そして異物がべったりくっついている間は咳が止まらなくなる。だから当然の反射であり、決して大げさじゃないんだぜ」
「喉の鍛え方が足りないんじゃないの?喫煙者は平気で吸ってるわよ」
「ライム、それは逆なんだぜ。タバコ毒によって、この自然な反応が弱くなるんだぜ」
「弱くなる?こんなにピンピンしてるわよ。むしろ調子がいいくらいだわ」
「そうだろうね。タバコ毒は細胞を破壊するために刺激に対して鈍感になるんだぜ。もっとも、毒が蓄積する心臓、脳、肺は痛みを感じない臓器でもあるから、つまり喫煙者は少しずつ毒の影響を受けながら鈍感になり、かつニコチンという覚醒状態にもなっている。それがその調子がいい、の正体だ。」
「それがどうしたの?」
「だから、病気を自覚できずに毒の蓄積が静かに進行する。違和感を感じ気付いた時には手遅れなんだぜ。」
「それが何よ。手遅れだって別に構わないわ。タバコを吸って死ねるなら本望よ。ぴんぴんころりよ。よぼよぼで長生きしても仕方がないわ」
「そうだな。ピンピンコロリを目指しているならば、タバコはお勧めだぜ。なんせ、若くして死ねるからな。タバコ毒は脳卒中や心筋梗塞の確率をドカンと上げる。喫煙習慣の蓄積は大体10~20年で影響が表に出てくると言われている。20代からバカスカ吸うと3,40代でコロリ。ちょうど働き盛りだな。よかったな、ピンピンコロリだぜ」
「・・・」
「ただし、運が悪く発症せずピンピンコロリができなかったらどうだろうか。長い喫煙習慣で毒に染まった臓器は簡単には回復しない。生きていくとしたら、毒を抱えて生きていくことになる。痴ほう症や各種ガンなど、毒が蓄積した体には様々なリスクが伴う。それは苦しいものになると思うぞ。死にたい、と思うかもしれないが、残念ながら日本には安楽死法がない。それまでは治療しながら生きながらえることになる。それはピンピンコロリとは全く異なる、辛くて長い死に方なんだ。よくドラマで肺がやられて鼻からチューブの患者を見ることかあるかもしれないが、あれは決して大げさじゃないんだぜ」
③ タバコのリスクとは何を指すか。誤解される統計上のリスクの意味
「先ほどの説明で確率を使ったが、実際タバコを吸えば、どれくらい病気になるリスク、そうだな、どれだけ癌になりやすくなるか知ってるか?」
「知ってるわ。精々1,5倍。たった0,5増えただけよ。たいしたことないわ」
「たった、だと?ライムはこの数字がなにかわかってるのかい?」
「えっと、がんになりやすい確率が1,5倍になる、ってことじゃないの?」
「大間違いなんだぜ。よく見る1,5という疫学上の数字は喫煙者のリスクを示しているわけじゃないんだぜ」
「はぁ?どういう事?1,5倍ってのは確率でしょ?リスクが1,5倍になるってことじゃないの!?」
「違うんだぜ。そもそもがんのなりやすさなんて人によってまったく違うんだぜ。ライムだって、ぴんぴんしている喫煙者がいるって言っただろう?個人に対するリスクなんて、個人を徹底的に調べなければそんなの出しようがないんだぜ」
「じゃ、これは何の数字なの?」
「個人がなりやすい確率ではなく、病気になった数という集団の統計なんだぜ。つまり、つまり喫煙者グループのがん患者が非喫煙者グループの1,5倍になるということなんだぜ」
「つまりどういうこと?かかりやすさじゃないの?」
「全く違うんだぜ。喫煙習慣はがん患者を1,5倍増加させる。しかし、これはライムがいうような確率ではなく、非喫煙者グループとの相対的なものなんだ。そして、これは個人の体質を測らずとも断定して言える事実なんだぜ。つまり、ピンピンしている人がいるというのとタバコ毒による健康の悪化は、別に矛盾せず両立するんだぜ。」
「はぁ?説明する気があるの?まったく意味が分からないわよ。」
「説明してるんだぜ。これこそが、確率、つまり疫学の本質なんだ。例えば肺がん(男性)は4,3倍で心筋梗塞は1,7倍。これがどういう意味か分かるか?」
「喫煙者が肺がんになりやすいってことでしょ」
「それが誤解なんだぜ。肺がんという確率は非喫煙者には縁のない数字だから相対的に大きく差が出るが、心筋梗塞は生活習慣も影響してくるから差が出にくい。しかし、タバコによる実際の死者は脳梗塞、心筋梗塞の方がはるかに深刻なんだぜ」
「つまり、1,5ってのは」
「理解したようだな。ガンはタバコを吸ってなくてもかかってしまう病気だ。だから差は小さいように見えるが、それは原因が複数あるからであって決してタバコのリスクが低いというわけじゃないんだぜ。そして同じ病名でも非喫煙者とは予後が違うことになるんだぜ」
「どういうことなのよ?」
「ライムは病院に行ったことはあるか?そこで必ず喫煙者かどうか聞かれるはずだが」
「それがどうしたのよ。タバコ害のデータでも取ってるんでしょ」
「大外れともいえないが、違うんだぜ。研究に協力しているところもあるかもしれないが、基本、病院は治療するところだ」
「で、何が言いたいのよ?」
「これは、喫煙歴が深く治療方針と影響していることを示しているんだぜ。つまり、病気に対して毒に汚染された臓器で戦わなければいけないと判断されるんだぜ。」
「・・・」
「また3倍を超える数字は、それが原因だと強く疑われる数字となっている。だから吸わないに越したことはないんだぜ」
③ まとめ
「今回はリスクに対する誤解を解いたぞ。これで霊夢も1,5倍というものがどんなのか分かったはずだ」
「えっと、もう一回説明してくれない?」
「何を聞いていたんだ。疫学上の病気リスクとはタバコ以外の無関係な毒性も含めた数字だということ。つまり喫煙者が主張しがちな「喫煙者でも元気な人がいる」や「がんにも他の原因がある!」なども含めたうえのリスクであって、それらの集合が1,5倍癌になる傾向がみられる、ってことなんだぜ」
「それよ!それに、喫煙の死因の一位は肺がんではないってことも初めて聞いたわ!」
「そうだな。タバコ毒は蓄積性のと即効性のものがある。蓄積されていく毒は徐々に体内にダメージを与えて悪化していく。だから病名が同じでも回復兆候が異なるんだぜ。健康体と同じ症状で済むと考えてしまうことがそもそも間違いなんだだぜ。この違いについて、よく知られているのが新型コロナだ。喫煙者は、コロナに感染すると重症化しやすいことが知られている。体が汚染されているのだから、当然だな」
次回予告
「そして次回では、こういった蓄積毒だけではなく、直接的に作用するタバコ毒や副流煙の説明をしようと思うんだぜ」
「まだあるの!?」
「そうだぜ。なぜタバコが毒物といわれるのか、これは前半にすぎず、まだまだ説明が足りないくらいなんだぜ」
「ふーん、そうなのね」
「次回は、毒は自らの健康を損なうだけではない、副流煙は人を殺す、人殺しの喫煙者だぜ」
「人を殺す!?また物騒ね!大げさすぎるわよ!」
「全く大げさじゃないんだぜ。だから、タバコは毒だとずっと解説しているんだぜ。毒を吸収したら死人出るのも当然で、そもそも毒をまき散らす行為はどういうことかを語っていくぜ」
おまけ 伊達みきおさんの脳梗塞について
「突然のニュースが飛び込んできたな。心配している人も多いだろうが、事務所からの発表ではご無事だということでなによりだな。ひとまずは安心してよさそうだ」
「ほんと無事でなによりだわ。でも、ここで取り扱うということは、タバコと関係しているの?」
「そうだ。ちょうどこのテーマとドンピシャなんだ。みきお氏はヘビースモーカーで知られていたな?だから、みきお氏に失礼が無いように気を付けながら、公表されているデータからこのケースを語っていくぞ。しかしこれは彼を診断したわけではないから、診断結果ではないことに注意してほしい。彼のようなケースはデータで読み解くとどう判断されるのかという、あくまでも疫学的な例示の話だ」
「個人を調べたわけじゃないからね。でも、タバコが関係してるってズバリ言っていいの?伊達さんは甘いものが好きだって聞いてたわよ。それが関係してるんじゃないの?病気を利用して適当なことをいっているんじゃないの?」
「それが適当じゃないんだぜ。大量のデータを積んで数学的なエビデンスを重ねていく方法が疫学なんだぜ。その結果、原因の傾向を探ることができるんだ」
「そうなんだ」
「では食生活についてみてみよう。見た目への言及で申し訳ないが、みきお氏は小太りであるが肥満といえるほどでもなさそうだ。そして彼のような軽微の肥満体系は中年男性に多いんだ。もちろん脳梗塞リスクは上がるものの、最大でも2倍程度だ。タバコは3倍なので1倍も開きがあるんだぜ。少々難しい話になるが、疫学以外の研究を含めて決まるリスク因子は、軽微の肥満で関係あると考えられているレベル3で、すでに関係が認められているタバコ毒のレベル1とは違うんだぜ」
「でも、5年前に禁煙したはずよ!タバコ毒の影響はないはずだわ!」
「確かに禁煙をしたら体は回復を始める。しかしリスクが非喫煙者並みに回復するまでには10-15年もかかってしまうと言われているんだぜ。だから5年では足りないんだ」
「でも、相方の冨澤さんも喫煙者よ?彼は病気でも何でもないわ?」
「それこそが確率なんだ。喫煙者集団でもなる人がいれば、当然ならない人もいる。だから、タバコで病気になる人もぴんぴんする人も同時に存在する。説明したとおりだな。そして現時点で最も疑われるものは喫煙歴なんだぜ。しかし、これを報じているマスコミも皆無だといえる。やはり日本人の知識にタバコが毒という発想はないように感じるんだぜ」
(追記)
「続報だが、伊達さんは禁煙できずに喫煙を継続していたらしい。残念だ」
「でも、本人も吸えないストレスの方がきついって言ってたわよ。吸わない方がかえって病気になるんじゃないの?」
「ライム。そんなことは決してあり得ない。なぜなら、疫学上の喫煙リスクというのはそういったメリットもすでに含めてるからだ。喫煙の効果をすべて含めてしまっても喫煙は確実に死者が増える。そもそも免疫は毒を無効化する魔法ではないし、ストレス軽減が免疫を増やす、ってのも医学上は認められていないんだぜ。それどころかタバコ毒は免疫に作用し弱めてしまう。むしろ逆なんだぜ」
「なるほどね。伊達さんは間違った言説を信じてしまったわけね」
「そうだぜ。これこそがステマの効果、いわゆる洗脳なんだぜ」
「そうだとすると彼もステマの被害者ともいえるわね」




