01 目指せ!堅実(?)な就職!
約10年ほど前から書き始め、何度か書いては消しを繰り返した挙句に3年ほど放置しました。
今度こそ完結までさせたい。
昔々。
この世界には、光の女神様がいました。
お日様やお月様は光の女神様が創ったのです。
とてもとてもきれいで幸せな世界でしたが、そこには光の女神様しかいません。
光の女神様は寂しくなって、地上に生き物を創ることにしました。
お花も葉っぱも動物たちも、そして私たち人間も光の女神様が創ってくださったのです。
でも、生き物が生まれて、光が振り注いでいた世界に影ができました。
そこから生まれたのが魔物です。
魔物はとっても怖い生き物。だから光の女神様が守ってくれていました。
光の女神様の御手は光と温もりに満ちています。
しかしある時、世界に魔王が現れたのです。
魔物たちが光の女神様に愛された生き物に牙を剥きました。
『あなたたちが私を信じることが私の力となるのです』
光の女神様はそう言って、人間の中から勇者を選び、力を授けてくださいました。
光の女神様に選ばれた勇者様とその仲間たちは、剣や魔法で魔王と戦います。
そしてとうとう、光の女神様と勇者様は魔王を倒したのです。
しかし、魔物の中には人間のお手伝いをしたいというものもいます。そういう魔物だけは、光の女神様の優しい心により、響魔として、人間と共にあることを許されたのです。
こうして、この世界は平和になったのです。
もしまた悪いことや怖いことが起こったら、光の女神様と次の勇者様がきっと守ってくださるのです。
めでたしめでたし。
「………………嘘つき」
絵本をパタン、と閉じる。
「守ってなんて、くれなかった」
小さな声が暗闇に沈んだ。
「ウルラート!さっさと飯食って出てけ!王都まで遠いんだぞ、ここは!」
「うるせーって!朝から叫ぶなよ!」
少しくたびれた着慣れた服を着て、ウルラートがキッチンに降りる。
「まったく……勇者選定の儀式はお前たち人間には大事なんだろうが。もっと早く準備しろ!」
「だって俺勇者とか興味ねぇもん。勇者って象徴じゃん。何やるかもよくわかんねーし。稼げんの?」
「知らん。ほら、とっとと飯食って出てけ」
「追い出すとかひっでぇ!」
叱責に文句を返してバタバタと朝食の席に着く。
「はー、やっとここが静かになると思うとせいせいするな」
「勇者なんかホイホイなるもんじゃねーんだからすぐ帰ってくるわ」
「いやそのまま独り立ちしろよ」
「えー、ケチくせー」
「いいからとっとと行け!」
とうとう尻を蹴っ飛ばされて家を蹴り出される。
「エルフのくせに暴力的!!」
「エルフに育てられておいて魔法はからっきし、剣を持たせりゃ多少はマシレベル!殴ったほうが強いってどういうことだお前は!」
そんな声とため息に追い立てられて、ウルラートは住み慣れた家から足を踏み出した。
「エルフの多少マシ、は人間的には十分レベルだろうが!!!」
最後の主張は忘れずに叫んでおいた。
「王都まで遠すぎんだよなぁ……送ってくれりゃいいのに……ってダメか……あいつ響魔じゃねぇもんな……というか、あいつが俺の響魔でよくね?」
ブツクサと文句を垂れながらてくてくと歩く。何しろクソ田舎。王都までの移動手段なんて限られている。
「転移魔法欲しいぃぃぃ」
虚しいないものねだりが、腹立つほど青い空に吸い込まれていった。
ところで、なぜウルラートが王都に向かうか、ということなのだが、先の会話通り、勇者選定の儀式を受けるためである。
最近ではもはや、成人の儀式のような様相を呈しているが、本来は何時か何処かに生まれるかもしれない勇者を探すための儀式である。
勇者の剣を鞘から抜く。ただそれだけ。
もしかしたら勇者が生まれるかもしれない。もしかしたら、自分が剣を抜いたら勇者の剣が光を放つかもしれない。ついでに、成人として一人前と認められる。
「いらなくね?これ。絶対。だって100年くらい抜けてねぇじゃん……」
ウルラートは勇者を夢見たりもしていないので、ただただ、よく分からん儀式のためにてくてくと歩いているのである。文句を言いたくなる気持ちも分かる。
王都まで丸一日。田舎の割にはまぁ近い。それはそれとしててくてく歩くには遠いのである。
「目指せ、堅実(?)な就職!傭兵とか!!そんな感じの!!」
おー!と声を上げたものの、応えてくれるのはどこかで鳴く鳥の声だけであった。だって周りには誰もいない。いたらいたで恥ずかしいが。
「王都でなんかお土産買ってってやろ。何がいいかな……あ、出店巡りとかもしてみたいな……金足りるかな……」
楽しむ気力が湧いてきた。自然と足取りも軽くなる。おいしいものを食べて面白いものがあれば買って行ってやろう。鼻歌交じりにウルラートは王都に向かって行った。
「帰りてぇぇぇぇ!」
………………やっぱりそう簡単には前向きな気持ちにはなれないようだった。
お読みいただき、ありがとうございます。
本日、これを皮切りに約15分間隔で5話まで投稿します。よろしくお願いします。
当面の目標は、『完結させて製本、親に白々しく、「これ面白かったからさー」とか言って送りつけ、作者を教えないまま、「面白かった」という感想を引き出すこと』です。




