魔女の威厳
ついにこの日がやってきてしまった⋯⋯入学式だ。
毎日毎日、嫌だよぉ⋯⋯辛い⋯⋯なんで私が⋯⋯等と嘆いてたせいか、やけに時間が経つのが早かった。
そんな事を思いながら学園の門の前に立っていると声をかけられた。
「君、大丈夫かい⋯⋯?気分でも悪いのかな⋯⋯?」
こんな時に誰だろう?と思い振り返ると、煌めいた翡翠の瞳が目に入った。
全てを見透かすような瞳をユフィーアは見た事がある。
だか、それが誰なのかが思い出せなかった。
(この人、どこかで会った事が⋯⋯?)
「レディ、大丈夫かい?」
「あっ、はい、大丈夫です⋯⋯」
「そうか、なら良かった。無理はしないようにね。」
そんな会話を軽く交わし、青年は去っていった。
結局誰だったんだろう?と考えているとチャイムが鳴った。予鈴だ。
「あっ、入学式始まっちゃう!」
そんな事を言いながら、急ぎつつも上品に教室へ向かう。
1-Sと書かれた部屋の扉を開けると既に、多くの生徒が席に座っていた。
座席は自由で、多くの生徒が顔見知りと思われる生徒達と集まって座っていた。
ユフィーアは学園に知り合いが居ないので、一人寂しく隅の席にちょこんと座った。
席に着いてから少しすると再びチャイムがなり、教師と思われる女性が入って来た。
「全員ホールに移動だ。」
そう一言言ってホールへ向かっていった。
教師に続くようにぞろぞろと生徒たちもホールに向かい、その中にはさっきの翡翠の瞳の人もいた。
クラスメイトだったんだと思いながらユフィーアも指示に従いホールへ向かっていった。
ホールは学園の生徒と教師が全員入っても余裕があるくらい広く、生徒を中心に集めその周りを教師が囲むような隊形をしていた。
恐らく何かあった際に生徒を守るためだろう。
ここは将来有望の貴族の子供が多く集まる場所だ。
何が起こっても不思議じゃない。
実際三年前の今日、隣国のマスラテル帝国が刺客を寄越してきている。
その時は、死者二名重軽傷者十七名の被害で生徒に死者は出なかったとの事だ。
また、同じような事件が起こらないとは限らない。
今年は、第一王子と婚約者の公爵令嬢も入学する。
だからこそ、魔女達に依頼が来たんだろう。
まぁ、将来この国の中核を担う様になるであろう子達が怪我なんて面目丸潰れだもんなぁ⋯⋯
そんな事を考えていると新入生代表の挨拶が始まった。
第一王子はどんな顔なんだろう?と、護衛対象の容姿を確認するために舞台の方へ目をやると、そこには鮮やかな金色の髪に翡翠の瞳の青年が立っていた。
「えっ、朝の⋯⋯第一王子ってあの人だったの⋯⋯?会った事がある気がしたのってまさか王城で⋯⋯」
ユフィーアが少し焦りつつも頭をフル回転させていると、
「全員手を上げろ!」
と二階のホールから声が聞こえてきた。
声の方向に目をやるとホール全体を囲う様に五十人程の襲撃者の姿があった。
入口からも同じように、二十人程のスーツ姿をした人達が入って来た。
入口から入ってきた襲撃者達は舞台に上がっているレイアス殿下と周辺にいる教師を捕らえ、声を上げた。
「こいつを殺されたくなかったら婚約者のシャルロッテは舞台に上がってこい。そして、教員は膝をつき手を上げろ。全員拘束する。生徒は中央に集まって座れ。大人しくしていれば一時的だが命の保証はしてやる。」
対抗しようとした教師は複数から攻撃を受け怪我をおい、気絶をして拘束された。
対抗しようにも、人質となっているレイアス殿下とシャルロッテ嬢、生徒達の身の安全が保証できない上に人数も多い。
圧倒的に不利だ。
この状況だと、教師達じゃ解決できない。
ということで、早速だか私の出番だ。
"白銀の魔女"の名にかけて無事に解決せねばならない。
まずは、正体がバレないように正装になりたい。
顔がバレては元も子もないからだ。
とりあえず透過の魔法で、ホールから出て指を鳴らすと、モヤが出てきた。
少ししてモヤが晴れると、白を基調とした帽子とマントを着た少女がいた。
正装は魔力で編まれた服でできており、魔力を体に密着させる事によって着替えることができる。
非常に便利だ。
帽子を深く被り顔を隠したら、透過魔法で姿を隠し飛行魔法でホールの中央へ飛び上がった。
透過魔法をとき、中央にいる生徒たちを囲むように防御結界を張ったら、飛行魔法も解いて結界の上に立ち声をあげる。
「私は色彩"白銀の魔女"である。今すぐ人質を解放しこの場から去れ。さもなくば魔女の鉄槌が下ることを覚悟せよ。」
ユフィーアの声は張り上げていないのにホール全体に綺麗に響いた。
普段の可愛らしい少女はここには居らず、堂々とした威厳ある魔女としての宣言である。




