ep.12 色彩の魔女
実践演習が終わり早三日。
この三日間、特に何事も無く平和に過ごせた。
レイアス殿下とシャルロッテ嬢もいつも通り、真面目に授業を受けているらしいし歪な魔力も気になる変化も無かった。
依頼を受けてから早一ヶ月。
ユフィーアが寮のベッドでのんびり過ごしていると、
(主様、監視対象が移動しました。)
(アベリア、視界共有。)
(かしこまりました。)
ユフィーアがそう伝えると、脳に直接映像が流れてきた。
映像には、レイアス殿下とシャルロッテ嬢が仲良く話しながら食堂に向かっている姿が写っている。
(特に問題は無さそうね。アベリアはそのまま監視を続けて。何か問題が発生した時は報告を。)
(承知致しました。)
そう言って誰かに監視を続けるよう指示を出し、ユフィーア本人は書き物をするために椅子へ座った。
しばらくすると、コツコツと何かを突つく音が聞こえてきた。
音のする窓の方へ目をやると、一羽の鳥がいる。
窓を開けてあげると金色に輝く鳥はユフィーアの腕に乗ってきた。
この鳥は、"翠玉の魔女"の使い魔、ティスフィア。可愛い名前をしているが大きい猛禽類だ。
キュイキュイと可愛く鳴いているティスフィアの足には、丸めらてた紙が括り付けられている。
丁寧に紙を外し広げてみると短くこう書かれていた。
ー "白銀の魔女"ー
今宵、月が満ちる刻、常闇にて七色の色彩が集う
これは、緊急会議の手紙だ。
いくら王族が任務に関わってるとはいえ、あまりにも急すぎる。
ユフィーアが白銀の魔女と呼ばれ始めてから緊急会議が開かれた事は二度しかない。
一度目は、魔物の大規模氾濫が起こった時。
普段、魔物の氾濫が起こった時は各自で対応をするという体制を取っているが、魔物の軍勢が五十万を超える大規模氾濫となると、守るべき場所が多いこちらには不利。それぞれが連携をしつつ対応するため緊急会議が開かれた。
二度目は、前回の会議。
王族が関わり、国の未来を左右する可能性のある依頼を、誰が受けるか決めるために開かれた。
普段、色彩の魔女に回ってくる依頼は全て、"翠玉の魔女"の元へ一度送られる。
送られた依頼は、"翠玉の魔女"が適正のある魔女へと送り、返事を待つ。
拒否をされた場合、別の魔女に依頼を送るが全員から拒否された場合は、常闇の間にて会議が開かれる。
拒否をされた依頼を、誰が受けるか決めるために緊急会議が開かれることは今まで一度もなかったが、今、ユフィーアが受けさせられている王族護衛の潜入依頼は、全員が断りを入れたせいで会議が開かれた。
開かれた理由として、王族の護衛だからという事もあるんだろう。国の未来がかかっている程の重要な依頼は翠玉の魔女だけでは決めかねない。そういう事だろう。
そんな、滅多に無い緊急会議がこのタイミングで開かれた。
必ず何かある。
ここ最近の疑問の正体が分かるかもしれない。そんなドキドキを抱えながらユフィーアは正装に着替え、常闇の間へと向かっていった。




