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国からの依頼

初作品です。拙い部分が多いですがよろしくお願いします。

「この依頼は"白銀の魔女(はくぎんのまじょ)"に受けてもらいましょう、異論はありませんか?」


 "翠玉の魔女(すいぎょくのまじょ)"がそう言うと、


「 「 ありません! 」 」


 と、他五名の魔女が同時に声をあげる。

 余程この依頼を受けたくないのだろう。

 どんな依頼かと言うと、全寮制のエルダリア学園へ正体を隠し入学して、この国、セリントル王国の第一王子、レイアス・エルニール・セリントル殿下とその婚約者、シャルロッテ・リン・フィーンズ公爵令嬢の護衛。

 国からの護衛依頼はトラブルが起こる可能性が高く、戦闘する事も多数ある。

 一言で言うと面倒臭い。今回の依頼は、正体を隠す必要もあるので余計面倒臭い。その上、期間も三年と長い。

 ちなみに、"白銀の魔女"ユフィーア・エスプリアもこの依頼は受けたくない。

 内容自体も面倒臭い上に、依頼で拘束される時間も長いのだ。学園で生活をするとなると尚の事。魔法の実験、開発、訓練などできっこない。

 絶対に受けたくない。

 他の魔女達も同じ様な理由だろう。この依頼は何があっても受けない。誰かを生贄にしてでも、だ。


「あのぉ〜、これ私が受けないとダメですか?"漆黒の魔女(しっこくのまじょ)"殿や"深紅の魔女(しんくのまじょ)"殿の方がいいと思うんですけど⋯⋯

"漆黒の魔女"殿の呪法はほとんどの人が分からないと思いますし、"深紅の魔女"殿の血液操法もわかる人は少ないと思います。二人共技術も高いからバレない様にササッてできそうだし⋯⋯」


「あなたがこの依頼を受ける事に対して誰も反対していません。なのでこれは、あなたが受けるべき依頼なのです。それに、年齢的にも一番若く、攻守のバランスのいいあなたなら、どんな状況に陥っても大丈夫でしょう。これは"白銀の魔女"の依頼、分かりましたね?」


「はい⋯⋯この依頼、"白銀の魔女"ユフィーア・エスプリアが謹んでお受けいたします⋯⋯」


 全く敵わない。この依頼は絶対に受けない、代案を出して納得させてやる!と心の中で意気込みながらも最年長の"翠玉の魔女"の圧には敵わなかった。




 潜入護衛依頼の問題も解決したので、紅茶で口内の渇きを潤してから少し雑談をし、研究があるやらなんとかで"紫苑の魔女(しおんのまじょ)"が帰ったのを皮切りに、"紺青の魔女(こんじょうのまじょ)"や"漆黒の魔女"と少しづつ解散して行った。

 最終的に常闇の間には"翠玉の魔女"とユフィーアの二人が残った。

 机に突っ伏して居たユフィーアに対し、"翠玉の魔女"は今回の依頼は注意するよう声をかけ去っていった。

 あなたなら大丈夫だろうけど、と言って。




「気おつけなさいって⋯⋯どういうことだろう?

 よく分からないけど、それより依頼どうしようかなぁ⋯⋯学園なんてやだよぉ、なんで私が⋯⋯」


 人がいなくなった常闇の間で、一人嘆いているユフィーアは口では泣き言を言いつつも頭の中では今後、すべき事を考えていた。


「決まった事に文句言ってもしょうがない、切り替えよ!まずは、依頼の受理をして貰って、そして学園に潜入後、自然と殿下とシャルロッテ嬢に接触して護衛につく。よし、完璧!三年間どうにかして頑張ろっと!」


 そう言い、ユフィーアは気合いを入れると、早速依頼受理の為、依頼人の国王レイオール・エルニール・セリントル陛下に謁見を申し出た。

 ユフィーアが"白銀の魔女"と言うこともあるのか、申し出て数日で謁見することができた。

 当日、王城へ行くとメイドが"白銀の魔女"様ですか?と声をかけてきた。

 謁見と言うこともあり、会議と同じ正装で来た。

 ユフィーアは、銀髪の長い髪を垂らし魔女だけが着ていいマントを羽織り、ツバの大きめの帽子を深く被った格好だ。

 一目見れば魔女と分かるほど目立ち、特徴のある帽子とマント嫌う魔女もいるがユフィーアは顔が見られない位深く被れるこの帽子と体を大きく見せれるマントが好きだ。

 ユフィーアは銀の輝く様な長い髪と、全てを呑み込みそうな程深い夜空の様な紺色の瞳をしている。瞳に光が入ると紫がかっているようにも見える。

 その容姿はどこかのお姫様と比べても遜色が無いほど整っており、まだ若々しさの残る顔立ちだ。

 魔女とは、大地を揺るがす程の力を持ち、人々を魔の者たちから守る。

 その存在は普通の人では出せない威厳と尊厳を持ち合わせ、人々に安心を与える。

 しかし、ユフィーアにはそれが出来ない。

 低い身長、細く程々の肉しか付いていない身体、整った顔。

 威厳と尊厳を持ち合わせた魔女とは程遠い姿。

 そんな嫌いな自分の姿をマントと帽子は隠してくれる。

 これを着ることで少しは自分の理想の魔女になれているんじゃないかと思える。

 そんな格好をした、ちょっぴり偉大に見える小さな魔女は一つの部屋へ案内された。

 部屋には防音結界、物理防御結界、魔法防御結界、消音結界が張られている。

 魔女と国王だけが使える部屋だ。

 この部屋には魔女と国王が認めた者しか入れない最高機密を扱える数少ない部屋だ。


 引かれた椅子に腰を掛け、紅茶を啜り国王を待っていると三分と経たないうちに扉が開いた。

 部屋へ入って来たのはセリントル王国国王、レイオール・エルニール・セリントル陛下だ。


「お会いできて光栄です。陛下。色彩"白銀の魔女"ユフィーア・セリントルでございます。」


「そうかしこまらんでいい。依頼をしたのはこちらじゃ。」


 短く簡易的な挨拶を済ました二人は椅子に腰掛け早速本題に入った。


「今日は依頼の受理⋯⋯だったかな?」


「はい、エルダリア学園にご入学される第一王子、レイアス殿下と婚約者のシャルロッテ嬢の護衛依頼を受理していただきたく。」


「"白銀の魔女"殿が受けてくれるとはな、わかった。依頼受理と入学手続きはこちらでしておく。後々、詳しい書類を送らせてもらうが、それで良いか?」


「はい、ありがたく存じます。」


 依頼受理の話が終わり、レイオール国王陛下は予定があるとすぐ席を立ってしまった。

 ユフィーアも陛下の居ない部屋に長く留まるのは不躾だと思い、出された紅茶を飲み部屋から出た。


 ー 数日後 ー


 コンコン、と扉がノックされた。


「はーい」


 扉を開けた先には象牙色の髪の男性が立っていた。傍には騎士が二人。

 三人の姿を見たユフィーアは、指を鳴らしすぐに防音結界を張った。


「お初にお目にかかります、"白銀の魔女"様。私はレイオール陛下の秘書官、ハイネスと申します。陛下からお預かりした物をお届けに参りました。」


「ありがとうございます」


 封筒を渡すとハイネスと騎士達はすぐに踵を返していなくなってしまった。

 受け取った大きな封筒の中には、国王直筆の手紙とエルダリア学園の詳細と入学説明書が入っていた。

 入学説明書には、入学する際に必要な物、学園と寮の規則、そして年間でかかるお金の額が書かれていた。


「高っ⋯⋯?!嘘でしょ⋯⋯?」


 思わず声に出てしまった。入学金、授業料など諸々で七千万ギール。

 ありえないくらい高い。流石、国随一の貴族学園。

 庶民は、年間で五百万ギール稼げればいい方だ。

 多くの民は三百万から四百万ギール程の稼ぎで生活をしている。

 魔女達は上位貴族と同じ位の権力があり、位でいえば辺境伯や、侯爵程だ。

 魔女達は国からの依頼や各自の研究、魔物退治などで国からお金を貰っている。時には、貴族からも仕事が回ってくる事がある。

 ユフィーアは年間、億を超えるお金を稼いでいるが任務で七千万ギールは痛い。

 そんな事を思いながらも読んでいると、最後のページの特別生徒の欄に目がいった。

 いわゆる、首席や各学問での首席達を除く上位成績者が書いてある。


  ー 特別生徒 ー 

 首席 レイアス・エルニール・セリントル   

 次席 ユフィーア・エスプリア        

三席 シャルロッテ・リン・フィーンズ     


 貴族科 クラネッタ・フォン・ルナーヴァ

 武術科 ヴェニク・ドラ・ゾルピレム

 魔法科 メルレス・ラン・ドライブ

 芸術科 リゼリア・ランス・ヴィトラス

  ー特別生徒は学費免除ー


 と書いてあった。


「次席 ユフィーア・エスプリア⋯⋯?どういう事?次席⋯⋯?」


 何故こんなことになっているんだろうか、試験を受けた記憶もない。なぜ次席に?

そんな疑問を持ちつつ国王からの手紙を読んだ。

国王からなら、なにか書いてあるかもしれないと思い。


「"白銀の魔女"殿

 此度はエルダリア学園への入学おめでとう。

 そして、ありがとう。

 レイアスとシャルロッテ嬢をよろしく頼む。

 今頃、自分がなぜ次席なのか戸惑っていると思う。なので、次席の理由を書こう。

 随分前に王城で受けてもらった試験を覚えているか?

 あれは、今年のエルダリア学園の入学試験の問題だ。

 "白銀の魔女"殿は貴族科と芸術科が八割、武術科が六割、魔法科に至っては満点という好成績を残してくれた。本来なら首席だったのじゃが目立ちすぎると言うことで次席とさせてもらい、代わりに次席だった息子を首席にさせてもらった。

 次席と言うこともありお金の方も心配なかろう。

 そして、依頼の報酬として月に三千万ギール送らせてもらう。

 もし、何か要望があれば手紙や使いを寄越してくれれば対応しよう。

 改めて、今後はよろしく頼む。」


 「そういえば、昔王城で何か試験を受けたような気がする⋯⋯入学試験だったのか⋯⋯

 国王直筆の手紙なんて貰っちゃったらやり通すしか無いよなぁ⋯⋯三年間長いな、嫌だな、面倒臭いなぁ⋯⋯」


 そんな事をぼやいてきながら生活をしていると、どんどん時間が経ち、あっという間に入学式当日になっていた。


日本円で一ギールは一円です。



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