#1-7 流サイド
良から連絡があったのは、僕達がマンションにやってきた次の日だった。
「え!犯人らしい車をもう見つけたの!?」
僕が大声で、スマホの向こうにいる良に尋ねると、良はそうなの!と興奮しきった様子で返事をしてきた。
「車のナンバーは、冬山羊達に伝えてある!多分、監視カメラによる追跡は始まってるはず!」
「でも、監視カメラが無い場所で車のナンバーを変えていたら、追えないよ?」
僕が質問をしようとしたとき、近くにいた暁は、「それは無い。」と断言した。
「恐らく、教職員もそこまでは想定内。だから、俺達が潜入をする前に、通常時より多く小型カメラを街中に仕掛けていると思う。それらの映像の中で、ダッシュで逃げている車が映ったら、そこから、行き先の予測をAIが行うだろう。」
いつもの変態…じゃなかった。レディーファーストな暁が急に大人っぽく解説をしだし、僕は正直戸惑った。だが、状況が状況だ。なぜ、そういう風に断言できるのか暁に尋ねると、
「今時、高性能な小型カメラは監視・追跡の基本だからな。」
と当たり前みたいに言われた。
「何で知ってるの?」
「…まぁ色々と、な。とにかく、俺はそういうカメラを実際に見たことあるし、使われている例だってこの身で体験した。だから、多分こういう高技術は、日本でとても重宝されているE.P.H.が既に調査の取り組みの一環として、組み入れていると思うんだ。」
「なるほど…凄いね。」
要するに、冬山羊先生達も今頃、このカメラの技術を使って、標的の車を見逃さず、これから行くであろうルートを予測しているってことだ。
電話の向こうの良は、暁の声が聞こえたようで、
「じゃあ、冬山羊達の連絡待ちね。」
と言った後、すぐ電話を切った。そして僕は別室でくつろいでいるノギに、これから出動するかもしれないと伝えに行くのだった。
「ノギ、入るよ。」
ノックをして、男部屋(まあ、殆どは寝るためだけの部屋になっているが)に入ると、ノギが敷いてある布団の上で本を読んでいた。彼は、そこそこ読書家なので、時たま時間を忘れて本の世界に入っている場合がある。
「ノギ、読書中にごめん。」
ノギの肩を優しくつつくと、彼は本に栞を挟み、どうしたの?と優しく尋ねてきた。
「さっき、良から連絡があって。犯人の車らしいものが見つかったって。」
僕がそれを言うと、ノギは先程の落ち着いた雰囲気を乱し、え!?と目を大きく開かせた。
「潜入早々、早くない!?」
「だよね…これは、奇跡としか言いようが無いよ。」
僕はそう言って、ふぅと溜息を吐く。そして、
「だから、もうすぐ出動命令が出ると思う。準備しておいてくれる?」
本題を言った。ノギは予めそういう流れになるだろうと予想していたのか、うん、とだけ頷いた。
「じゃあ、準備出来たら、リビングに向かうね。暁はリビングに居るんでしょ?」
「うん。良と夏居は、現場待機みたい。指示があったら、先に動けるのは多分外に出ている二人だから。」
「了解!じゃあ、身支度整えておくね。」
「うん。リビングで待ってる。」
ノギからの、素直な返事に心をほっこりさせつつ、僕はリビングに戻るのだった。




