#1-6 良サイド
そんな話し合いがあってから一日_
昨日あの後、初日にやる班とその次の日にやる班を分けるための「グーとパーで分かれましょ」にて、偶々私と同じグーを出した夏居が、今日の見廻りに就くことになった。
そして、現在夏居と見回りに出ている最中である。
「まっちゃん、この辺りはあまり女の子居なさそうだね。もっと市庁舎周辺に行こうよ。あそこは多分、マンションとか沢山建ってたから、子持ち家庭も多いはずだし。」
夏居と共に仮の自宅から出て、しばらく。夏居は、周囲の様子をキョロキョロ見ながら、そう呟いた。
「確かにね。もっと人通りが多い方歩こう。」
「うん!」
明るく笑顔で返事をする夏居は、私のとってとても輝いていて…太陽のように思えた。
「夏居って、割と周りから好かれてない?穏和だし、明るいし。」
周りを見回しながら、二人で歩を進める。そんな中、私はついその言葉を口から出していた。ソレを聞いた夏居はというと、一瞬目を見開かせた後、優しい微笑みを浮かべていた。
「別に?私は周りからどう思われてるか分からないけど…でも、私はまっちゃんの方が周りに慕われていると思うけどなぁ~」
「え、」
今度は私が驚いた。
「でも、、、」
「確かに、正直に言うけど大人に対する態度は良くないと思う。でも、私知ってるもん。まっちゃんが、私達の中で一番仲間思いだって事をね!」
_だから、周りからの信頼が厚いんだよ_
そんな風に言われた時、私は少し昔を思い出した。
_誰も私を一人の子供として見てくれなかった。私も誰も信じなかった。けれど、“あの人”だけが私の可能性を信じて、ここまで応援してくれた。
今思うと、意外と自分も成長したのかなって思ってしまう。昔は育った環境のせいか、今より性格が捻くれていた。だが、今は…今はどうなのだろう。
(そりゃあ…冬山羊とか、私達を利用してる大人共は大嫌いだけど…)
今の仲間達は大好きだ。しっかり者で振り回される可哀想な流も、変態だけど意外と良い奴の暁も、周りをよく見てくれているノギも…そして、隣にいる夏居も。皆、私にとって大切な人だ。
そんな風に私が遠い過去に思いを馳せていた時_夏居は、先程の穏やかな雰囲気を少し乱して、私の肩をトントンと叩いてきた。
「まっちゃん、まっちゃん!あの子…いや、あの車…!」
「、!」
夏居が指を指した車は、黄色い帽子を被ってランドセルを背負って歩いている女の子のすぐ目の前に路駐していた。
「確かに、外装もよくある黒い車だし、中もカーテンで覆われてて見えない…」
私は、その車の不審な点を頭の中でどんどん挙げていく。この辺りはまだ市庁舎付近では無く、いわゆる住宅街のような区域になっている。近くになにか企業の事務所などがあるわけではない。
(仕事の事情では停まっていない…!なら、)
何処かの家に用があるのだろうか?…いや、それも無さそうだ。車はちょうど、家と家の境という辺りで停まっていた。
(もしかすると、あの車…!E.C.なんじゃ…!)
手違いがあったら謝れば良い。とにかく、後悔しない選択を選ばなくてはならない。気付いた時、私は夏居を置いて、車の方に向かって走っていた。
「ちょっと、そこの車!」
私が大声を出して駆け付けると、車は急に発車しだし、何処かに行ってしまった。
「ひぃ…」
そこを通るはずだった、ランドセルを背負った女の子は、目の前の車が急に動き出してビックリ。しばらく金縛りのように立ち尽くしていたのを後から来た夏居が、大丈夫だよと安心させていた。
一方、私は教職員・流達にそれぞれ連絡をし、ギリギリ見えた車のナンバーを伝えるのだった。




