#1-4 流サイド
水100Lが何を意味しているのかは取りあえず置いて、僕達は作戦内容について細かく話し合った。
「ところで…潜入って何処に行くんですか?」
夏居が不思議そうに尋ねる。それもそうだ。確かに、連続幼女誘拐事件の犯人は水と何かしら関連性があるE.C.の連中だと言うことはコレだけで分かるが…一体、僕らは何処に潜入することになるのだろう。
「そうですよね…実は、この作戦計画を考えて下さったのは、“生徒会”の方達でして…」
冬山羊先生の返事を聞いた僕らは、目を大きく見開かせた。
「な、なんで生徒会がこの一件に…?」
暁がポツリポツリと呟く。それもそのはずだ。
生徒会。ソレは、僕達の学校…E.P.H.を統治していると言っても過言では無い七人の最強と恐れられる生徒の集団。正体は誰も分からない。彼等のE.Powerも分からない。噂によると、ある程度の力を持った生徒が引き抜かれているらしいが…詳細は不明。もしかしたら、僕等の近くに居るのかも知れないし、あるいは本当に全く会った事の無い人の可能性もある怪しい人達のことである。
さっそく、それを聞いていたノギが生徒会と関わっている事に慌てていると、冬山羊先生は少し困ったような顔をした後、覚悟を決めたように口を開いた。
「この一件、どうやら生徒会の皆さんが大変ご執心のようで…最近、成川班は他班に比べて戦績も良いのを目にしたらしく。」
なるほど、興味があるから使える駒を利用しようと。まあ、僕達もあくまでE.C.に対して複雑な感情を抱いているから、気持ちは分からなくもないが。
「それで、その作戦とはなんですか?」
「それが、生徒会の処理担当の方が、次の事件が発生しそうな区域を発見したらしいんです。なので、成川班の五人と我々教職員がそれぞれ朝と夜のパトロールに向かい、ターゲットの条件に当てはまりそうな女児を監視し、犯人が現れたときに捕らえるという作戦です。」
冬山羊先生が言った計画からは、確かにこの事件の実行犯の一人は捕まえられそうな感じだが…しかし、大事なポイントが一つある。
「もし、その区域が外れてしまったらどうするんですか?また、此方の存在がバレた上で捕まえられなければ、もう誘拐事件を起こそうとせず行方をくらませるかもしれません。」
僕の問いに対し、冬山羊先生は的確に答えた。
「調査をしたのは、生徒会の処理担当。この方は情報収集などが得意で、今までありとあらゆる事案を解決させてきた方です。教職員からの信頼も厚く、私も情報収集能力に関しては、とても感心してしまうほどです。」
ふぅん…と、興味なさそうに良が相打ちを打つ。だが、一応この先何かしらでまた関わる可能性もあるので、説明しておこう。生徒会の中には、それぞれ担当というものが決まっているらしく、処理担当とは、その中の一つを担っている人物のことである。噂では、その人物はかなりの情報収集能力に長けていて、任務に有益な情報の他に、スパイ活動をしている疑いがある生徒を裁判にかけ、その後、脅威を見事、我が校から排除したという武勇伝みたいなものがある。
(まあ、僕にとってはあまり興味の無い事なんだけどね。)
実際、生徒会とは時たま協力して任務を幾つかこなしたことがある。だが、向こうは決して正体を明かしてこない。僕等も知ろうとすることは許されていない。お互い常にウィンウィンの関係なのである。
「それで、処理担当の人は何を言っていたんですか?」
ノギが、冬山羊先生にその事を尋ねると、冬山羊先生は待ってましたとばかりに、流暢に、僕等がこれからすることを話してくれた。
「処理担当の方がおっしゃった地域は、T県のD市。恐らく次に犯人が狙う場所はその辺りだろうと。今までの犯行現場などから推測したようです。」
「成川班の皆様には、その市の市民としてしばらく生活して貰います。朝と夜の、保育園などの園児達の見守りが基本的な仕事です。また、我々教職員は市の監視カメラを監視するので、何か異常があった場合、連絡をするので、至急その場で対処にあたって貰いたい。」
確かに、市民として生活していた方が、向こう側からは気付かれにくいし、何かあった時はすぐに駆け付ける事が出来る。僕等は、冬山羊先生の仰った作戦内容に対し、賛成の意を表した。
「確かに、子供とはいえ女性を攫うような輩は排除しなくてはいけないもんね。」
「暁、それただのロリコン。」
「藍沢さん、なんか心が傷付くから辞めてくれ。」
暁と良の茶番を余所に、僕とノギと夏居は、冬山羊先生の案を見て、ここはこうしようと作戦の具体的内容を話し合うのだった。




