#1-3 冬山羊サイド
成川さんと遠山さんが無事仲直りしたのを見届けた後、私は成川班の皆に、昼休み、生徒相談室にて新たな“任務”についての指示を出しますと伝えた。皆は、その言葉を聞いた後、一瞬で大人っぽい顔付きになるのだった。
「…分かりました。給食後、速やかに生徒相談室に伺います。」
返事をしてくれた成川さんも、先程のフレンドリーな態度とは一変、軍隊の一兵卒のような立ち振る舞いを見せる。
(まあ、この子達はある意味、民兵みたいなものだからな…仕事と私情のオンオフはハッキリしやすいのかな。)
この施設で教職員をしている時点で考えてはいけないのだろうが…私には此方の子供達は、E.C.という脅威に強制的に立ち向かわなくてはいけない民兵のように見えてしまう。私は、いけない考えすぎだ、と少し首を横に振るのだった。
給食も終わり、遂に昼休みの時間。三年生の生徒相談室で資料などを整理していると、ドアの向こうから人の気配が。
「入って良いよー」
五人分の席を作り、私はホワイトボードの近くに立つ。すると、コンコンとノックをして入ってくる成川班。
「ごめんね、休み時間なのに。」
「いいえ、大丈夫ですよ!冬山羊先生なら話題は何でも話していれば楽しいですし!」
紺田(ノギの名字)さんの屈託のない笑みに、少し心を和やかにさせる。しかし、成川班には一人、大人…いや、E.P.H.の職員をとてつもなく嫌う人が居るのである。
「藍沢(良の名字)さんもありがとう。昼休みはいつも外で遊んでいるのに。」
「…こんな部屋居たくない。早く用件だけ伝えて。」
藍沢さんは、人柄関係なく職員を嫌う。勿論、私もその内の一人。さっきまでの和やかな雰囲気はすぐに壊れたが、私はその事を気にしていないように対応しつつ、来訪者全員を用意した席に座らせた。
「えーっと、今回は君達に“潜入”をして貰います。」
とりあえず用件を語る。すると、その言葉にピクリと藍沢さんは反応した。
「潜入ってどういうことよ。私達をE.C.にブチ込んで、そのまま前科付けさせようって言うの?」
「こら、良。」
麗美(夏居の名字)さんに止められ、藍沢さんは口を噤む。私は、感謝の意を込めて、麗美さんに軽く会釈をした後、皆にこう言った。
「今回は、通常のように被疑者が分かっていないんです。なので、被害者側からの視点で探るしかない。」
ホワイトボードに、現時点で政府機関が暴き出した情報を書き連ねていく。
「最近、関東地方で連続幼女誘拐事件が発生していてですね…どうやら、犯人はグループで活動しているらしく。先日、攫われた娘の両親に犯人が連絡をしてきたと。」
「『E.C.だ。娘を帰して欲しければ、一千万と“水100L”を渡せ。』。そういう風にFAXで送られてきたそうです。」
私がホワイトボードにその件について赤ペンで書いていると、紺田さんから質問が。
「水ということは、犯人は水タイプのE.Powerを持っているということになるんでしょうか?」
「うーん。犯人自体はそう言うわけじゃ無い気がするけどなー。っていうか、なんで民間人から水奪うの?その辺のプールかなんか抜けば良いじゃん。」
遠山さんは、紺田さんの質問をやや否定的に見ているらしい。はっきり言って、それは私も同じだ。
「そうですね、水を集める手段なら民間人に頼らなくても山ほどあるはず…それでも足りないって事になるんでしょうか。まあ、とりあえず置いておきましょう。」
“水100L”の件は置いておこう。今はまず、仕事の話だ。




