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Element  作者: Umi.@レモン大好き
#1 とある事案
2/12

#1-1 流サイド

 きっかり六時。穏やかな朝に鳴り響く寮のチャイムはかなりうるさい。


「耳栓、耳栓…」


五分間も鳴り響くそのチャイムは、通称“地獄のベル(Hell)”。僕は耳栓を付けながら、素早く身支度を整え、自室から出た。これから、残る成川班の四人を起こしに行かなければならない。


 僕達E.P.H.の寮は、一人部屋と二人部屋がある。大抵の人は寂しいからと言って二人部屋にするが、どうやら成川班は色んな事情があるお陰で、全員、一人部屋である。まあ、僕もその当事者の一人なのだが。



 チャイムが鳴り終わった頃。最初に来たのは暁の部屋。寮は、一階が食堂やお風呂、二階が男のフロア、三階が女のフロア、そして屋上。最初に僕の部屋に一番近い暁の部屋へ向かうのが毎日の日課だった。


「入るよ、暁。」


ノックを三回したあと、返事が無い状態でも関わらずに僕は暁の部屋に入る。すると、やはり中にはベッドで完全に大の字になって眠っている暁。何故かは分からないが、彼は地獄のベル(Hell)が鳴ってもあまり起きることはない。きっと、夢で女子に囲まれていて幸せフィーバー中なのだろう。だが、僕はそこまで甘い人間では無い。


「起きろ、暁。地獄のベル(Hell)はもう鳴ったぞ。」


「…zzz…フフッ…zzz」


「地獄のベル(Hell)じゃなくて地獄の入り口への切符渡すぞ。」


「…zzz」


どうやらとことん眠るつもりらしい。だが、朝食は班の皆で集合して食べなければならない。そろそろお腹も空いてきたので、やや不機嫌になった僕は、早速最終手段に入る。


「地獄でも、元気でね」


ニコリと平たい笑みを浮かべた後、僕は暁の髪の毛の一本に触れ、火を起こした。僕のE.Powerは“火”。E.Powerは四タイプあって、水・火・地・風のタイプ別に能力は分かれている。ちなみに、僕の具体的な能力は、自由に触れた物を着火させたり、逆に頭の中で念じれば、自分が着けた火は消すことが出来るという物。それ以外のことは出来ない。他の火のタイプの子達は、それぞれ目に見えない炎を創り出したり、炎の剣を作ったりすることが出来るらしい。だが、やはり特徴的な能力は“一つだけ”しか持てない。


 さて、そんな説明をしている間に、暁は目覚めたらしい。僕は、髪の毛の一本から燃え広がりベッドに着いている火を仕方なく消した。


「おはよう暁。早く身支度してくれない?」


「おはよう…じゃないだろ!!」


早速暁は怒りだした。どうやら、僕が火を使ったのが気に食わなかったらしい。


「そんなこと言うんだったら、とっとと起きろよ。」


「はぁ…あのさぁ、普通寝てる人に火を使って起こすもんなの?いつも思うけど」


「だって、僕なら自由に消すことが出来るし、暁の能力を使えばどうって事ないだろ?」


「そうじゃないってっ!!…はぁ、もういいや。燃えた布団代、あとで請求してやる。」


ブツブツ言いながら、暁はベッドから飛び起き、よいしょっと身支度を始めた。僕は、その様子を見て、食堂で待ってると伝えた後、静かに部屋を出た。


 

 次に向かうべきは、良の部屋だろう。同じ班のもう一人の男子…ノギは、暁とのいざこざの間に起きているはずだ。しっかり者だし。僕は、女子が居住している三階に行き、良の部屋に辿り着くのだった。


「良ー」


こういう時、何も言わずに入るのはマナー違反である。男ならまだ良いが、女性の場合、着替えなどをしているときに入ってしまうと気まずいもので。


「良ー?開けるよー」


呼びかけを二回した後、僕はドアノブに手をかけた。しかし、その後僕はドアを開けることは出来なかった。…いや、出来なかったのではない。向こうがドアをぶっ倒してきたのである。


「たぁぁぁっ!!」


良の雄叫びが聞こえた時、僕は瞬時にドアが外れて倒れてくるだろう位置から離れた。


「…おはよう、良。相変わらずだね。」


三日に一回のペースでドアを壊してくるので、はっきり言ってもう慣れた。一方、


「…zzz…ハッ!」


ドアの向こうで立ち尽くしている良は、パジャマのまま、目を見開かせる。


「あ、またやっちゃったか…ごめん、流」


「うん、大丈夫。」


良は先程の事を覚えていないように、寝ぼけたままの目をこすり、洗面台に向かう。実際の所、良は何も覚えていない。いつも彼女の寝相はおかしいのだ。勿論、ドアを外したのも寝相の一つ。その体力を見直さなきゃいけないなとすら思ってしまう暴挙である。


「ホントにごめんっ!」


両手を合わせて謝る良。いつもは、勉強なんか面倒くさーとか言って授業中に居眠りをしているくせに、こういう時はしっかり謝る。だから、何となく面倒見なくちゃなという感じになるのだろうか。


「本当に大丈夫だから。気にしないで。」


僕は心からの笑みを浮かべた後、良の部屋から離れ、夏居の部屋に向かう。だが、夏居は僕がドアノブに触れるまえに、ドアをギィと開けていた。


「あ、流。」


「夏居、起きてたんだね。」


「うん。それに、さっきドンって凄い音したから。まさか、またマッちゃん(良の愛称らしい)がドアを壊したの?」


夏居はこういう時の勘が良い。僕は苦笑いを浮かべ、うんと頷いた。


「まあ、悪気が無いのは知っているんだけどね。」


「確かに。マッちゃんは寝相凄いからね。この前も、お泊まり会開いてた時、夜中私の頬に一発入ったから。」


「おぉ…大丈夫?良のパンチ痛かったでしょ?」


「ううん大丈夫…ってもう、時間!流、早く食堂行って朝ご飯食べようよ!」


夏居に言われて近くの時計を確認すると、6:19。食堂に着くべき目安は、6:20。あと一分で一階の食堂に行くのにはやや無理があった。


「急ごう、夏居。」


「うん!」


二人は、途中で良を回収した後、食堂へ向かうのだった。



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