#2-5 流サイド
その日の夕方、僕らは早速寮の談話室にて作戦を立てるのだった。
「にしても、コレに勝ったら何かあるのか!?」
良はどうやらこの行事に対して意欲的らしい。他のメンバーもワクワクしているような顔付きだった。_まあ、僕を除いてだけど。
「流は、楽しみじゃないのか?」
暁がそう僕に尋ねてくる。その返事に、僕はどう返そうかしばらく悩んだが、やがて本音を口に出すのだった。
「別に、嫌だな…とかは思ってないよ。でも、なんか種目もよく分からないし、勝ったときのご褒美とかってまだ言われてないだろう?なんか、イマイチやる気がなぁ」
頬杖をつきながらそう言うと、暁がそう言えばと口を開く。
「優勝した班には確か、_」
「確か?」
皆が何だろうと思いながらそう問い返すと、暁は途端に自信を無くしたようにシュンと肩を狭めた。
「ごめん、なんか自信なくした…」
「いや、意味分からないんだけど!」
良がすかさずツッコミを入れると、暁は、
「風の噂で聞いただけだったから…」
と言い訳を述べる。そんな様子を見かねた夏居は本題へと戻る。
「まあ、とりあえず勝った方が気分もスッキリするだろうし…景品云々は気になるところだけど一回置いておこうよ!取りあえず、作戦会議!」
夏居に促され、僕は冬山羊先生から貰った表を皆の前に出す。空白の表の左端の欄には、縦にそれぞれ料理・Eスポーツ・演劇と書かれている。
「これは?」
ノギがそう尋ねたのに対して、僕は答える。
「誰がどの種目に出るかを書く表だね。ちなみに、先生から言伝を預かったんだが_」
僕は、先生から渡された時に言われた言葉を皆に告げる。
「種目の兼任は不可。一つの種目には1~2人までしか参加することは出来ない。」
「_ふぅん。冬山羊の奴、本格的にイベントをやろうってしているのね。中々に内容が凝ってる。」
良はそう呟いて表を一通り見た後、一つ溜息を吐いた。
「でもさ、どうしてこんな巫山戯た種目にしたんだろ。」
_そう、ソレだ。全く、殆どやったことの無い物ばかりだ。精々出来るのは、「料理」で、家庭科の調理実習でやった味噌汁を作ることだけだ。他の「Eスポーツ」はあまり気乗りしなくて元々やっていなかったし、「演劇」に至っては意味不明。この学校【E.P.H.】の付属の小学校でも、学芸会はやっていない。
「はぁ…」
途方に暮れている僕の様子に気付いたのか、夏居が、取りあえず種目に出る人を一つずつ決めていこうよ、と言い出す。
「まずは料理だよね!…まあ、私作れるのあんまり無いけど_自信ある人は?」
夏居がそう声を掛けると、班の中で挙がった手は一つ。最初、まさか班の中では手は挙がらないだろうと思っていたので、僕は内心驚いた。
「あの、僕一応できるよ…?」
そう勇気を出して手を挙げたのは、ノギだった。
「へぇ~。お前、料理できるんだ。」
暁は、感心したようにそう呟く。ノギは、うん!と頷き、
「こう見えて、定食屋の息子だったからね。手伝いは昔からさせられてたし。まあ、お金が無いから全ての費用が無償のこの学校に入ったんだけど。」
と微笑ましく答えた。だが、ソレを聞いた途端、僕以外の班のメンバーの顔が一瞬引き攣った。
「…そうなんだ。頼もしいなぁ。」
僕達の様子がおかしいことをノギに気付かせないようにする。基本的に、僕達はそれぞれのメンバーの出生や過去について何にも知らない。っていうか、誰もが普通なら教えようとしないだろう。何故なら_
「ここ(E.P.H.)に居る生徒は、大抵過去に訳ありだからね…。」
ボソッと僕はそう呟く。だが、どうやら周りには聞こえていないようで、何も反応は返ってこない。やがて、皆の様子は元通りになっていった。
「_取りあえず、料理の所にはノギって書いておくね。」
場が再び緩んできたとき、そんなことを言いながら表を埋める。すると、良も「あ。」と呟き、
「私も、料理やって良い?」
と尋ねてきた。周りはまた少し困惑する。
「へぇ~。まっちゃんも料理できるのー?」
夏居は微笑みながら、良に尋ねる。すると、
「一応ね。豚カツ“しか”出来ないけど。」
と恥ずかしそうに彼女は答えた。でも、何故豚カツしか作れないのだろう_そんな疑問をしばらく抱いたが、取りあえずその事は気にしないでおこう。こうして、料理担当は、ノギと良に決まったのだった。




