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2,悲劇は変えられないのか

 少女が前世の世界にてはまっていたゲーム、『ユージーファンタジー』。主人公は最悪の存在に滅ぼされかけた世界を救うために立ち向かう冒険物語。


 『アン ヌタリー』は、そのゲームの中でラスボス『滅亡王 ダンテ』が若きに日に仲良くしていた女性だったが、貴族社会の理不尽によって極刑判決を受けてしまい、見せしめの意味も込めて公開処刑をされた。

 ダンテはその事をきっかけに世界に対して激しく絶望し、闇落ちしてしまう。


 ゲームの展開を思い出したアンはベッドの上で全身から滝のような冷や汗を溢れ出していた。


(やばいやばいやばいやばい!!! このままじゃ私は理不尽な裁判に捌かれて処刑される!! その上、あの優しいダンテ君が最悪の存在になってしまう!!)


 この先に起こる悲劇を知ってしまったアンがまず考えたのは、当然最悪の未来を回避するための方法だった。


(確かアンは元々子供好きで、子供を庇って貴族に怪我を負わせてしまったことがきっかけで目を付けられて、裁判にかけられちゃうって……

 とにかく、そんな行動を起こさなければ運命は変わって……ん? 子供を庇う?)


 アンはそこで今自分がベッドの上にいる理由を思い出した。ダンテとのお出かけの最中、暴走した馬車から逃げ遅れた子供を庇って跳ね飛ばされたことを。


「も、もしかして事故って……」


 嫌な予感を抱えたアンは、回復してすぐに事故について調べてみた。

 その結果分かったのは、子供には怪我がなかったものの、突然アンが飛び出して驚いた運転手が急に手綱を引いて急ブレーキをかけたがために、馬車に乗っていた貴族のご子息が怪我をしたという事実だった。


 貴族を怪我させたことで裁判に繋がりアンとダンテは破滅する。つまり事故が起こってしまったこの状況では……


「詰んだアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 学園の庭、誰にも見られない場所で一人叫んだアン。彼女達が暮らすこの国では身分は絶対だ。平民であるアンが貴族に怪我をさせたとなれば、言い逃れなどどうあっても出来ない事なのだ。


(どうしようどうしようどうしよう!!! 事故はもう起こっちゃって、いつ調べが付いて私が逮捕されるかも分からない。

 こんなの、もう私にはどうすることも……)


 考えれば考えるほどにこの先の運命が破滅しかないことを突き付けられているようで、顔が青ざめ絶望していくアン。

 彼女はふと我に返ると、自分の両頬を叩いて痛みで気を紛らわせた。


「ウゥ……どうにかしてとりあえずこのモヤモヤを晴らしたい……そうだ! アギーに散歩させようかしら」


 『アギー』とは、学生寮で飼われている茶色い大型犬だ。人なつっこく好奇心旺盛な性格で、学生達からの人気も高い。

 確か今日はまだ誰も散歩に連れて行っていないだろうと思っていたアンは、悩みを少しでも気晴らしして誤魔化そうと思い犬小屋にまで向かっていった。


 無理に明るく振る舞いながら犬小屋にまで到着したアンは近付きながらアギーに声をかけてみた。


「お~いアギー! お散歩に行こ~!!」


 しかしいつもならばアギーは声をかけられた途端に犬小屋から飛び出してくるのだが、今回は何故か犬小屋から出てこずお尻だけ飛び出させて楽しそうに尻尾を振っている。


「珍しいわね、反応しないなんて……あんな楽しそうに尻尾まで振って……もしかして、何か変な物でも拾ってきたのかしら!!?」


 アンはアギーが変な物でも拾い食いしているんじゃいかと心配になって駆け寄りながら声を大きくした。


「アギー! 何咥えてるの!? もしかして変な物食べてるんじゃないの!!?」


 近くで大きめの声を出しても振り向きもしないアギー。余程今咥えているものに夢中になっているのかと思ったアンは、こうなれば実力行使だとアギーの空回りを両手で掴んで犬小屋から引っ張り出した。


「ほら! 変な物食べてないで! 隠さないで出しなさい!!」


 大型犬の重い身体を犬小屋から引っ張り出すのは女性の力には一苦労だったが、どうにか息を上げながらも犬小屋から出させることに成功したアン。

 それでも放そうとしないとアギーに、ここまで来ると何を咥えているのかが気になってしまったアンがアギーの正面に身体を運ばせた。


(あの人なつっこいアギーが他の全てを差し置いて夢中になっちゃうなんて、一体どんなものを……)


 するとアンはアギーが咥えていたものの正体を見て大きく驚いた。


「エッ!? これって……ぬいぐるみ!!?」


 アギーが咥えていたのは、白い身体宝石のようなエメラルドグリーンの瞳を持ち、黒いベストを着込んで、ウサギの耳のようなものを垂れさせなが耳の付け根辺りを黒いリボンでくくっている、丁度抱き心地の良さそうなサイズのぬいぐるみだ。


 もしや何処かから拾って咥えたところ、あまりに噛み心地がよくてそのまま夢中になってしまっているといった所だろう。

 とにかく何処で拾ってきたのかも分からないそんなものを咥えさせ続けるのはマズいと思ったアンは、犬小屋の中にあった骨のおもちゃを取り出してアギーに見えるようわざとらしく振って見せた。


「ほ~らアギー! お前の大好きな骨のおもちゃだよ~!! そんなおもちゃよりもっといいよぉ!!」


 アギーはこれに興味を持ったようで、甘噛みしていたぬいぐるみを口を広げてその場に落とした。


「ほ~らとってこ~い!!」


 アンが放り投げた骨のおもちゃに元気よく飛び出すアギー。アンはこの隙にぬいぐるみを回収しようとするが、次にそのぬいぐるみを見て更に驚くことになった。


 地面に落ちたぬいぐるみは、なんと独りでに動き出し、その場に立ち上がってお辞儀をしてきたのだ。


「ええぇ!!? ぬいぐるみが、動いたぁ!!?」


 アンにとって初めての体験。これが彼女の運命を大きく動かすことに繋がっていった。

読んでいただきありがとうございます! ブックマーク、評価、感想どれを送って貰っても嬉しいです!!


普段は下記の作品を連載しております! ジャンル関係無し、何でもありの世界観を巡る冒険譚。ご興味がありましたらこちらも一読して貰えると嬉しいです!!


『FURAIBO《風来坊》 ~異世界転生者の俺より先に魔王を倒した奴についていったら別の異世界に来てしまった!!~』


https://ncode.syosetu.com/n3786ib/

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