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1,アン ヌタリー

 科学技術がそこまで進歩せず、代わりに魔法の文化が広まり進化したヨーロッパに似た世界。


 『アン ヌタリー』は、物心付いたときから多少天然な部分はありながらも、人に優しく親切に接する人として育った。

 当初はこの世界の普通の住人として暮らし、クラスのイケメン男子、『ダンテ』と趣味があったことから仲良くなり、いつの間にか彼に惹かれていきながら、寮制学校の生徒としての毎日を過ごしていた。


 恋に青春に大忙し。そんな彼女の日常が一変したのは、そのダンテと遊びに出ていた日のことだった。


「それで、その子が……」

「へえ…… ? ねえ、あれ?」


 人混みの道を歩いていた二人、道の先にいる大量の人達が左右に逃げ出していき、同時に何かが走ってくる大きな音が聞こえてきた。


「何の騒ぎだ? これは……」


 騒ぎの音に困惑する二人。次の瞬間に近くにいる人達も水戸を避け始めたことで原因が目に見えた。大急ぎでこの場の民衆を押しのけるように移動する、金ぴかな豪華な装飾を至るところに付けている、まさに貴族専用の馬車の存在だ。


「馬車が! それも人混みの中をあんなスピードで!!」

「これじゃあ、かわし損ねた人が危な……ハッ!!」


 二人が馬車の危険を話している最中、噂をしていればとばかりにアンは道を避けようとしたところを転倒し、馬車はそんな少年の元に容赦無く近付いていく。


「子供が!」


 子供が危険な状況の中、ダンテはどうにか解決できないかと脚を進ませようとするが、彼が動き出すよりも前に彼の隣にいたアンが考えも無しに走り出し、子供を抱えて移動しようとした。

 しかしそう都合良くはいかない。馬車の速度は相当なものだったようで、もう逃げても間に合わないほどにまで近付いて来ていた。


 馬車馬の脚が顔に迫る瀬戸際。アンはふと思考にぼんやりとこれに似た、でも何処か違う景色が浮かび上がっていた。


(あれ? この光景……前にもあったような……)

「アン!!」


 ダンテが遅れて走るも間に合わない。馬の脚は子供を庇うアンの身体を蹴り飛ばし、彼女の身体は宙に浮いて頭から地面に激突し、意識を失ってしまった。


 気を失っていたアンは、とある夢を見ていた。ついさっきまで見ていたレンガ製の道や建物ではなく、グレーの平らな地面の中央に白い線が引かれていた道に、今と同じように子供が一人転倒している。


(これ……夢? でも、なんだか憶えがあるような)


 そして子供から視線を振り返らせた先には、見たこともない、しかし何処か憶えのある四角い獣。二つの目が強く光り、甲高い咆哮を上げながら見ている相手に迫ってくる。


(トラック? あれ、なんで私この物体のことが分かって……)


 次に目に飛び込んできたのは、トラックの身体に鏡のように反射して見えた、自分の姿だった。


(これは……私!!?)


 次の瞬間にトラックの突撃を受け、跳ね飛ばされ、地面に頭から激突する彼女の身体。ついさっきと同じ感覚に、アンの頭の中に一瞬にして大量の情報が流れ込んできた。


(そうだ! 私は元々日本の女子高生!! 子供を庇ってトラックに弾かれて……その場で……じゃあ私!)


 アンは流れ込んできた情報から一つの結論に至った。


(私!? 異世界転生しちゃったってこと!!?)


 頭の整理が付いたと同時に目を開いたアン。視界がハッキリしてまず見えたのは、共に出かけていたダンテの心配そうな顔だった。


「だ、ダンテ君?」

「アン! 良かった!……目を覚まして……本当に……よかった……」


 目から大粒の涙をこぼすダンテ。アンは彼に多大な心配をさせてしまった事を申し訳なく思った。

 そこから二人はしばらく楽しい談笑の時を過ごし、日が沈む時間にまで迫っていた。


「おっといけない。もうこんな時間か。そろそろ帰るよ。今日は君も早く寝て、回復させないとね」

「はい、ありがとうございます」


 ダンテは優しい微笑みを浮かべて安心した様子で部屋を去った。


(ハァ♡……毎度思うけど本当にイケメン。あの去り際の微笑みなんて、全世界の女子全員が一発でやられちゃうわ!! ホント、ダンテ君って……)


 あんなイケメンと仲良くなれて本当に良かったと思うアン。しかしここで思い浮かんだのは、彼の名前、そして自分自身の今の名前についてだった。


(ダンテ? それにアン……今にして思えば何処かで聞いたことがあるような憶えが……)


 アンは整理した情報を振り返って一つヒットするものに当たった。


(そうだゲーム! 私が前世めっちゃプレイしていたファンタジーゲーム!! あれに登場していたキャラの名前と同じ!!)


 ならば自分の立ち位置がどのキャラだったのかを思い出そうと頭抱えて必死に考えるアン。しかし何処まで考えても名前と姿しか浮かび出てこず、どうしてなのかが気になって仕方なかった。


 そんな彼女が頭から湯気が噴き出すほどに数分間考えて行き着いた答えは、彼女自身にとって絶望しかない答えだった。


(そうだ、思い出した……

 私……いや、『アン ヌタリー』は、ゲーム本編の時系列では既に死んでいるキャラなんだった)

読んでいただきありがとうございます! ブックマーク、評価、感想どれを送って貰っても嬉しいです!!


普段は下記の作品を連載しております! ジャンル関係無し、何でもありの世界観を巡る冒険譚。ご興味がありましたらこちらも一読して貰えると嬉しいです!!


『FURAIBO《風来坊》 ~異世界転生者の俺より先に魔王を倒した奴についていったら別の異世界に来てしまった!!~』


https://ncode.syosetu.com/n3786ib/

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