88話
「ツバサ…!」
私は、ツバサに駆け寄る。
「ツバサ、大丈夫?」
「そろそろ、いいんじゃないかな?」
声の方を振り向くと、お義父さんが呆れた顔をしていた。
「何言ってるんですか!?ツバサが…」
「あははは。ルナ、ごめんね。俺、超元気。」
ツバサは笑いながら、起き上がった。
「ほんとに?本当に大丈夫なの?」
「うん。何もされてないからね。」
へ?
「ルナ様、ごめんなさい。私たちの演技が大袈裟すぎましたね…」
いつもの侍女さんがお義父さんの横で申し訳なさそうにしている。
なにが起こってるの?
「ルナへのドッキリでした!」
は?
「ルナに構ってもらえないのが寂しくて、父さんに相談したんだ。そうしたら、『家につれてきな』って言ってくれて。」
ツバサはニコニコしながら、説明してくれている。
だけど、私は状況が飲み込めないでいる。
「あ、脱水症とか高熱とかは本当だよ?家に来てからが全部ドッキリ!昔から病気がちでよく風邪ひいてたし。でも、1日で完全復活してるから、安心して。」
それは本当なんだ…
じゃあ、どれが嘘なの?
「まさか、保健室の先生もグルなの?」
「違うよ。家に来たのはたまたま。どうやって連れて行こうか考えてたところだったし。」
そうなんだ…
「だから、何してるか俺も知らなかったんだ。とりあえず、俺が元気になるまで部屋にいてもらうことになってて、その後はみんなで相談したんだ。」
じゃあ、首謀者は…
「ツバサが仕組んだってことで合ってる?」
「だいたいはね。」
「はぁ…よかった…」
私は一気に力が抜ける。
「心配してくれたの?」
「当たり前じゃん!」
「えへへ、ありがとう。」
ツバサは嬉しそうに笑った。
「もうこんなことしないでね。」
「いてっ。」
私はツバサにデコピンする。
「ごめんなさい…」
あれ?
でも、このドッキリをやった理由って…
「私が何に怒ってたかわからなかったってこと?」
ツバサはビクッとした。
「えっとね。父さんに相談したときに『友達を傷つけたことじゃないか?』って教えてもらったんだけど、ルナが俺より友達を優先させるのが信じられなくて…」
えぇ…
「ルナちゃん、それに関しては私が謝るよ。すまなかった。」
お義父さんは深く頭を下げて謝ってくれた。
「なんで、お義父さんが謝るんですか?」
「ツバサにやらせたいことが多く、あまり同年代の子と遊ばせたことがなかったんだ。だから、友達がわからない子に育ってしまって…それは、私の責任だ。」
なるほど…
「ルナ?」
ツバサは怒られ待ちの顔でシュンとしている。
「ツバサ、友達について教えてあげるね。」
「うん…でも、俺はルナ以外いらないよ?」
ツバサは複雑そうな顔をしている。
「そんなこと言わないの。」
「はーい。」




