81話
ツバサは私の膝で寝たまま、ゆっくり懐かしそうに、時折寂しそうに話してくれた。
「今まで、大変だったんだね。」
私はツバサの頭を優しく撫でる。
「うん…でも、今すごく幸せ。」
ツバサは私の手に自分の手を重ねて、ほっぺたまで持ってきた。
「ルナの手、暖かい。安心する。」
ツバサ、本当に幸せそう。
よかった。
「ツバサ。」
「ん?なぁに?」
「結婚、しよっか。」
ツバサは動かずに固まった。
「ツバサ?」
「ルナ、今なんて…」
「結婚、しよって。」
ツバサの目が潤っていき、大粒の雫が流れ始めた。
「ほんとにいいの?俺でいいの?」
「ツバサがいいの。」
「俺、ルナのこと幸せにするから。絶対に離さないから。」
ツバサは起き上がって、思いっきり抱きしめてくれる。
「うん。私もツバサのこと、幸せにするね。」
「もう十分幸せだよぉ…」
私たちはゆっくり離れ、目が合う。
そして、その瞳に吸い込まれていった。
「今度の休み、指輪買いに行こうね。」
ツバサは横に座って手を繋ぎ、ニコニコしている。
「そうだね。本当に結婚するのはもう少し先になると思うけど、前みたいにペアリングほしいかな。」
「わかるー!」
ツバサは本当に楽しそうにしている。
「1個、お願いがあるんだけど、良いかな?」
「なになに?今の俺なら、なんでも叶えられる気がするよ!」
お、言ったな?
「ツバサとした約束、緩めてほしいの。」
その瞬間、ツバサから笑顔が消えた。
「え、なんで?俺以外の男が必要ってこと?いらなくない?」
言い方…
「みんな友達だからだよ。」
「俺以外に友達って必要なの?」
当たり前だろ!ってツッコミたいけど、あの話を聞いちゃうとな…
「ツバサは婚約者でしょ?友達じゃないもん。」
「でも、友達って必要?」
結構、擦れているな…
「何か嬉しいこととか、悲しいこととか、共有して一緒に喜んだり、慰めあったりしたいなって…」
「それ、全部俺じゃダメなの?」
たしかに。
あれ?
なんで友達って必要なんだろう?
「ごめん。やっぱり、今のままで大丈夫。」
「わかった!」
ツバサはまたニコニコ笑ってくれた。




