531話
「ねぇ、本当にこのくらいでいいの?」
ツバサは走りながら戸惑っている。
そよ風が気持ちいいくらいのスピードだからだ。
「ちょうどいいよ。乗り心地サイコー。」
「なら、いいけど…アニマル王国に着くの夜になっちゃうよ?」
「お休みだから大丈夫。今日はツバサの実家でお泊まりして、明日シューニルさんに会いに行こ。」
「お泊まり!?いいよ!わかった。」
ツバサは急にテンションが上がったみたいで、ブンブン振り回すシッポが当たる。
一緒に住んでてもお泊まりは好きなのか…
非日常感あっていいもんね。
そういえば…
「ツバサのご両親に泊まること言ってないよね?大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。未だに『いつ帰ってくるの?』って手紙が届くもん。サプライズ帰省ってことでいいんじゃない?」
そうなんだ…
「建国日に来られたら良かったんだけどね。」
「結婚式じゃないから別にいいかなって思って招待しなかったよ?」
え?
「結婚式?」
「うん。あれは建国を記念したパーティーみたいなものだから。俺とルナの結婚式じゃないもん。」
まぁ、たしかに…
「いーっぱい招待して、盛大にやろうね。」
わぁ、すごく嫌だ。
「程々にしてね。」
「えぇ、みんなにお祝いしてもらおうよ。」
ツバサの言うみんなって、本当にみんななんだろうな…
「日にちとか色々決まってから、そこも相談しようね。」
「うん!楽しみ!」
「ただいまー。」
ツバサの実家に到着し、チャイムも鳴らさずに中に入る。
まぁ、自分の家だしいいのか。
「ツバサ!?なんでいるの…って、ルナちゃんも一緒じゃない!?え、どういうこと?」
お義母さんは驚いている。
「手紙で『いつ帰ってくるの?』って送ってくるから、帰ってきたんだよ?嬉しくない?」
「嬉しいに決まってるでしょ!建国のお祝いもしたかったし…あぁ、もう何も準備してないのに…」
お義母さんは少し悲しそうにしている。
「俺はいつもの母さんのご飯が食べたいな。」
「ツバサ…わかったわ。いつも通り作るわね。」
お義母さんは嬉しそうに笑い、どこかへ行ってしまった。




