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3話

入学式が終わり、新入生から順番に退場していく。

「スティ、ごめん。ちょっとお手洗いに行ってから教室戻るね。」

「ついていこうか?」

「大丈夫。すぐ終わるし、一人で行ってくる。」

スティ、嘘ついてごめんね。

教室に向かっている新入生の列を抜け、私は中庭の方へ行く。

たしか『花束の魔法』の始まり方は、中庭で花に水やりをしているところをアルスに見られていたはず。

で、一目惚れされて簡単に攻略できちゃうのよね。

あいつ、チュートリアルか?ってくらいHAPPY ENDに向かおうとしてつまらないし、The王子様って感じがいけ好かない。

まぁ、『フラージア王国』の第一王子だから王子様オーラは必要なのか。

でも、『花束と魔法』のヤンデレくんは最高!

なんと、隠しルートのBAD ENDが2人の愛を永遠のものにするために、互いを剣で刺し合って終わるの。

今はちょっと初彼を思い出して複雑だけど、好きな終わり方の1つ。

隠しルートだけあって、行くまでがすごく難しくて結構苦労したな。

そんなことを考えながら歩いていると、木々が見えない建物に囲まれた場所にいた。

あれ?

中庭がありそうな木々の方へ歩いていたはずなのに、ここはどこ?

そういえば、前世の私は極度の方向音痴だった。

もしかして、今の私もそうなの?

とりあえず、来た道を戻れば講堂には行けるはず。


15分後。

おかしい。

まだ中庭に着かないの?

歩きっぱなしで疲れてきたし、きっと自己紹介とか終わった頃だよね。

あーあ、やらかしちゃった。

まぁ、スティっていうかわいい友達はできたから、問題ない!

でも、スティに他の友達できて取られちゃったらどうしよう。

あんなに良い子だもの。

取り合いとかが起きてもおかしくはない。

うわぁ、なんで中庭に行こうとしたんだろ。

スティについてきてもらえば良かった。

「見つけた。」

声をかけられて振り向くと、白いうさぎの獣人が立っている。

嘘でしょ…まさかシルク・ラビリッツ?

「大丈夫?君でしょ。入学早々に迷子になっている新入生っていうのは。」

うわー、相変わらずかわいらしいお声をしていらっしゃる。

「ねぇ、聞いている?君じゃないなら、探しに行かないといけないんだけど。」

「あ、私です!多分、私で間違いないです!」

これ以上、迷子になる訳にはいかないため、勢いよく返事してしまった。

白いうさぎさんは、クスクス笑っている。

ほんとに笑い声までかわいいな。

「ほら、行くよ。もう迷子にならないように、手でもつないでおく?」

からかわれてしまった。

あー、かわいい。

それしか思いつかないくらいかわいい。

おそらくこの子は、同じく前世でプレイしていた乙女ゲーム『アムネシアの旅人』に登場する攻略対象のシルク・ラビリッツで間違えないだろう。

ヤンデレが好きな私でも、かわいいと思ってしまう子の1人だ。

だって、もふもふな耳に尻尾、大きくて丸い瞳が愛らしいんだもん。

『アムネシアの旅人』は獣人の世界に迷い込んでしまう人間のヒロインと様々な獣人との恋愛を描いた作品。

そして、シルク・ラビリッツは『アニマル王国』の第二王子なのだ。

ちなみに、第一王子も攻略対象にいるよ。

こっちは、ライオンでかっこよくてそこそこ好き。

ヤンデレから離れ、癒しを求めて親友から借りた乙女ゲームだが、ここにもヤンデレくんがいたのだ。

しかも、ゴールデンレトリーバー。

そう、犬系男子だ。

いつも尻尾を振って追いかけてきてくれるの。

それで、いつの間にかストーカーになって、一生追われ続ける。

追いかけてくる姿がかわいすぎて、お気に入り。

「ねぇ、大丈夫?そんなにふわふわしているから、迷子になったんじゃないかな?」

やばい、また心配されてしまった。

「大丈夫。元々、極度の方向音痴なだけだから。」

「それ、大丈夫じゃないよ。生徒手帳の後ろのページに地図がついているんだけど、まだもらってないか。」

うぅ、色々終わってから中庭に行けばよかったかも。

そもそも、ヒロインだって放課後に水やりしているよね。

そしたら、今中庭に行けたとしても、アルスはいないのでは?

反省していると、シルクは優しい顔をしてくれた。

「じゃあ、この配布用を先に渡しておくね。」

「ありがとう。」

優しい。

神様か?

心の中で拝んでいると、シルクが少し不服そうな顔をしていることに気づいた。

「ねぇ、一応1学年上の先輩なんだけど、敬語使おうとか思わないの?別にいいけどさ。」

え?そうなの?

たしか、ヒロインとシルクは同い年だったはずだけど。

そういえば、さっき在校生代表でアルスが挨拶していたな。

彼も同い年のはずなのに。

「ごめんなさい。同い年だと思っていました。」

「知らなかったなら、仕方がないけど。誰にでも最初から敬語で接することをオススメしておくよ。」

「ありがとうございます。」

どうしよ、嫌われちゃったかな?


2人並んで教室へ向かう。

その間の沈黙が少しつらい。

何か話題は…そういえば。

「あの、なんで探しに来てくれたんですか?」

さっきから疑問だったんだよね。

「あぁ、別に。生徒会の仕事をしていたら、先生方が迷子の生徒がいるって騒いでいて。それで、僕にはこれがあるからすぐに見つかるかなって。」

耳をひょこひょこしながら説明してくれた。

その仕草がまたかわいい。

てか、騒ぎになっていたのか。

先生、ごめん。

「そうなんですか。それは、ありがとうございます。あのままでは、一生帰れなかったと思うので、助かりました。」

「ふふ、大げさだよ。」

あぁ、美うさぎの微笑み尊い。

その後も軽く話をしながら、教室までちゃんと送ってくれた。

「本当にありがとうございました。」

「いや、たいしたことはしていない。それより、もう迷子にならないでね。」

「はい。」

「じゃあね。」

あーあ、もうちょっとシルクと話したかったかも。

そんなことを考えていると、教室から生徒の声が聞こえてきた。

「ねぇ、見た今の?なんであんな子がシルク様とお話ししていらっしゃるの?」

「本当に最悪。」

「私もお話したいのに。」

あ、もしかして嫌みですか?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初めからここまで読んで、「間違いない」という言葉が「間違えない」となっているのがとても気になってしまいます。
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