37話
『花束の魔法』は、魔法を使って戦うRPG要素が含まれている乙女ゲーム。
そのため、フラージア王国では魔物が出現することが多々あった。
しかし、近年では魔物の出現率が増えていることが問題になっている。
原因としてあげられたのは、魔王の誕生だ。
大昔、光属性を持つ国民によって魔王は封印されていた。
その封印が何者かによって解かれてしまったのだ。
そこで、光属性のヒロインが登場。
討伐メンバーと一緒に成長し、愛を育み、最後には魔王を浄化する。
「現在、各国で魔物の出現が報告されています。この原因として、魔王の誕生が噂されています。」
その魔王がついに来たか。
「被害状況の報告をお願いします。」
各国の代表とフラージア王国の魔法局の人たちが舞台に上がる。
「フラージア王国です。田舎町の畑に出現しました。被害は、畑を荒らされたこと、その畑を管理している人たちが襲われ、全治2週間の怪我をおったことです。この畑を荒らした魔物については、討伐済みです。」
「ミンフィーユ王国です。街に出現しました。被害は、たくさんの人が襲われ、中にはお亡くなりになった人もいるとのことです。この魔物について、討伐済みのものと逃げたものがいます。逃げたものについては、行方を追っている最中です。」
「アニマル王国です。民家に出現しました。家が破壊され、住んでいた人たちが襲われました。現在、治療中で治る見込みありだそうです。この魔物については、討伐済みです。」
結構、大変そうだな…
フラージア王国は、子供の頃から魔法が使える人が多いけど、他の国はそうではない。
むしろ、使える人の方が少ないんじゃないかな?
「この状況を鑑みて、魔王討伐メンバーの結成を要求します。」
うん。
それがいいね。
早く魔王を倒しちゃお!
「サイモン魔法局代表、ルナ伯爵の魔法についての状況説明をお願いします。」
「はい。」
スクリーンが変わり、『ルナ伯爵の現状報告』と書かれていた。
「ルナ伯爵の魔法の現状報告を行います。魔力は35と極めて低いです。また、使える魔法も光の玉を1個出すのが限界と見ています。」
なんか、改めて言われるとちょっと申し訳ない…
「そのため、放課後に特訓を行っています。当人のやる気は見られますが、魔力の伸びは遅いのが現状です。」
うぅ、ごめんなさい。
「これにより、光属性は魔力が上がりづらいことがわかりました。以上です。」
グラフを使って真面目に分析結果を報告している。
そんな実験対象みたいな扱いはやめてよ。
それにしても、冷静に分析されるのは恥ずかしすぎる…
「ルナ伯爵は討伐メンバーに強制参加の予定でしたが、魔力が低いままでは危険ですね。」
やっぱり?
「魔力補填できる人を討伐メンバーに加えるのはどうでしょう?」
「誰がいる?」
「それは…」
勝手に魔法局の人たちで話し合いが進んでいく。
うーん、私たちいるか?
昨日もこんな感じだったのかな。
なんか疲れてきちゃったかも。
あれ、そういえば…
ラナさんって魔法局の宰相だったよね?
今舞台の上には魔法局の人がたくさんいる。
この中にラナさんがいてもおかしくない!
「あの、すみません。」
私は近くの魔法局の人に聞いてみることにした。
「なんだね。」
ちょっと不服そう。
「ラナ・コモスさんって来ていますか?」
「あぁ、ラナさんね。彼は来ていないよ。」
え、いないの?
なんで…
「彼は、魔法局の最高峰みたいな人だからね。仕事が常にまいこむんだよ。だから、今日も忙しくて来ていないよ。」
そうなんだ。
「ありがとうございます。」
くそ…
そんなに忙しい人なのに、この間来てくれていたのか…
会いたかったよぉ。
「ルナちゃん、ラナさんを知っているのか?」
アルスが話しかけてきた。
「はい。」
「僕もラナさんにはお世話になってね。すごい人だよね!」
ん?
「お世話になったことがあるんですか?」
「うん。子供のときによく魔法を見せてもらっていたんだ。」
あれ?
そんな話あったっけ?
私がラナさんの情報を見落とすわけがないはずだけど…
「詳しく聞いてもいいですか?」
「詳しくって言うほどもないけど…ミアがラナさんと同じ炎魔法だから、先生をしてもらっていたんだ。たまに僕も混ぜてもらって…そのときに見せてもらっていたくらい。」
へぇ、ミアって炎属性だったんだ。
たしか、ラナさんは土、水、炎が使える。
先生にするには、とても優秀だしピッタリだね。
でも、ミアか…
ルキの婚約者で、ラナさんが先生とか羨ましすぎる!
私はミアを見る。
ミアは、あくびをして暇そうにしていた。
あんまり関係ない話だもんね。
「ルナちゃん、さっきの話だけど…」
アルスが恐る恐る聞いてきた。
「さっきのってどれですか?」
「僕の婚約者についての話。」
あぁ、それね。
「僕が『一方的に話してくるだけの先輩』って本当?」
そこ引っかかったのね。
「言い方は悪いですが、本当です。」
「そうなんだ…ずっとごめんね。」
アルスは悲しそうにしている。
なんか、可哀想に見えてきた…




