2話
入学式のため、講堂へ移動する。
もちろん、友達のスティと一緒に!
本当はルイと一緒に行きたかったけど、この世界のマナーもよくわからないから、初日に話しかけるのはリスキーだ。
身分が自分より高い人には話しかけてはいけない、みたいなのがありそうだしね。
講堂に移動しているとき、金髪の美少年とすれ違う。
あれは…いや、まさかね。
講堂につき、席に座る。
前方に私服生徒、後方に制服生徒が固まっている。
私服生徒には近寄りがたいのかな?
そういえば、ルイは制服だったな。
「ねぇ、スティ。私服と制服の違いってなに?」
「あー、王族と公爵家が私服で、それ以下が制服って感じかな。この制度やめてほしいよね。」
スティは苦笑いで説明してくれた。
やっぱり、私服生徒=金持ちだったか。
じゃあ、なんでルイは制服なんだろ?
そんなことを考えていると、入学式が始まった。
幕が上がった壇上には、立派なお花や『ホートラン学園』の校旗など、日本の入学式の少し豪華版って感じ。
先生の合図で、立ったり座ったり、色々な人の話を聞いたり、中身自体はあまり大差ない。
「ふわぁ。」
飽きてくる、つまらない!
どこの人も話はつまらなくて長いのね。
隣のスティは、目をキラキラさせている。
こんなのが、楽しいのか?
それとも、初めてだから新鮮に感じているのかな。
寝そうになっていると、知っている名前が聞こえてきた。
「在校生代表、アルス・フラージア。」
ん?アルス?
「はい。」
良い返事と一緒に立ち上がった彼は、紛れもなく前世でプレイした乙女ゲーム『花束の魔法』に登場する攻略対象だ。
そして、さっきすれ違った金髪の美少年だ。
嘘でしょ…なんで、この世界にいるの?
だって、ここは『甘いスイーツと共に』の世界じゃないの?
私が混乱している間も、入学式は続行しているため、壇上に上がったアルスの挨拶が始まっていた。
「この学園での学びは、君たちの力に必ずなると思う。だから、精一杯頑張ってくれ。」
声まで、乙女ゲームと同じで聴き惚れてしまう。
声オタも軽くかじっていた身としては、ご褒美タイムだ。
「以上。在校生代表、アルス・フラージア。」
あっという間に挨拶が終わり、壇上から降りていく。
もっと聞いていたかったのに。
いや、そんなことよりも!
なんで、ここに別の乙女ゲームの登場人物がいるの?
ここは、『ミンフィーユ王国』で間違いはない。
だけど、『セントラル学園』ではなく、『ホートラン学園』という意味のわからない学園にいる。
他の乙女ゲームの攻略対象がいてもおかしくはないのか?
うーん、ちょっと調べてみるか。
『甘いスイーツと共に』も『花束の魔法』も、学園に入学してからストーリーが始まっていた。
だから、ヒロインと攻略対象が出会うシーンに行けば、なにかわかるかも!