340話
「いや、1億。」
ツバサは平然とした態度でいる。
「おい、それはいくらなんでも悪いって!」
ルイはびっくりしすぎて、焦っている。
「出しても大丈夫なの?」
「うん、余裕。」
なんで…
「俺ね、出産祝いで国から3億もらってるの。」
え?
「先祖返りできるのはティートル公爵家しかいないから、保護するために一生暮らせる分のお金をもらえるんだ。」
そうなんだ…
「それで、実験されているときの保証金が5億くらいあって…」
え?
「あとお手伝いしていたところがみんなお金持ちだったから、毎回1,000万ずつくらいくれて…」
いや、もう意味わかんない…
「あと、独立してからのお金もあるから、問題はないよ。」
忘れがちだけど、ツバサって爵位持ちだったね。
しかも、公爵。
規模がデカすぎるよ…
「ティートル公爵様!」
ルイはツバサに抱きついた。
「え、急になに?よそよそしいのやめてよ。友達でしょ?」
「俺、ツバサと友達になって良かったよ。」
ルイは軽く泣いていた。
ツバサの人柄じゃなくて、お金でそう思わないでほしい…
「ルイのためっていうのもあるけど、あの辺り走ってて気持ちよくて好きだったんだ。だから、戻してほしいって気持ちの方が強いかな。」
「どんなところなの?」
「えっと、自然豊かでお花がいっぱい咲いてた。」
ミンフィーユ王国で?
ちょっと珍しいかも。
「でね、芝生の踏み心地がめちゃくちゃ良いんだ。」
ツバサは嬉しいそうに笑った。
「私も行きたいな。」
「今度連れてってあげる。」
「それは無理だな。」
どうして?
「今、立ち入り禁止区域にしている。」
そんなに大変なの?
「もしかして、魔物の仕業?」
「そう。しかも、巣作りされている。」
え、結構やばくない?
「そこの地域の人は避難できたの?」
「今、俺ん家にいる。」
ってことは、王城に避難しているってことか。
「みんな無事?」
「もちろん。」
なら、良かった。
「じゃあ、巣を壊してから一緒に行こうね。」
それって…
「ツバサが倒しに行くの?」
「え、ダメ?」
ダメじゃないけど…
「1人で行くのか?危ないだろ。」
ルイは心配そうにしている。
「逆に誰かいた方が危ないよ。何かあったときに守れないし。」
遠回しに「足でまとい」って言っているな…
「俺が一緒に行く。」
「だから、何かあったときに守れな…」
「守ってもらう必要なんてない!俺だって、魔物と対戦して何度も勝ってるんだ。絶対に大丈夫だ。」
ルイはツバサの言葉を遮って叫んだ。
「ルイ…」
「ツバサ、一緒に行こうぜ。な?」
「わかったよ…」
ツバサは仕方がなさそうにうなづいた。




