31話
10分後。
うーん。
ここはどこだろう?
ミアと一緒に帰ればよかった。
後悔しても、迷子になったものは仕方がない。
さて、とりあえず講堂に行くか。
この学園の中で1番大きく、どこからでも見える建物。
それが講堂だ。
だから、迷子になったら講堂に行けばいいことを最近学んだ。
講堂は校舎と渡り廊下で繋がっている。
校舎から寮までの道は覚えたから、講堂にさえ行ければ問題はないのだ。
えっと講堂は…あった!
こっちね。
私は迷わず講堂まで進む。
講堂まで進む道の途中、シルクがとぼとぼ歩いているところを見つける。
「シルク先輩!」
私は駆け寄る。
シルクは耳をビクッとさせたが、すぐにシャキッとして振り返る。
「ルナちゃん。朝はごめんね。」
大人の余裕を見せたいのだろうけど、悲しそうなのが伝わってくる。
「全然大丈夫です。私もごめんなさい。」
「ルナちゃんは悪くないよ。僕が軽率だったんだ…」
相当沈んでいるみたい。
「あれを書いた人を見つけて、訂正文を出すようお願いできました。」
「え、そうなの?ありがとう。」
安心したような不満そうな複雑な顔をしている。
「そういえば、朝シルク先輩に記事について相談しようと思い、教室に行ったのですがいなくて。何かあったんですか?」
「あぁ…朝は生徒会棟にいたんだ。だから、入れ違いになったのかもね。」
うーん、嘘っぽい。
でも、聞かれたくなさそうだし、流しとくか。
「そうですか。私は本当に大丈夫なので、元気出してくださいね。」
私はそっと励ます。
「あはは…ルナちゃんにはお見通しか。」
空元気だな。
こういうとき、どうしたらいいんだろう。
力になりたいのに…
私が俯いてしまうと、シルクは遠慮がちに話し始めてくれた。
「実はさ。今朝の記事がお父様とお母様の耳に入っちゃったみたいで…もうめちゃくちゃ心配されちゃったよ。」
そんな影響力あったの!?
クララくんすごい。
「あれを見たら、心配しますよね…ごめんなさい。」
「謝らないでよ。両親には『その子に騙されているわ』とか『早く別れなさい』とか言われちゃった…けど、誤解だって説明したらわかってもらえたよ。」
本当にお疲れみたい。
「それは良かったです。って、こんなところを見られたら、また何か言われますよね。失礼します。」
私は足早に去ろうとするが、シルクに腕を掴んで止められる。
「待って。もう少し一緒にいちゃダメかな…」
耳がしゅんと折れている。
えぇ…かわいい…
「寮に行こうと思ったのですが、道がわからなくて。案内してもらってもいいですか?」
私はシルクに向き合ってお願いする。
嘘はついていない。
シルクはぱぁっと明るくなった。
「うん!こっちだよ。ルナちゃんは、本当によく迷子になるね。」
シルクは嬉しそうにしている。
良かった。
ちょっと元気でたみたい。
「えぇ、そんなことないですよ。校舎から寮までは迷わずに帰れるようになりました。」
「あはは。どうだろう?」
そのまま、シルクに寮まで送ってもらった。
奇跡的に誰ともすれ違わず、楽しい帰り道だった。
 




