29話
私とルイも空き教室を後にする。
私はこれからサイモンさんの反復練習に行くつもり。
ルイはどうするのかな?
「ねぇ、ルイ。この後の予定は?」
「俺の予定が気になるのか!一緒に過ごしたいのか?」
なんとなく聞いただけなのに…
ルイはすごい嬉しそうにしている。
「いや、私はグラウンドでサイモンさんと魔法の練習するから。」
「なんだよ…まぁ、俺もちょっと気になることあるから。じゃあ、また明日な。」
そう言ってルイもどこかに行ってしまった。
気になることってなんだろ?
私はグラウンドに到着した。
1人でも来られるようになったんだよ。
私にしては、すごい成長。
えっへん!
でも、サイモンさんが見当たらない。
おかしいな。
いつも先に来ているのに…
グラウンドで待っていると、魔法使いって感じの人が走りよってきた。
「ルナ・ピラフィルさんですかー?」
「そうです。」
「はぁはぁ…私、サイモンさんの部下です。今日の練習は無しで大丈夫だそうです。ごゆっくりお休みください。では、私はこれで。」
それだけ言い残し、また走り去っていった。
なんか慌ただしい人だったな。
まぁ、いいや。
今日はお休み!
何しようかな?
1人で校内を散策していると、知らない女子生徒に声をかけられた。
「あ、小悪魔ちゃんだ。」
はて?
「今朝の記事見たよ。すごいね。」
あぁ、あれか。
無視して通り過ぎる。
「お兄様のこと弄んで楽しい?」
私はびっくりして、思わず振り返ってしまった。
「ふふ。」
女子生徒はニコニコしている。
だけど、ちょっと怖い…
綺麗な金髪に碧眼。
長いツインテールをいじりながら話す。
この子って…
いや、誰だ?
「すみません。どちら様でしょうか?」
制服をアレンジして着ているってことは、私服生徒ってことだよね?
念のため丁寧に話す。
「嘘!?私のこと、知らないの?」
多分、特徴からいってアルスの身内だろうけど。
兄弟なんていたっけ?
「そうですね。」
「う…聞いて驚きなさい。私は、ミア・フラージア。アルスの妹よ。」
へぇ。
「私は、ルナ・ピラフィルです。よろしくお願いします。」
私は丁寧にお辞儀する。
「よ、よろしくお願いします。」
ミアもつられてお辞儀する。
「って、そうじゃなーい!」
おぉ、良いノリツッコミ。
「ミア、うるさい。」
思わず、素で話してしまう。
なんかノリが前世の親友とのやり取りみたいで、ちょっと楽しい。
「ちょっと、私フラージア王国の第2王女よ?敬いなさい。」
ビシッと指さされてしまった。
「ごめんなさい。でも、アルス先輩の妹ってことは、同い年では?」
丁寧に話すのがめんどくさくなってきた。
「いえ、双子の妹だから2年よ。先輩よ。王女よ。」
え、双子だったの…
「それは、大変失礼いたしました。」
「そうそう。庶民はそうやって敬いなさい。」
「では、失礼いたします。」
私はその場から逃げるように去る。
「ちょっと待ちなさい。何のために引き止めたと思ってるのよ!」
ええ…
ミアは両手で私の腕を掴んでいる。
「何でしょうか?」
「あなた、スティの何なのよ。」
あ、そっか。
アルスの妹なら、スティのことも知っているのか。
「友達ですが?」
「そう。スティは私のだから。手を出さないでちょうだい。」
はい?
「どういうことですか?」
「だから、スティは私と結婚するの。」
え…
アルスの婚約者じゃないの?
「仰ってる意味がよくわからないのですが…」
「そのままの意味よ。今はアルスの婚約者だけど、近いうちに私の婚約者になるわ。そのために、しきたりを変えているところよ。」
なるほど。
全くわからない。
「あの、スティはそれに賛同しているのでしょうか?」
「当たり前じゃない!両想いよ!」
うーん。
多分、伝わってないと思うけどな…
だって、スティはアルスのことが大好きだもん。
めんどくさいから黙っておくけど。
「そこで、最近あなたと仲が良いみたいだから、釘刺しにきたのよ。もう1度言うわ。スティは私のだから、絶対に手を出さないでね。」
なんか、すごいな…
「わかりました。でも、友達はやめないので。」
私だって、スティが大好きだもん。
友達というか、親友ポジはいただくよ。
ミアは満足したように頷いた。
「よろしくてよ。特別に友達は許してあげる。」
「ありがとうございます。」
さて、話は終わったよね。
疲れたし、帰ろっと。
私は寮の方へ歩きだそうとしたが、またもや止められた。
「ちょっと、まだ終わっていないわよ。」
えぇ、まだなんかあるの…
「スティの友達なら、それなりの身分になっていただきたいの。だから、私の婚約者をあなたにあげるわ。」
え、いらない。
「好きな人がいるので、ご遠慮させていただきます。」
私は丁重にお断りする。
「あら、ミンフィーユ王国の王妃補佐になれるかもしれないのに、いいのかしら?」
ん?
「ルイ王子とも仲が良いみたいだから、ちょうどいいかなって思ったんだけど…いらないならいいわ。」
ん?
「あの、一応お相手を聞いてもいいですか?」
恐る恐る聞いてみる。
「あぁ、それも知らなかったのね。ミンフィーユ王国のルキ第2王子よ。」
 




