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302話

おそらく1時間後。

お義母さんがドアをノックし、扉を少し開けて覗き込んできた。

私たちは、ソファーに移動していたため、普通に出迎える。

「もう1時間経っちゃった?」

ツバサが少し悲しそうにお義母さんを見る。

「えぇ。そろそろ準備しないと、帰るのが遅くなるわよ。」

「すぐ行きますね。」

「リビングで待っているわ。」

お義母さんは扉を閉め、出て行った。

「ほら、ツバサ。荷物持って行くよ。」

「もうちょっとだけ、ダメ?」

ツバサはきゅるんとした顔を向けてきた。

最近、この顔よくするな…

もしかして、この顔すれば許されるとか思ってる?

「ダメだよ。ほら、置いてくよ?」

「やだ!だったら、俺も行く。」

ツバサは立ち上がって、私の手を取る。

「一緒に行こーね!」

ツバサは楽しそうに笑った。


私たちがリビングにつくと、ソファーでお義母さんとお義父さんが談笑していた。

「お、意外と早く来たな。」

お義父さんは少しびっくりしている。

「だから、言ったでしょ?」

何の話をしていたんだろう?

「もしかして、俺とルナで賭けてた?」

ツバサが嫌そうな顔をしている。

「あはは、バレたか?」

お義父さんが楽しそうに笑った。

え、私たちって賭けの対象になるの?

「私は『すぐ来る。』って言ったんだけど、彼は『まだ来ない。』って言うから…」

お義母さんは少し申し訳なさそうにしている。

「何を賭けていたんですか?」

「今日の夕食よ。」

すごい平和だ!

「私は魚が食べたいんだけど、彼は『お肉がいい。』って言うのよ。」

めちゃくちゃ平和な喧嘩だ…

「どっちも作ってもらえばいいのに。」

ツバサは呆れている。

よくやってるのかな?

「これね、ほぼ毎日やってるの。」

ツバサが小声で教えてくれた。

ほぼ毎日!?

え、毎日夕食で喧嘩しているの?

交互に食べればよくない?

公爵家なんだから、お金はあるでしょ…

「あ、お土産は馬車にもう積んであるから、安心してね。」

お義母さんがニコニコと教えてくれた。

「お土産あるんですか!?ありがとうございます。」

お菓子かな?

あ、でもこの前のお弁当も美味しかったな…

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