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28話

「クララ・ガトラーくん。犯人はこの子で間違いないと思う。」

ルイは視線だけをクララくんにやり、すぐに戻す。

「あいつか…」

「うん。私とシルク先輩の出会いについて知っているのは、本人とスティとクララくんだけだよ。」

私たちは少し声をひそめて話す。

「すごい平然と弁当食ってるな。今すぐ殴りてぇ…」

「落ち着いて。」

ルイを大人しく座らせる。

「放課後に呼び出してみよ。」

私たちは無言で頷きあう。


放課後。

私は終わってすぐ、クララくんに近づいた。

「クララくん!」

少しビクッとしていたが、平然とした態度にすぐに戻した。

「ルナちゃん、どうしたの?」

本当にこの子が犯人か?って思ってしまうくらい無害そう。

「ちょっと来てくれるかな?」

「えぇ、俺この後予定があってさ。ごめんね。」

やばい、逃げる気だな。

「多分、すぐ終わるからちょっとだけ。ね?」

私は低姿勢でお願いする。

あなたが犯人だなんて思ってませんよ。スタンスでいく。

「もう、わかったよ。ちょっとだけだよ?」

よし、つれた。

「ありがとう!」

私はクララくんをルイが待っている空き教室へ連れて行く。


「ここだよ。」

「もう、本当に何?俺急いでいるから手短に頼むよ。」

さぁ、本性を暴かせてもらうよ!

「クララくん、早速本題に入るけど、これを作ったのはあなただよね?」

クララくんはルイが持っている記事に近寄る。

「あぁ、これね。うん、そうだよ。俺が作った。」

え?

こんなあっさり認めるの?

「何?それだけ?」

それだけって…

「なんでこんなの作ったの?」

「なんでって…俺、将来記者になりたくて、その練習かな?」

く、くだらない!

「そんなことのために、私は利用されたってこと?」

「そんなことって言わないでよ。俺の大事な夢なんだから。」

「それはごめん。でもね、私怒ってるから!」

私はクララくんに詰め寄る。

クララくんは動じていない。

「ねぇ、もう帰っていいかな?」

何でよ!?

「まだダメ。ちゃんとルナに謝って、明日謝罪文を掲示板に貼れ。」

ルイがクララくんの腕を掴んで、帰ろうとする足を止める。

「何で?俺、真実しか書いてないよ?」

は?

「あれのどこが真実だって?あぁ?」

ルイ、私より怒ってる…

ちょっと怖い…

「だって、スティから聞いたもん。」

ん?

「なんて聞いたの?」

「『ルナ、シルク様と仲良いけど付き合ってるのかな?』って。」

ん?

「ルナちゃんの近くにいる人がそう言うんだからホントでしょ?」

んん?

「あと、スティが泣いていたときに、『絶対ルナ、アルス様と付き合ってる…じゃないと迎えになんて来ないよ…』って。」

んんん?

「それ、全部誤解だよ…」

私はちゃんと否定する。

マジか…

スティ、そんなこと思ってたのか…

「え!?嘘なの?最悪…ガセネタ書いちゃったじゃん。なんで仲良いのに情報共有してないの?徹底してよね!」

なんで、私が怒られてるの?

「とりあえず、全部嘘だったんだから、掲示板に謝罪文貼れよ?わかったか?」

ルイ、もうちょっと穏便に…

「わかったよ。その代わり、なんかおもしろいネタちょうだい。」

えぇ、ないよ…

「俺とルナが付き合ってるって書いていいぜ。」

「絶対にダメ。」

私はすぐに否定する。

「なんで!?俺のこと、大好きなんだろ?」

あぁ、言わなければ良かった…

「うん、大好きだよ。でも、まだダメ。然るべき段階をふんでからね。」

「はーい。ちぇ…」

ルイは納得してなさそうにしている。

「じゃあ、『ミンフィーユ王国のルイ王子 片想い中!?』とかはどうかな?」

「それいいな!でも、『片想い』じゃなくて『両片想い』にしといて。」

「絶対ダメ。ルイがそれでいいなら、『片想い』にして。」

ルイはムッとして詰め寄ってきた。

「なんでだよ。俺のこと、大好きなんだろ?」

「じゃあ、わかった。大好きじゃなくて、好きになる。」

「わかったよ…じゃあ、『片想い』でよろしく。」

ルイは仕方なく承諾した。

ルイの扱い方、わかってきたかも。

「おっけー。『ミンフィーユ王国のルイ王子 片想い中!?』で新しく出すね。あと、今日の記事は『一部誤りがございました。』って否定しておくね。」

よし。

「あっでも、ルナちゃんのインタビューってことにして新しく出すか…ねぇ、詳しく教えて。」

なんか、ちゃっかりしているな。

「はーい。えっとね…」

私はクララくんに正しい情報を話し、それを元に記事を書いてくれた。

「こんな感じでいいかな?」

「うん、バッチリ!」

「じゃあ、ルイ様のところも書くから確認して。」

クララくんはすぐにルイの記事も完成させた。

「うん、大丈夫だ。」

「おっけー。じゃあ、これ明日掲示板に貼るね。」

私たち怒ってたはずなのに、いつの間にかクララくんのペースで事が進んでいた。

ルイなんて殴りたいとか言ってたのに…

「クララくん、これからはちゃんと確認取ってから記事にしてね。」

「わかった。じゃあ、俺急ぐから。」

そう言って、走り去って行った。

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