295話
翌朝。
今日はツバサの実家へ行く。
1泊しかしないから、朝早くに出発する。
「ルナ、また帰っておいでね。」
ソルお兄様が見送ってくれる。
「はい、もちろんです!」
「ツバサくんも一緒においでね。」
「ありがとうございます!」
ツバサはもう緊張しなくなったみたいだった。
ちゃんと打ち解けて本当に良かった。
「ソルお兄様、お元気で!」
私は馬車から少し身を乗り出して、ソルお兄様に手を振る。
「ちょっとルナ、危ないからやめて。」
ツバサが慌てている。
よくやってるから、危なくないもん。
「ルナ、ツバサくん、またね!」
ソルお兄様も手を振り返してくれた。
「どれくらいでつくの?」
「1時間くらいかな。」
そこそこかかるね。
「ねぇルナ、ピアス付け替えない?」
ツバサが街で買ったピアスを見せてきた。
「もう付けて大丈夫なの?」
「うん、ちゃんと安定してるよ。」
ツバサが私の耳を触って確認する。
結構すぐに安定するんだ。
「じゃあ、お願いしようかな。」
「えへへ、やっとおそろい付けられるね。」
ツバサは嬉しそうに、初期ピアスを外している。
そして、馬車のゴミ箱に躊躇なく捨てた。
「え、捨てるの?」
「うん。だって、1回取ったらもう付けられないようになっているし、これがあるからいらないよね?」
まぁ、たしかにいらないけど…
「え、もしかして、捨てたくないとか?俺とのおそろいのピアスがあるのに?」
ツバサはちょっと不機嫌そうにしている。
「いや、取ってすぐに捨てたから、ちょっと寂しくなっただけ。」
「ふーん。まぁ、いいや。」
ツバサは不満そうな顔をして、ピアスの準備をしている。
急にどうしたんだろう?
「ほら、付けよ。」
ツバサはニコッと笑って、ピアスの針を向けてくる。
ちょっと怖いって…
私は右耳を差し出し、付けてもらう。
「できたよ。反対も付けよ。」
ツバサは嬉しそうに、私にピアスを付けてくれている。
「え、ルナめちゃくちゃ似合ってる!かわいい!」
「ありがとう。」
自分じゃ見えないから、よくわからないけど、ツバサが喜んでいるなら、それでいっか。




