1話
翌日。
馬車で揺られること30分。
『ホートラン学園』が見えてきた。
結構立派な佇まいをしている。
とりあえず、前世と同様に仲の良い親友がほしい。
できれば、乙女ゲームに出てくるようなお助けキャラみたいな子がいいな。
そんなことを考えているうちに、正門手前に到着し、馬車を降りる。
どうせなら、正門で降ろしてほしかったな。
今日から寮生活になるため、アリーナが大きな荷物を重そうに運んでくれている。
私も少しだけではあるが荷物を持っているため、少しでも学園に近い方が嬉しかった。
よく見ると、正門前で降りている生徒はみんな私服だ。
私は渡された制服を着用してきたが、どうやら私服の生徒もいるようだ。
正門前で降りられる私服生徒は金持ちか?
恨めしそうに私服生徒を眺めていると、横の方で女子生徒が転び、大量の荷物が散乱してしまっている。
あらら、運ぶのが大変で転んでしまったのね。
私は、女子生徒にかけよって声を掛ける。
「大丈夫?」
女子生徒は、転んだにも関わらず嬉しそうにこちらを見てきた。
「わー!ありがとう。私はスティ。あなたは?」
今自公紹介するか!?
「私は、ルナ。ルナ・ピラフィルよ。ほら、そんなことより早く荷物を拾うわよ。」
「ルナね!本当にありがとう。」
急いで荷物を拾い、並んで校舎へ向かう。
「ルナは、どこから来たの?私はね、西の方!」
「ざっくりしているわね。じゃあ、私は北の方かな。」
「北か。そしたら、『祈りの塔』が有名だよね?」
「そうね。そこから20分くらい歩いたところに家があるから、近いかもね。」
軽い雑談をしつつ、教室へ向かっていく。
この学園は1学年1クラスしかない。
だから、この子と友達になるしかない!
教室につくと、「自由席」と黒板に書かれていたため、後方で並んで座る。
よし、言うぞ。
こういうのは、早いほうがいいわよね。
深呼吸をしてから、スティと向き合う。
「ねぇ、スティ。私と友達になってくれない?」
あれ、こんなに緊張するっけ?
ドキドキしすぎて、少し震える。
しかし、スティは目をまん丸にして、驚いていた。
「え…私たちって、友達じゃなかったの?」
「と、友達!友達だよ!!」
急いで返事をする。
え、いつから友達だったの?
とりあえず、この世界に来てからの友達第1号ができて安心する。
2人で笑い合っていると、教室の出入り口付近で黄色い悲鳴が聞こえる。
「ルイ様よ。」
「かっこいい。」
「麗しい。」
え、ルイ?
そっか。
同じ年齢だから、同じクラスになるのか。
ということは…やっぱり、ルキはいる!!!!
ルイがいて、ルキがいない訳がない。
疑問が確信に変わった。
嬉しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
「ルナ?どうしたの?もしかして、ルイ様のファン?」
急にテンションが上がった私を見て、スティがびっくりしている。
「ううん、違うよ。ちょっと嬉しいことを思い出してね。」
よし。
当初の計画通り、ルイと仲良くなってルキルートに行くわよ!