286話
「ツバサって、いい意味で公爵家感ないよね。」
お茶とお菓子を食べながら、アリーナとのやり取りを思い出す。
「だって、元々ただの大学生だったんだよ?ここに来て16年経つから、さすがにそういう振る舞いはできるけど、素では無理だよ。」
まぁ、わからなくはない。
「私も伯爵家っぽくない?」
「ルナはルナだよ。伯爵家とかで考えたことない。」
それもそうか。
だから、居心地が良いのかな?
ルイとかスティとかピラナとかと一緒のときも居心地は良いけど、ここまでの安心感はない。
この世界にツバサがいて、良かったかも。
「でも、学園長の前とかでもちゃんとしなよ。」
私は軽くツバサのおでこにデコピンをする。
「はーい。」
ツバサはニコニコしている。
緊張、ほぐれたかな?
「ルナ、入るね。」
ノックの音と共にソルお兄様が入ってきた。
「どうかされましたか?」
「僕もツバサくんとお話したくて…一緒しても良いかな?」
ソルお兄様が遠慮がちにお願いをしてくる。
ツバサは緊張しているのか、ブルブル震え始めた。
大丈夫かな?
でも、このままも良くないよね。
「ツバサ、いいよね?」
「も、もちろん。」
ツバサは無理やりニコッと笑った。
あぁ、心配…
「ありがとう。さっきから気になっていたんだけど、ツバサくん僕に怯えてるよね?なんで?」
ソルお兄様が鋭い質問を投げかける。
「そんなことないですよ。」
ツバサは声まで震えてきている。
「僕もツバサくんと仲良くなりたいだけなんだけど…もしかして、迷惑かな?」
「それは絶対にないです!」
ツバサは思わず立ち上がる。
「あ…えっと、ルナの大事な人だから、俺も大事にしたくて…それで、嫌われたくなくて…えっと…」
ツバサは言葉に詰まりながらも、ちゃんと気持ちを伝えようとしている。
偉いぞ。
「そっか。僕も同じだよ。」
ソルお兄様は天使の微笑みをツバサに向ける。
「同じ…ですか?」
「うん。僕だって、ツバサくんに嫌われたらどうしようって思っているよ。」
「そうなんですか!?」
ツバサは少しびっくりしている。
だけど、もう震えてはいなかった。
「ツバサくんのこと、たくさん教えてくれる?」
「はい!もちろんです。」
ツバサはニコッと笑った。
良かった。
打ち解けられたかな?




