283話
2日後。
今日は私の実家へツバサと行く日。
やっとソルお兄様に会える!
「ルナ、おはよう。」
寮を出ると、ツバサが駆け寄ってきた。
「おはよう。なんか、荷物多くない?」
ツバサは大きめのリュックサックだけでなく、両手にも荷物を抱えていた。
「そうかな?手土産どれにしようか悩んだから、いっぱい持ってきた。」
そんなに気を使わなくていいのに…
「ありがとう。ソルお兄様も喜ぶと思うよ。」
「だといいな…」
ツバサは少し不安そうな顔をした。
そんなに心配しなくていいのに。
だって、ソルお兄様は天使のようなお方だよ?
何を持ってきても、あの微笑みで『ありがとう。』って受け取ってくれるよ。
私たちは馬車に乗り込み、移動すること30分。
我が家が見えてきた。
「あっという間だったね。」
私の家って、意外と学園から近くにあるんだね。
いや、他が遠すぎるのか?
「俺、緊張してきた…」
ツバサが小刻みに震えている。
「大丈夫だよ。何も心配することはないから。」
「うん。ルナ、手繋いでてくれる?」
まぁ、それくらいなら?
「絶対に離さないでね!」
ツバサは、私の手をギュッと握って離さない。
そんなに念を押さなくても大丈夫なのに…
馬車を降りると、玄関にソルお兄様が待っていてくれているのが見えた。
「ソルお兄様、ただいま!」
私はソルお兄様の方へ駆け寄ろうとしたが、ツバサが繋いだ手をギュッと握りしめて止める。
「ツバサ?」
「待って、心の準備させて。」
ツバサは真剣な顔で深呼吸をしている。
「よし、いいよ。」
ツバサは戦へ出かける侍のような顔をして、ゆっくりと歩き始めた。
その顔はなんやねん。
いつものふにゃあってした笑顔でいれば、ソルお兄様もイチコロなのに。




