26話
1年棟の教室に戻ってきた。
「最後まで守ってくれて、ありがとう。」
席についてから、改めてお礼を言う。
「おう。これからも守ってやるから、1人でどこか行くなよ。」
ルイは少し照れながら返事してくれた。
もう怒ってないかな…?
「あのね、話聞いてくれる?」
「やだけど、本当に嫌だけど…聞く。」
私は写真を撮られた日の話をする。
なんで2人きりになったのか、あれはどこなのか、説明した。
ルイは終始黙って聞いてくれていた。
「これが、写真を撮られた経緯だよ。」
納得してくれたかな?
もう怒らないでくれ。
「で?」
ん?
「終わりじゃないでしょ。」
え、終わりだけど…
私が何のことかわからずにいると、ルイは少し驚いている。
「もしかして、記事読んでないのか?」
そういえば、写真しか見てないな。
「うん。写真ばかり気になっちゃって、記事を読むの忘れてた。」
ルイは机の中から、あの記事を出して見せてくれた。
なんで持ってるの?
私はとりあえず受け取って、読んでみる。
「アニマル王国のシルク王子 熱愛」
入学して間もないこの時期。
アニマル王国のシルク王子と新入生の熱愛が発覚しました。
出会いは、入学式。
迷子の新入生をシルク王子が助け出し、交際が始まった模様。
気になるお相手の新入生は、ミンフィーユ王国の伯爵令嬢。
身分差のある恋だが、「仲良く話していて、楽しそうだった。」と周りの友人たちは応援している様子がうかがえた。
しかし、この新入生はとんでもない小悪魔だったのだ。
なんと、フラージア王国のアルス王子との二股疑惑も浮上している。
こちらの出会いも入学式。
朝には寮まで迎えに行き、仲良く登校する姿も目撃されている。
シルク王子はそれに気づき、注意しに行く場面も目撃されている。
新入生は焦っただろう。
だから、生徒会棟のシルク王子部屋で密会に及んだのだった。
これは、シルク王子がアルス王子に注意した翌日の朝起きた写真だ。
2人はしばらく肩をよせあい、愛を育んだ。
な、なんだこりゃ!
私、どっちとも交際していないんですが?
私は勢いよく顔をあげる。
「これ、どういうこと!?」
「俺が聞きたいんだけど…」
「1から100まで、全部嘘。」
私はハッキリ否定する。
「ほんとか…」
「本当だよ!ちょっとずつ真実も混ざってるけど、ここの『朝には寮まで迎えに行き、仲良く登校する姿も目撃されている。』とか嘘すぎる。2日間だけだけど、アルス先輩が勝手に寮まで来てただけ。しかも、登校は別々。1日目はスティと登校して授業サボった日で、2日目は泣いてるスティを追いかけてケンカした日。」
ルイは大人しく聞いている。
「あと、『2人はしばらく肩をよせあい、愛を育んだ。』も嘘。よせあってないし。シルク先輩が乗りかかってきただけ。写真もよく見てよ。」
ルイは記事の写真をまじまじと見る。
「ほんとだ…ルナ固まってる。かわ…ん。」
そこまで気づかなくていいけど。
「とりあえず、全部嘘!」
「え、でもこの『「仲良く話していて、楽しそうだった。」と周りの友人たちは応援している様子がうかがえた。』は?さすがに証言があったんじゃないか?」
確かに…
どっちかって言うと、私服生徒に詰めよられたくらいだけど。
でも、仲良くは見えていたのかも。
100%嘘で書かれてはいないし、出会いの辺りとかは本当。
そう思うと、この記事よくできているな。
って、関心している場合じゃない!
「ルイ、この記事書いた人探さない?」
「もちろん!俺のルナが迷惑してるってわからせてやらないとな。」
俺のではないけど、まぁ今はいいや。




