256話
「では、お大事にしてください。」
私たちは待合室に戻って少し待つと、すぐに受付で名前を呼ばれた。
会計を終わらせ、病院を出る。
「ツバサ、お疲れ様。」
「うぅ…なんかまだ痛い気がする…」
ツバサは自分の腕を撫でている。
「頑張って偉かったよ。」
「えへへ、ありがとう。」
ツバサはふにゃあと笑った。
「ねぇ、これ剥がしていいかな?」
ツバサは腕に貼られているガーゼを剥がそうとしている。
もちろん8枚貼ってある。
さすがに気になるのかな?
「1枚だけ剥がしてみて、大丈夫そうだったら剥がしちゃえば?」
「そうする。」
ツバサは恐る恐る1枚剥がす。
「なんか丸ぽちあるけど、大丈夫そう。」
あぁ、注射の跡か…
「最後の痛いときのだけ貼っておきな。」
「どういうこと?」
ツバサは不思議そうにしている。
目を瞑っていたから、注射を打ったのに気づいてないのか…
「えっと…」
私はツバサの腕を引き寄せ、最後の注射の跡を探す。
「ルナ、近いよ…」
ツバサは顔を赤くした。
なぜ照れる?
「ちょっと待っててね。」
私は軽くガーゼをめくる。
間違っていたら、思いっきり押し付けておけばくっつくだろう。
「ルナ…」
ツバサはまだ照れている。
「なんで照れるの?」
「なんでって…ルナが近いから…」
「いつも近くない?」
「だって、ルナから近づいてくれたの初めてだから…」
え?
そんなことはないだろ。
「今まで、私から手を繋いだり、頭撫でたりしてたじゃん。」
「それでも、ここまでは近くなかったの!」
そうか?
「じゃあ、わかったよ。離れればいいんでしょ。」
私はツバサの腕を離す。
「それはやだ!」
逆にツバサが私の腕を掴んで、思いっきり抱きしめてきた。
「さっきより近いよ?」
「俺から近づくのはいいの。」
ふーん。
まぁ、ツバサが嬉しそうなら別にどっちでもいっか。




