230話
放課後。
「当番、どうしようね。」
私はルイに話しかける。
「ルナはこのあとシルク王子とデートだろ?」
そうなんだよね…
「明日やろうぜ。」
それしかないよな。
「ルナちゃん。お待たせ。」
ルイと話していると、シルクがツバサと一緒にやってきた。
「シルク先輩、よろしくお願いします。」
「ふふ。よろしくね。」
シルクは嬉しそうに笑った。
やっぱり、美うさぎだ…
「ルナ、ちゃんと帰ってきてよ?」
ツバサが不安そうにしている。
「大丈夫だよ。ルイとのお菓子、ちゃんと美味しいの作ってね。」
「うん…」
「ルナちゃん、行こ。」
シルクは私の手をとって、歩き出す。
「どこ行くんですか?」
校舎を出て、外を歩く。
「僕たちの思い出を巡ろうと思ってね。たしか、この辺りだったはず。」
シルクは急に立ち止まった。
「この辺に何かあるんですか?」
「僕たちが初めて会った場所だよ。」
入学式のとき、私はアルスとの出会いの場所(仮)へ行こうとして迷子になった。
それを助けてくれたのがシルクだった。
え、こんな校舎に近いところだったの…
しかも、講堂の真横じゃん…
「本当にこんなところで迷子になったんですか?恥ずかしすぎる…」
「入学初日だったら、仕方がないんじゃない?」
シルクはニコニコしている。
そっか。
この辺だったのか…
「もう迷子にならないで教室に行けそう?」
シルクがいたらずらに顔を覗き込んできた。
近い…
「だ、大丈夫です!目を瞑っても行けますよ。」
「ほんとかな?」
シルクは楽しそうに笑っている。
もしかして、弄ばれてる?
あ、そういえば…
「シルク先輩。私、ここで怒られたことあるんですけど、覚えていますか?」
「え、僕に?」
シルクは驚いている。
全く怒らなさそうだもんな。
「私、最初からシルク先輩にタメ口で話してて、そうしたら『僕、先輩なんだけど?』って注意されました。」
「あぁ、あったね…」
シルクは複雑そうな顔をした。
「今はタメ口でもいいんだよ?」
「え、本当ですか?でも、シルク先輩のことは尊敬しているんで、敬いの気持ちを込めて敬語のままでいきたいです。」
見ず知らずの私を助けてくれた人だからね。
しかも、ずっと親切にしてもらってるし。
「そう…」
シルクは顔を赤くし、照れているようだった。
「そろそろ次行こっか。」
シルクは背を向けて、歩き出した。




