222話
ルイは力を調整しながら、炎魔法と水魔法を交互に放っていく。
で、燃えカスを私たちでゴミ袋に入れていく。
抜くより楽だぞ!
ツバサは心配そうに、時折ルイを見ていた。
「ツバサ、どうしたの?」
「え、なにが?」
私が話しかけても、とぼけてくる。
だから、私も心配になってきた…
「ルイの魔力、あとどのくらい?」
「それは全然大丈夫。あと40くらいかな。」
めちゃくちゃあるね。
じゃあ、なにが心配なんだろ?
ツバサがルイをじっと見つめている。
「あ、ルイ!危ない!」
ツバサが急に叫んで、両手をルイに向ける。
ルイは力加減を間違えてしまったようで、強めの火を放ってしまった。
旧校舎に少し火がついて燃えかかったが、ツバサがすぐに氷で凍らせてくれたおかげで大事にはならなかった。
「ツバサ、サンキュ…」
ルイが雑草の燃えカスの上に座りながら、一息つく。
「ルイ、大丈夫?ルイの年頃って、力加減があやふやって聞いたことがあって…見てて良かったよ。」
だから、心配そうにずっと見ていたのか。
「ツバサ、えらいぞ。」
私はツバサの頭をわしゃわしゃ撫でる。
「えへへ。」
ツバサは私が撫でやすいようにしゃがんでくれた。
もちろん、シッポをブンブン振りながら。
「あとは、普通に抜くか…また燃えたら大変だし。」
ルイが立ち上がって辺りを見回す。
草むしりしないといけない場所は、あと1箇所だけ残っていた。
だけど、仕方がないよね。
これ以上、ルイに負担をかけるわけにはいかないし。
「さっさと抜いちゃお!」
というわけで、私たちは草むしりを再開した。
「旧校舎って、なんで残ってるんだろうね。」
さっさと取り壊して、他の場所にすれば草むしりもしなくて済んだかもしれないのに。
「先輩たちが、『思い出の場所がなくなるのは悲しい』って寄付金を募ったんだ。」
ルイが説明してくれる。
「そのお金は何に使ったの?除草剤を買えば良かったじゃん。」
「旧校舎の維持費だよ。月に70万くらいかかるって聞いたことがある。」
え…
使ってないのに、お金がかかるの?
「毎月100万くらい集まってるらしい。」
すげぇ…
「除草剤を購入する案ももちろんでたけど、旧校舎が傷つくのを恐れて却下されたんだ。」
傷つかないでしょ…
そんな話をしているうちに、草むしりも終わる。
「ふぅ…やっと終わったな!」
ルイが伸びをしながら立ち上がる。
ずっとしゃがんで引っこ抜いてたもんね。
「ルナ、早く行こ!」
ツバサは私の手を握って、嬉しそうにしている。
「報告書とかは俺がやっておくから。じゃあ…」
「ルイも校舎までは一緒に行こうよ。」
「ありがとう…」
ルイは少し照れた。
慣れてないのかな?
3人で和気あいあいと話しながら、校舎に向かう。
「はぁ、やっぱりルイ大好き。」
ツバサがルイに抱きつきながら嬉しそうにしている。
「俺もツバサのこと、好きだぞ。」
2人って、仲良しだよね。
たまに除け者にされている気分になるよ…
「じゃあな。」
「また明日!」
ルイと講堂前で別れる。
私たちは2年棟の家庭科室へ向かった。




